俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる
結局ある程度はこっちが折れるしかないのだが 一応の落着
「ちょっと待って、コウジ。根本的な解決法じゃないんじゃない? それは」
「根本的な解決?」
「そう。こいつらが例え考えを改めたとしても、第二、第三のこいつらが現れる」
あぁ、そういうことか。
「うん。その時は」
「その時は?」
「諦めろ」
「……コウジ」
「何だ?」
「そこに直れ。その口をぶった切ってくれる」
わお。
何という過激なことを。
かの国の次世代の女王サマが仰せになられる言葉が、よりにもよってこれとはっ。
「しょうがねぇだろ? 金儲けに利用されるほどの価値があるってこと。そう解釈するしかない」
「私の力への評価としては有り難いわよっ。でも、そのおにぎりが必要な人にとっては、余計な出費を強いられるってことじゃないの?」
「俺の握り飯を受け取ることができる場所は、ここ以外にないのだが?」
「そんなこと分かってるわよ!」
「ここ以外で手に入ること自体あり得ないんだよ。それどころか、目に触れること自体ない。だから噂には余計な尾ひれがついちまう」
握り飯の効果にばかり焦点が当てられる。
誰が好き好んで、その握り飯を得るために自分の命を危険に晒すかっての。
誰もがそう思ってるだろうことは、作ってる俺だって容易に想像できる。
だからそんな状況からは目を逸らしたい。
けど握り飯は欲しい。
楽に手に入れられるなら、それくらいの出費なんか気に留める程じゃない。
そう考える奴はごまんといるってことだ。
……思考が主旨からずれてるな。
「手に入らない物が手に入る。その分の代償は必要だろ? だがその代償の行き先は、俺とは無関係な場所にいく。俺がそこまで運べるわけがないからな。もちろんそこに運んでくれと頼むつもりもないし、むしろ拒否する」
責任問題っていうトラブルが生まれそうなこととは極力距離を置きたい。
俺が背負える責任は、せいぜいこの雑貨屋で精いっぱい。
握り飯づくりで問題が起きりゃ、こっちはただの善意だから、やめてくれと言われりゃすぐにやめるさ。
けど残念なことに、喜ぶ奴らが多すぎた。
「結局、お前さんの術の効果については、売買が成立している間は失効してるわけじゃないってことは分かる」
俺一人で握り飯を作ってた頃には起きなかった事案だ。
不本意だろうが、それだけシェイラの術の効果が評されている、価値がある。
つまりは、そういうことだ。
「しかしこの部屋で休息できるだけでも助かる。だがそれを妨害……いや、拒絶……でもないな。コウジさんの意に反して立ち入り禁止にする者がいるのは、これは許せないことだ」
「そうです。我々の世界からここに来れるすべての扉をこの者達の私利私欲のため封じられる可能性もある」
おっと、それはこっちにとっては勇み足になる話題だ。
「そっちの世界でのことなら、そっちで解決しろよ。扉を一度も見たことがない俺にどうしろと?」
何でもかんでもおんぶに抱っこされてもな。
そっちの世界のことはそっちで解決しろよ。
もし介入できるんであるならば、このじゃじゃ馬の母親までしゃしゃり出てくるぞ?
異世界間戦争の引き金になったりしてな。
傍観者の立場に立てたら……。
やべぇ。
それはそれで面白そうだ。
「何ニヤニヤしてんのよ」
顔に出ちまったか。
「まぁ結局はものの見方を変えれば、納得できる話にもなるし理不尽に感じる話にもなる。どのみち、お前が俺の手伝いをしている限りは、そういう意味では傍観だ」
シェイラは不満そうだが、何度も言う通り手の届かない世界での話は、そっちで頑張って解決してもらうしかない。
「……で、こいつらはどうする?」
「俺は……しかるべきところに連行すべきと思うんだが。殺されかけたしな。手を下してもいいが、こいつらの不義な行為を晒す必要もある」
「おう、そんな話は俺らの耳の届かない所でしろよ。そっちの世界にとっちゃ、俺は部外者だぜ? 部外者に首突っ込まれたくはないだろ? ガムテープくらいならくれてやる。とっととこっから追い出しとけ」
芋虫状態の四人をさらにまとめてひと塊。
二人がかりでそれを転がして、ようやくこの部屋から退室と相成った。
「……こんな面倒なこと、二度とごめんだわ」
「楽してズルして金儲け。いい商売だな。こっちにはそんな効果は出ないってのになぁ。羨ましい限りだ」
「効果があっても、マネしてほしくないわね。それ相応の見返りであればいいけど」
「いいけど……って、お前、それ拒否しまくってるじゃねぇか」
「拒否? 見返りなんてあったかな」
感謝を態度で表す連中を拒否して、他の見返りを求めるって、それはそれで生々しい話だと思うぞ?
