行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第五話 コカトリス
「魔王様、本当にこんなところに居るんですか?」
草木を掻き分けながら前に進む。
ああ、いるぞ。奴らはこういう森林を好むんだ。
今冬太、魔王、エスナの三人は三時間山の中を歩いている。
「ああ、居るさ。今度こそお前がビビるぐらいの大物がな!」
なぜこんな山の奥に居るかというと、ある食材がほしかったのだ。
それを魔王に相談したところ、うってつけの奴がいると言われたのでここまで来たんだが。
『コケェェェッ!」
遠くからけたたましい鳴き声が聴こえる。
「気をつけろ奴だ」
「ほ、本当に大丈夫ですか~?」
「魔王たる私がついているんだ、安心しろエスナ」
「さすが魔王様です~」
確かエスナさんって高位の魔術師だと聞いたし、魔王は魔界で一番強い奴がなるらしいから、そんな二人が警戒するってどんな魔獣なんだろうと冬太は胸を弾ませる。
早く会いたくてつい一人で鳴き声のほうへ行ってしまった。
草木を掻き分けるとそこには、蛇のしっぽ、竜の体と羽、雄鶏の頭を持つ二、三メートル程の大きさの怪鳥の姿があった。
名はコカトリス。
この怪鳥にはある特性があるそれは。
「バカーっ!!そいつの目を見るなぁ」
「えっ?」
目を見たものを石にし、人なら一瞬で死ぬ息を吐く。
だが、至近距離でコカトリスの目を見た冬太はもう手遅れ………の筈だったが、数秒たっても何も起こらない。石にならなくとも、コカトリスの吐く息で死ぬ筈なのに。
理由はすぐにわかった。
会ってそうそう冬太になついたのだ。
それの証拠に冬太に自分の頭を擦り付けて甘えている。
「ええっ!?会ってそうそうなつくだとっ!?仮にも上級魔獣に分類されるコカトリスを会ってそうそうなつかせるなどお前何なの?」
「ただの動物好きですけど」
「で済むかぁぁあっ!!」
「ふ、冬太さん。私が触っても大丈夫でしょうか?」
エスナはビクビクしながらもコカトリスに触ってみたいらしく。
「この人たちは僕の友達だから、触らせて欲しいんだ」
そう言われ、コカトリスはエスナに頭を擦り付ける。
「わわっ、触れました、触れましたよ!」
じつは魔術師にとってコカトリスは天敵とされているので、エスナは苦手だったのだが、触ってみて考えが変わったのか、
「コカトリスちゃんふかふかでかわいいです絶対に連れて帰りましょうね」という有り様である。
あまりにもエスナが気持ち良さそうにしてるので魔王も触ろうと近づこうとしたが、動けない。
「えっ、なんで足が石化してるのだ。それになんだか気持ち悪くなってきぶぉぉぉおえっ!!」
どうやらコカトリスが魔王に毒と石化をかけたようで冬太が「めっ!!」と叱ると魔王を正常に戻した。
「ぜぇぜぇぜぇ、ひどいめにあった。なぜ会う魔獣会う魔獣私を攻撃してくるのだ」
「嫌われてるからじゃないですか」
ガーンと冬太の心ない言葉で落ち込む魔王。
「大丈夫です~。私は魔王様大好きですから~」
それが慰めになっているかはわからないが、魔王はかおをあげる。
「これで目的終了だな」
魔王とエスナは帰ろうとするが、冬太が待ったをかける。
「ちょっと待って下さい。この子雄鶏ですよね。僕が欲しいのは卵なので雌鶏が欲しいんですが。それと卵も多く必要なんで出来ればあと五匹程欲しいんです」
すると魔王とエスナはお互い笑いあう。
「勘違いしてるみたいなんで言うが、コカトリスに雌はいないぞ」
「えっ、じゃあどうやって卵を生むんです?」
「そのコカトリスがだよ。コカトリスは雄鶏が卵を生むんだ。それもバカデカイ卵をな。だから一匹で十分なんだ。わかったなら帰ろう。暗くならないうちに帰らないと山は怖いからな」
卵さえ手にできるなら雄鶏が卵を生むなんて些細な事どうでもいいかとコカトリスの背に跨がる。
「あっ、ずるいぞ自分だけ」「私も乗せてください~」
その声を聞き、エスナは乗せたが魔王は無視するコカトリス。
「なっ!?この鳥野郎!!覚えてろぉぉぉおっ!!」
魔王の叫びも遠くから聴こえる程コカトリスの脚は速かった。
牛乳、卵とそろってあとはあの調味料があれば、あの甘味ができる。
ふっふっふ。その時が楽しみだとコカトリスの上で薄ら笑いする冬太。
さて次回捕まえる魔獣とは?
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