行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第四話 バトルモウ



 現在、魔界のある荒野。


 今回は牛だ。この魔界ではバトルモウと呼ばれているらしく、魔人でさえ死傷者が出るほど危険な魔獣だ。
 その為魔王は捕まえるのは止めようと説得したのだが、冬太はある理由の為バトルモウを捕まえる決心をする。


 それは、牛乳。北海道に居た頃は、搾りたてを飲んでいた。
 しかし、魔界には牛乳がないらしい。
 なら捕まえようとこの荒野にいる。


「今回は本当に危ないぞ。バトルモウは、動いている生き物に対して、二本の角を前に構えて突撃してくる。相手が死ぬか逃げるまでしつこく追いかけてくる。この前のホーンラビットの手際よには驚いたが、今回こそ無理だ」


「そうですよ~。無理しないで人間界から割高でも輸入してもらいましょう」


 大きな二本角は人を簡単に殺せそうな程硬く先端が鋭く尖っている。
 そんな凶器を持つ白黒模様のバッファローと言ってもいいバトルモウは、冬太達が目線に入ると威嚇の為か後ろ足で地面を蹴っている。
 そんな状況でも冬太はひょうひょうとバトルモウに近づいていく。


「僕は君と友達になりにきたんだ。お土産もあるんだ」


 手に持っている袋の中には牧草や魔界産のりんご、バナナ、カボチャが入っている。
 牛は青草しか食べないと思いがちだけど、果物や野菜にも好きなものがある。
 餌を見せながら近づくとクンクンと鼻を動かしながら、冬太に近づいていく。


「ほら、お食べ」


 少し警戒したが、おずおずと冬太の手からりんごを食べる。


 食べると美味しかったのか「モウモウ!」と催促し始めた。
 冬太はバトルモウが食事してるうちにバトルモウの身体を撫でる。最初はビクッとしたバトルモウだったが、冬太の撫で技術が気持ちよかったのか喜びながら餌を食べている。
 この光景が羨ましかったのかエスナと魔王も触ろうとした。
 エスナは無事にバトルモウを撫でてご満悦だったが、魔王は、ホーンラビットの時と同じで攻撃を受けている。今回はバトルモウの突進を受け、吹っ飛ばされた。


「ぐはっ!………このバカ牛!お前が動物園の動物候補じゃないなら殺してるところだぞっ!!」


 全くの無傷であった魔王のどでかい黒い魔力のオーラに驚いたのかバトルモウはガタガタ震え冬太の後ろに隠れる。


「魔王様、バトルモウが怖がるので威圧するのは止めてください」


「ぬぅ、だって私だけ触れせてもらえないし……」


 人差し指と人差し指はつつきあっていじける魔王。
 冬太はしょうがないなと溜め息をつく。


「ねぇ、君。あの黒髪おかっぱの女の子にも触らせてやってくれないかな?」


 するとバトルモウは魔王のもとに向かい、撫でろといわんばかりに頭をつきだす。


「触れたぞ!私にも触れたぞ!」


 触れた魔王はご満悦みたいだが、触られてるバトルモウはすごく嫌そうな顔をしている。
 まぁ、動物園に来てもらうのだから触られるいい訓練かもしれないと冬太は見ていてた。
 一匹じゃ寂しいということで雄三頭、雌三頭、合計六頭バトルモウを動物園に迎えることができた。
 その際、他の五頭にも突進を受けて魔王が吹き飛ばされたのは言わなくてもわかるだろう。


 さっそく動物園に連れてきたのだが、その移動方法がバトルモウに乗っての移動だった。
 バトルモウに触れたのも乗ることができたのも私達が初めてだとやたら興奮しているエスナと魔王。「これはすごいことだぞ)、と冬太に言う魔王たがそんな冬太は大袈裟なと笑い、おとなしくついてきたバトルモウ達を動物園内へ誘導する。


 バトルモウを迎えるに辺り、自由に歩き回れる程のクサの生い茂った場所に放牧場作り、中にバトルモウ達の住処牛舎も作った。
 普通は作るのに何ヵ月もかかる作業も魔法を使える魔人達にとっては、朝飯前らしく、あっという間に牛の住処は完成していた。
 ホーンラビットの移住スペースも見事に仕上げてある。
 防魔ガラスで覆われた住居は、草原をベースに隠れるための土管や巣穴などちゃんと作ってくれている。 
 これでストレスを感じてない野生のホーンラビットの生態を防魔ガラスを通じて見れるはずだ。
 もう少し僕以外の人になれたらふれあい広場でもしようと冬太は考えていた。
 バトルモウ達を牛舎に入れ、さっそくを乳搾りをやってみる。
 嫌がるかなと思った冬太だったが、おとなしく気持ち良さそうにしていたので、遠慮なく搾った。
 バケツいっぱいに搾り終わったところで三頭の雌バトルモウにお礼を言う冬太。


 そして、さっそく搾りたての牛乳を飲む、魔王とエスナと冬太。
「「「旨いっ!!」」」
 実は飲む前から牛乳のとろり感で濃厚さは想像していたのだが、思ったよりも濃厚で何より甘い!!
 牛乳で有名な北海道で育った冬太さえこんなに美味しい牛乳を飲んだ事がなかった。


「美味しいです~。こんなミルクがあるんですね~」


「旨い!こんな旨いものが身近に存在しておったなんて!」


 魔王が悔しがるのも無理もない。魔界にはたくさん野生のバトルモウがいるのだから。
 だがバトルモウは本来かなり獰猛で、生け捕りにするのは非常に困難な為殺すしかない。殺したバトルモウから牛乳が取れる筈もない。
 つまり、今ここで飲んでる三人しかこの美味しさを知っていないことになる。
 冬太はその事に気付きニヤリと笑う。


「次の捕まえる動物が決まりました。これは稼げる商売になりそうですよ」


 魔王とエスナはその悪巧み顔にドン引いていた。


 

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