しかも一国の王女の小娘が、だ。
その国、将来が心配だよ?
「根本的な解決?」
「そう。こいつらが例え考えを改めたとしても、第二、第三のこいつらが現れる」
あぁ、そういうことか。
「うん。その時は」
「その時は?」
「諦めろ」
「……コウジ」
「何だ?」
「そこに直れ。その口をぶった切ってくれる」
わお。
何という過激なことを。
かの国の次世代の女王サマが仰せになられる言葉が、よりにもよってこれとはっ。
「しょうがねぇだろ? 金儲けに利用されるほどの価値があるってこと。そう解釈するしかない」
「私の力への評価としては有り難いわよっ。でも、そのおにぎりが必要な人にとっては、余計な出費を強いられるってことじゃないの?」
「俺の握り飯を受け取ることができる場所は、ここ以外にないのだが?」
「そんなこと分かってるわよ!」
「ここ以外で手に入ること自体あり得ないんだよ。それどころか、目に触れること自体ない。だから噂には余計な尾ひれがついちまう」
握り飯の効果にばかり焦点が当てられる。
誰が好き好んで、その握り飯を得るために自分の命を危険に晒すかっての。
誰もがそう思ってるだろうことは、作ってる俺だって容易に想像できる。
だからそんな状況からは目を逸らしたい。
けど握り飯は欲しい。
楽に手に入れられるなら、それくらいの出費なんか気に留める程じゃない。
そう考える奴はごまんといるってことだ。
……思考が主旨からずれてるな。
「手に入らない物が手に入る。その分の代償は必要だろ? だがその代償の行き先は、俺とは無関係な場所にいく。俺がそこまで運べるわけがないからな。もちろんそこに運んでくれと頼むつもりもないし、むしろ拒否する」
責任問題っていうトラブルが生まれそうなこととは極力距離を置きたい。
俺が背負える責任は、せいぜいこの雑貨屋で精いっぱい。
握り飯づくりで問題が起きりゃ、こっちはただの善意だから、やめてくれと言われりゃすぐにやめるさ。
けど残念なことに、喜ぶ奴らが多すぎた。
「結局、お前さんの術の効果については、売買が成立している間は失効してるわけじゃないってことは分かる」
俺一人で握り飯を作ってた頃には起きなかった事案だ。
不本意だろうが、それだけシェイラの術の効果が評されている、価値がある。
つまりは、そういうことだ。
「しかしこの部屋で休息できるだけでも助かる。だがそれを妨害……いや、拒絶……でもないな。コウジさんの意に反して立ち入り禁止にする者がいるのは、これは許せないことだ」
「そうです。我々の世界からここに来れるすべての扉をこの者達の私利私欲のため封じられる可能性もある」
おっと、それはこっちにとっては勇み足になる話題だ。
「そっちの世界でのことなら、そっちで解決しろよ。扉を一度も見たことがない俺にどうしろと?」
何でもかんでもおんぶに抱っこされてもな。
そっちの世界のことはそっちで解決しろよ。
もし介入できるんであるならば、このじゃじゃ馬の母親までしゃしゃり出てくるぞ?
異世界間戦争の引き金になったりしてな。
傍観者の立場に立てたら……。
やべぇ。
それはそれで面白そうだ。
「何ニヤニヤしてんのよ」
顔に出ちまったか。
「まぁ結局はものの見方を変えれば、納得できる話にもなるし理不尽に感じる話にもなる。どのみち、お前が俺の手伝いをしている限りは、そういう意味では傍観だ」
シェイラは不満そうだが、何度も言う通り手の届かない世界での話は、そっちで頑張って解決してもらうしかない。
「……で、こいつらはどうする?」
「俺は……しかるべきところに連行すべきと思うんだが。殺されかけたしな。手を下してもいいが、こいつらの不義な行為を晒す必要もある」
「おう、そんな話は俺らの耳の届かない所でしろよ。そっちの世界にとっちゃ、俺は部外者だぜ? 部外者に首突っ込まれたくはないだろ? ガムテープくらいならくれてやる。とっととこっから追い出しとけ」
芋虫状態の四人をさらにまとめてひと塊。
二人がかりでそれを転がして、ようやくこの部屋から退室と相成った。
「……こんな面倒なこと、二度とごめんだわ」
「楽してズルして金儲け。いい商売だな。こっちにはそんな効果は出ないってのになぁ。羨ましい限りだ」
「効果があっても、マネしてほしくないわね。それ相応の見返りであればいいけど」
「いいけど……って、お前、それ拒否しまくってるじゃねぇか」
「拒否? 見返りなんてあったかな」
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