行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第十八話 勇者参上!!
「頼もぉぉぉぉおっ!! 私は勇者アリサ! ベヒーモスを退治しにきた者だ!!」
動物園の入り口から大声で叫ぶ自称勇者。
そのまま園内に入ろうとし、チケット売りのスタッフに止められて、律儀に入園料を払ってから魔王達の所にやってくる。
「久しぶりに会ってそうそうだけど、ベヒーモスを動物園で飼育なんて何考えてるの!?」
「危険がないからに決まっておろう。勇者アリサよ、そんなことを言いに来たのか。あのベヒ子を見ろ。子供達と楽しそうにしておるではないか」
「誤魔化されないわよ。その首輪膨大な魔力を抑える首輪でしょ。あんなの首輪の力で誤魔化してるだけじゃない。だいたい何なのよここ。危険な魔獣ばからいるじゃない。こんなのすぐに討伐しないと!」
「物騒な事を言ってくれるな。魔王で動物園の園長でもある私に喧嘩を売っているのか?」
「あんたがそのつもりならいいわよ。前の戦いの決着もついてないしね!」
その瞬間魔王から黒い魔力のオーラが勇者からは人間国で言う白い聖力のオーラが溢れぶつかり合う。
「ここで戦うなんて何考えてるんですか! お客さんや魔獣達が居るんだから、戦いたいなら動物園から離れた所でやって下さい!」
冬太の注意に魔王は魔力を放つのは止めるが、アリサは冬太を睨む。
「あんた異世界から呼ばれたんだってね、アスファルト帝国の皇帝から聴いたわ。私もアスファルト帝国によって異世界から勇者として呼ばれたの、戦う為に。なのにこのバカ魔王とうちのアホ皇帝が平和条約なんか結ぶもんだから戦争できないし、気晴らしに冒険者稼業始めてたら、魔王が動物園経営してあの地害のベヒーモスも居るとか、あんた何やってんの?」
「何やってんのと言われてもアリサさんが勇者としてこの世界に呼ばれた様に僕は園長に動物園作りを手伝えという理由で呼ばれたものですから。でもやってみるとやりがいがあって楽しいですよ」
「やってみると楽しいですよ、じゃないわよ! こちとら勇者としてこの世界に呼ばれてんのよっ! なのに悪の親玉が動物園の園長? 倒すべき災害と呼ばれるベヒーモスが子供と遊んでる? いやいやいや、ないわー。あんたが魔獣の動物園を作ったせいで魔獣討伐を生業にする冒険者達の肩身が狭いんですけどー」
「そう言われても、魔獣にも心があって、人と同じように良い魔獣も居れば、悪い魔獣も居るんです。人に危害を加える魔獣だけ討伐すれば良いんじゃないんですか?」
「それじゃ生きていけないんだよ! だから大物のベヒーモスを狩ろうと」――『ぐぎゅるるるぅぅ』
アリサの言葉は自分のお腹の音で止まってしまう。
「……とりあえずフードコートに行って食事しませんか? うちの食事は美味しいですよ」
顔を真っ赤にさせたアリサはこくんと小さく頷くと冬太についていく。
「うっまぁぁぁあっ!? このオムライスもクリームシチューもハンバーガーをも旨い! これはあんたが?」
園長とエスナには仕事があるので、冬太とアリサの二人でフードコートに来ている。現在フードコートには、新作でハンバーガーやデザートにアイスクリームを追加している。
「はい、調理スタッフに作り方を教えたのは僕です」
「ここに来るまでの3日間まともな食事をしてなかったのもあるけど、地球の世界でもここまで美味しい物は食べられないわよ」
「素材が良いですからね。あとデザートにプリンやアイスクリームもあるので良かったら食べますか?」
「食べるに決まってるじゃない! こっちの世界じゃ食べられないと諦めてたのに食べられるなんて最高!」
「でもベヒ子や園長に敵対したらもう食べられませんね」
それはそうだろう。自分達に害になる人間はブラックリスト入り確実で入園禁止なのはしょうがないだろう。
「……討伐するの止める。やめれば食べられるのよね?」
「ええ、普通にお客様として入園してくれればぜひご利用下さい」
これでとりあえずアリサが敵対する事は無さそうだと安心する冬太。
しかし、アリサの次の一言でその安心は消えてなくなる。
「……ここ気に入ったわ。私をここで働かせてくれない?」
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