復活のロリ勇者~腐属性添え~
第十話~キャロット村のピンチ!? 復活の腐ロリー添え~
ここはキャロット村。
名産品が人参以外何もない田舎の農村。
「ふぅ、今日もいい天気で農業日和じゃ」
「もう村長、お年なんだからこういう農作業は若い俺らに任せてのんびりお茶でも飲んでなって」
「あの悲劇から十年やっとキャロット村が復興したんじゃ。今頑張らんでいつ頑張るんじゃ!」
「もう村長は頑固なんだから」と言いながら笑い合う村人達。
何気ない穏やかな農村の日常。
しかし、村に緊急を鳴らす鐘が鳴る。
――カーンカーン。
「ふ、腐ロリーだ! 腐ロリーが来たぞーっ!!
その必死に鳴らす鐘で村人達の顔色が変わる。中にはガタガタ震える者までいた。
「皆落ち着けい! 腐ロリーが来たのなら戦うか、黙って愛情を持って育てたキャロット畑をぐちゃぐちゃにされるだけじゃ。なら儂は戦う! あんな悲しい出来事はもうたくさんじゃ!!」
村長はクワを持ちながら決意を村人全員に伝える。
村人達も村長の闘志を感じ、我も我もと農具を手に持ち、腐ロリーがやってかるのを待つ。
するとゆらりゆらりと歩きながらぶつぶつ言っている腐ロリー事メロリー·フラットパインがやって来た。
「キャ、キャロット。キャ、キャロット! キャ、キャロットォォォオ!!」
緑のオーラを纏いながら、一歩また一歩壊れた人形の様に叫びながら村に近付いて行く。
村人達は十年前の腐ロリ様が行った、人参畑の更地にし、農具をすべて破壊して去っていった十年前の恐怖を思い出しながら、農具を腐ロリ様に向けて叫ぶ。
「あんたが村に壊滅的被害をあたえながらもあんたが十年封印されてる間に、新しい品種を作れるようになるまでに回復したんだ! これ以上好き勝手させねぇど!!」
若者の勇気ある突撃も虫を追い払うように吹っ飛ばした。
だが村人達の突撃は止まらない。それほどまでに村人達にとって人参畑は大事なものなのだ。
そんな思いも虚しく村人達は吹っ飛んでいく。
ついに腐ロリ様が村に侵入。人参畑にしか目がいっていない。
それを止めるべく村長が腐ロリ様の前に出る。
「村長、無茶だ! 俺達でも歯もたたない腐ロリー相手に立ち向かうなんて!!」
村長はそんな村人の声を無視し、まず帽子を地面に落とす。ドスッと帽子が音をたてる。
いつも履いてる下駄からも同じようにドスドスッと音が鳴る。
そしていつも村長が着ているアロハシャツを投げ捨てドスッと音が鳴るが、それよりも村長の細い体からは考えられない程のマッチョだった。
「いつかこの日が来ると確信していたからのう。お主は儂が止める! この鍛えし究極奥義『か」
言い終わる前に村長吹っ飛ばされて撃沈。
人参畑に迫る腐ロリ様。
しかし、まだ希望は残っていた。人参畑の前で仁王立ちしている二メートル程の身長と筋肉ムキムキのガタイの男、その名は田吾作。
「普段は優しい田吾作だが、スーパー農家人の血をひく田吾作ならば止めてくれるはず!!」
村長がなぜか田吾作の説明をし始めたが、その田吾作は体を震わせている。
「おらぁ、がくぶるすっぞ」
明らかに田吾作は戦闘向きじゃない。ていうかそろそろ止めないと色々なお偉いさんに叱られそうなので、田吾作がやられる前に腐ロリ様を止める事にする。
「それ以上人様に迷惑かけるなら、今日のおやつのプリンはなしです」
すると、緑色のオーラが消え、こちらを睨んでくる。
「それは、ズルイだろ。プリンを持ち出すなんて」
「人様に迷惑かける人に出すおやつはありません。だいたいここの人参を味見してみましたが、とても美味しかったですよ」
「上手いまずいの問題じゃなく、あの独特の風味がダメなのだ。一回滅ぼしてやったにも関わらず、もう一度作り直すなんて懲りてないようだなぁ」
