復活のロリ勇者~腐属性添え~
プロローグ~序章でお腹一杯になるのもたまには良いよね?……えっ、胃もたれした?添え~
突然だけど、異世界転移って信じる?
「それライトノベルで流行ってる異世界モノってやつ?(笑)」
ーとまぁ、いきなり異世界転移信じる?って言われても、普通はこんな風に大いに(笑)されるだろう。僕だって仮に唯一無二の親友(生まれて16年の人生で出来た事ないし、出来る未来さえ見えない)に言われたとしてもニヤニヤした顔で弄りまくる自信がある。
で、でもねよくあるじゃん?
車や電車や戦車や飛行機やタンクローリーに跳ねられて気付いたら見知らぬ場所だったって異世界へのお決まりパターン。
◆◆◆
―――そんなパターンの一例~ある日の穏やかな午後~
ある清らかな少年は3ヶ月前から予約していた聖なる遺物(単なるエロゲー)を聖なる神殿に取りに行く途中、汚いドブ川沿いの道を歩いていました。
そんな純真無垢で清らかな少年は、青信号が点滅している横断歩道を前に歩みを止めます。
少年は清らかな心を持っているので、赤信号になりそうな横断歩道を急いで渡ろうとはしません。例え、横断歩道を渡ればすぐ目の前に聖なる神殿があろうとも。例え、その神殿に3ヶ月間楽しみにしていた聖なる遺物があろうとも。例え、毎晩エロゲーソフトの製作会社のホームページを見て、最初の攻略キャラを誰にするかで悩み、軽い不眠症になる程待ち焦がれていたとしても、おそらく神に祝福されている筈の清らかな心を持つ少年は、目を充血させ血が滲む程に唇を噛んでまで気の遠くなる程の待ち時間(約二分程度)をエロゲーを気持ち良くプレイする為に耐えようとしています。
ここで目先の欲に負け、あと数秒で赤信号になるであろう歩道を無理に渡ったあげく、アクセル全開の車にもしかしたら轢かれるかもしれない。轢かれなかったとしても、ルールを守らず赤信号に変わった横断歩道を渡った事により、早くエロゲーをプレイ出来たとして罪悪感でモヤモヤした気持ちを抱えたままエロゲーを楽しめるのか? 答えは否!
そう考えた清らか過ぎてもはや自分こそが神と言っても過言ではないと思い始めた清らかな心を持つ少年は、前方のエロゲーショップに意識が向いていたのと、思いのほか不眠症が脳にダメージを与えていたせいで、後方からママチャリの集団が猛スピードで迫って来ていたのに気付きませんでした。
結果、体が宙を舞う程におもいっきり轢かれました、ママチャリで!
……たかがママチャリで?って思ったでしょ。
確かに普通はそう思うだろうけど、この日この時この場所ではその普通はまかり通らなかった事を、先程まで自分を神にまで進化させていた少年は、宙を舞いながら思い出したのです。
先程、横断歩道の先にエロゲーショップがあると言ったと思うけど、その左隣には激安で有名なスーパーマーケットがあるんですよ。
ただでさえ激安なんだけど、土曜の午後三時に超大特価タイムーセールが行われるのが特に目玉になっていて、この日のこの時間だけは町中の主婦達が修羅の形相で、戦国時代の騎馬隊が如く、ママチャリを激走させてこのスーパーマーケットに集結するんです。これは少年の住む町では当たり前の話で、この時だけは生き死にに関わる(比喩表現ではない)為、スーパーマーケット周辺には主婦(修羅)以外は近づかないのは暗黙のルールになっている程です。
ーそう、今が土曜の午後三時前である事を宙を舞いながら気付いた、神と言っても過言ではない(笑)な少年は、今冷静に自分を分析しています。
……これ死にそうなんですけど?
地面から高さ五メートルぐらいまで舞い上げられてるんですけど? このままの勢いで地面に落ちたら頭が割れたイチジク状態になりそうなんですけど?
現在、周囲にはママチャリに乗った修羅(主婦)が数えきれない程いるというのに、いたいけな少年が宙を舞ってるのに気づきもしません。
まぁ、今の彼女達は、泣かぬなら殺してしまえ何ちゃらりんと軽く言ってしまえる織田家の暴れん坊みたいな存在です。気づいたところで羽虫を扱うが如く無視するでしょう(ムシだけに!ドヤっ!)
………一人でドヤ顔したところで冷ややかな目線さえ今の少年には向けられません。
悲しいなこのまま地面に叩きつけられるのかと思いきや、思いのほか強く跳ねられたのか歩道横のドブ川真上まで飛ばされました。
本当はこんな汚いドブ川になんて落ちたくはないけど、背に腹は変えられぬと言うし、地面に落ちてイチジクるよりはマシだろう。川に落ちてしまえば、ケガをしない程度の深さがある川だし、泳ぎもどっちかというと得意な方だと、さっきまでの焦りはなくなり、余裕の表情で少年はドブ川に落ちていきました。
ードボンッ!!
ーオヴェェッ!?く、臭っ!激臭いんですけど、思ってた百倍臭いんですけど?早く川岸まで行かないと臭すぎてショック死しそうなレベルなんですけど!?
………あっれ~、おかしいな泳ごうとしてるのに足が動かないぞ~?
これってもしかしてヘドロってやつですか?足を動かそうとする程ズブズブ沈んでいってるんですけど!?
ヤバい!このままじゃ本当に死んでしまう!
「助けッ、ヴォェェェッ!ゲホゲホッ!だずげでぐだざーいっ!」
必死に助けを呼んでみるものの口を開ける度に汚水が入って上手く声を出す事ができません。
「ヴォ願いじまず~!!だずげでぐだヴォェェェッ!!」
それでも頑張って声だけでなく、水面をバシャバシャと叩いて助けを呼んでみるものの…………。
「殺しあいの開始だー!ヒャッハー!」「蹴散らせー!」「邪魔するものは焼き払えー!」「こいつら全員ホトトギスだー、ヒャッハッハー」
ーだいぶ物騒な叫び声がスーパーマーケットの方から聴こえてきたが、おそらくタイムセールが始まったのだろう。凄まじい怒号の嵐だ。こ、これって本当にただのタイムセールだよね!比叡山の焼き討ちとかじゃないよねっ!?
「ぶぉぉおん、ぶぉぉおん」
気のせいか法螺貝の笛の音が聴こえてきたんだがそろそろヤバいのだろうか?
必死に助けを呼んでみたけど、この騒ぎじゃ気づいてもらえそうにない。もし気づいてもらえてもこの感じじゃ助けてもらえるどころか、逆に殺されそうだなー。だってあいつらどう考えても第六天魔王憑依しちゃってるもん。
ーーよし、なんか意識も朦朧とし始めたし、生きるの諦めます!
まぁ、エロゲー出来ないのは非常に無念だがしょ……しょうがない、うん、しょうがない。本当に悔しいので二回言いました。
あとは特に心残り……ないなー。家族仲は良好で両親とも良い親だとは思うが何っっも思い出が出てこない。ひどい息子だとは思うが出てこないもんはしょうがない。ママチャリに轢かれてからくだらない事ばかり考えてるけど、まさかこれが走馬灯じゃないですよね?
ーーだんだんと考えが支離滅裂になってきたしいよいよ終わりなのだろうか。
一つだけ心残りみたいなものがあるんだけど………。
―――この場合の死因は純粋な溺死かドブ川が臭すぎてショック死のどちらなのだろうか?
………できれば……溺死が……いい……な。
………臭すぎてショック死………って何か嫌……じゃん?
―――これが神様ではなく、純粋無垢でもなく、清らかな心も持ってはいない、ただのオタクな少年の生涯…………に思えましたが、彼の一生はまだ終わっていませんでした。
―――なんと次に目が覚めた時、そこは見たことないような世界――異世界だったのです。
◆◆◆
―――あるある、異世界転移のよくあるパターンだわ~。
……?………えっ………ない?………こんな異世界への始まりあってたまるか?………ですよね~。さらにこのあと、異世界転移したはいいけど、ある国の王様が発動させた召喚魔法のミスで召喚されて、金貨三枚渡されて放置ですよ!
…………そんな異世界転移の話、作り話にしてもおかしすぎる?
ええ、そうですよね、僕もおかしな話だとは思いますよ。
でも本当の話なんだからしょうがないじゃないですか。
………えっ誰の話かって?
そんなの決まってますそれは――――
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