村人を睨み、「ヒイィィ」と怯えさせる。
そんな視線から彼らを守り、擁護する。
「ならわざわざ滅ぼさなくても食べなければいいじゃないですか」
「存在自体が嫌いなのだからしょうがない。ましては人参の村など吐き気がする」
面倒臭いなぁと思いながら、人参畑を見てみると一区画だけ育てている人参が違う事に気が付いた。
「あのう、この場所だけ普通の人参じゃないですよね?」
「ほう、見ただけで普通の人参じゃないと気付くとは! そうそれは儂達キャロット村の総力をあげて作り上げたその名もスウィートキャロットじゃ!!」
「……一本だけかじってもいいですか?」
許可をもらい、一本引っこ抜く。色合いは普通の人参よりも濃いオレンジ色で、一口かじってみると普通の人参とは段違いで甘い。日本で言う所の金時人参に近い。
この素材なら新しいプリンが作れる。
腐ロリ様には、キャロット村の破壊を待ってもらって農家の方の台所を借りて早速作っていく。
出来たプリンは濃いオレンジ色をしている。
「はい、今日のおやつのプリンですよ腐ロリ様」
「人参のプリンなんか死んでも食わん!!」
「しょうがない、たくさん作ったから捨てるのももったいないし、村人の皆さんに食べてもらいますね」
早速村人にプリンを配っていく。
村人達は最初は「プリン?」首を傾げながら、恐る恐るプリンをスプーンですくい、口に運ぶ。
その瞬間村人達の顔色が変わった。
「旨い!? なんだこれは!」「美味しすぎて手が止まらないわ!」「おらぁ、こんな美味しい甘味を食ったの初めてだぁ」
「う、旨い。儂らが丹精込めて作ったスウィートキャロットの甘さと美味しさが上手く生かされている! おかわりじゃ!」
腐ロリ様は、村人達の恍惚な表情と夢中で食べている姿を耳をピクピクさせる。
「……なぁ、そこの村長。そんなに旨いのか?」
「旨いっ!!元々スウィートキャロットはキャロットの青くささを抑えた新種じゃった。じゃがこのスウィートキャロットのプリンにはキャロット特有の臭さが全くない。良いところだけを残している。……じゃがキャロット嫌いのあんたは死んでもくわんのじゃろ?」
腐ロリ様が目を瞑り、数秒考え込んだ後、かっと目を開き、「…·オタク、一つそのプリン寄越せ!」
「いいんですか? あなたの嫌いな人参が入っているんですよ。後から不味かったから村を滅ぼすなんて言われても困るんですが?」
「滅ぼさんからくれ! そうじゃないと村人達に食い尽くされてしまう!」
「わかりましたよ、はいどうぞ」
僕に手渡されたプリンをじっと見つめスプーンで少しだけすくって腐ロリ様は口に入れる。
僕や村人達に緊張が走りる。
しばらくの静寂の後腐ロリ様が金時人参のプリンをがつがつ食べ始め、さんざんおかわりをした後、「この人参のプリンに免じてこの村を滅ぼすのはやめてやる。満足したから帰って寝る」と言い残し村を去っていった。
村人達は余程緊張していたのか腐ロリ様が去った後、地面に座り込む。
僕は腐ロリ様の代わりに謝り、お詫びとして金時人参プリンのレシピを村長に渡した。
「あの伝説の勇者腐ロリーを追い払うなんてあなた様は一体?」
村長の問いかけに、「ただのオタク執事ですよ」と言い残し僕は村を去った。
――後日談
キャロット村はスウィートキャロットプリンを販売し、大儲けし、そのお金で村の中心に英雄オタク執事と書かれた少年の銅像を置いた。
ちなみに今回の一件でレベルが四十一になり、スキルも、料理オタクがレベル八になり、アイデアレベルも六に上がり、万能オタクレベルが二にレベルアップした。
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