俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる
コルト、手記を書く
「お前さ、実家に帰っちゃダメとか村から追放されたとか、そんなこと言われてるわけ?」
「え? いえ、そんなことはないんですけど、私の生まれた村ではみんな自給自足の生活でした。食糧で不安なことが起きたら、みんなで支え合って生活してました。でも農地とかを広げたりすると、魔物が棲みついてる森林に近くなるので……」
「人口が多くなると食糧不足になる。口減らしっつったら言葉は悪いか。村から出て生活できる奴は出てもらい、最低限、でなるべく許容範囲ぎりぎりの人口を維持してるってわけか」
コウジさんって意外と物分かりがよくて、こっちが言いたくないことを言わなくても分かってくれるので助かります。
「じゃあ時々里帰りもしてるってことだよな? しょっちゅう戻れるわけでもなさそうだが」
「えぇ。ここ三十年は戻ってないですね。でもあまり戻るなって言われてます」
「何で? 嫌われてるのか?」
時々ひどいことを言ってくるのが玉にキズでしょうか。
「そうじゃないですよ。帰る時はどうしてもお土産買うじゃないですか。そのお土産がみんなの生活の足しになるような物になると、次からはそんな土産を期待しちゃうんですよね」
「土産なしには生活できなくなる、ということか。自制心に満ちた村だな」
コウジさんは不思議そうな顔をしますが、村に残る人も出る人もみんなそう言い聞かせられてますから。
生活の知恵の一つですよ。
「じゃあなおさらだな」
「何がです?」
「そのノートにいろいろ書いとけってこと。その中身が村の人達の土産になったりするんじゃないか? 村の外の生活で得た知恵が、村でも役立つかもしれないだろうしな」
なるほど。
じゃあ早速書いてみます。
でも……。
「でも、最初はなんて書いたらいいんでしょう? 人に見せるものじゃないので、初めましてでもないでしょうし」
……なんですか、コウジさん。その大きなため息は。
「知るか。好きに書いたらいいだろ」
それもそっか。
※※※※※ ※※※※※
道具を作るレシピもいいんですが、確かにコウジさんの言う通り、あの村に帰ることができたらこのノートの中身をお土産にしようと思います。
この村では、子供の頃はみんな普通に生活できるけど、成長して仕事ができるようになると、村に残るか村から出るかを選ばせられます。
でも、どうしても村から出てほしいってお願いされる人もいます。
私もそうでした。
逆に、どうしても村に残ってほしいって頼まれる人もいます。
村の存続のためには必要な事なんですよね。
村から出てどこかの町に行くとしても、生活のための手段はないとそこに居続けることはできません。
手に職を持つってことです。
でも村を出なきゃならない年代になるまで、手に職を持てない人もいます。
私もそれに当てはまる一人です。
でも私達が生まれ育ったエルフの村は、その力には差はあるけれど、誰でも魔力を持っています。
それを活かさない手はありません。
私も冒険者には手っ取り早く就くことができました。
でも冒険者にも種類があるんですね。
人や場所を守る警備役。
魔物を倒したり狩ったりする討伐隊。
人捜し物探しの探索係。
魔物が持っていたりダンジョンの中に潜んでいる宝物を見つけ、持ち帰るトレジャーハンター。
魔術師も冒険者になれますが、その場合冒険者ではなく魔術師になります。
冒険者は一般的に、武術が高めの人を指すようです。
魔術師にも種類があって、人を守る回復役と魔物や賊を倒す役の二種類に分かれます。
私は、魔力が高いというより体力が劣ってたので魔術師、回復役の職に就きました。
ここで大切なことがあります。
それは、家族の名前を名乗らないようにすること。
捨てる、とまではいきませんけど、実は私は忘れかけてるところです。
実家に帰ることができれば思い出せるかもしれませんが。
村を出たのは十五才。それから五十年以上も名前を名乗らず、名乗る必要がなければ意外と忘れられるもんですよ。
なぜかというと、実家を突き止められて、不安を煽る人がいるらしいです。
ありもしない借金を抱えてる、と家族に伝え、その借金を背負わせる。
その借金の肩代わりにその人の身柄を拘束する、といったやり方。
これは一例ですけど。
なので、村を出た人は自分の名前だけを名乗るようになります。
身元を突き止められませんから安心というわけです。
ですので、私は回復術師のコルトということになります。
でも、世間知らずのままだと、どんなに用心しても騙されるものなんですよね……。
「え? いえ、そんなことはないんですけど、私の生まれた村ではみんな自給自足の生活でした。食糧で不安なことが起きたら、みんなで支え合って生活してました。でも農地とかを広げたりすると、魔物が棲みついてる森林に近くなるので……」
「人口が多くなると食糧不足になる。口減らしっつったら言葉は悪いか。村から出て生活できる奴は出てもらい、最低限、でなるべく許容範囲ぎりぎりの人口を維持してるってわけか」
コウジさんって意外と物分かりがよくて、こっちが言いたくないことを言わなくても分かってくれるので助かります。
「じゃあ時々里帰りもしてるってことだよな? しょっちゅう戻れるわけでもなさそうだが」
「えぇ。ここ三十年は戻ってないですね。でもあまり戻るなって言われてます」
「何で? 嫌われてるのか?」
時々ひどいことを言ってくるのが玉にキズでしょうか。
「そうじゃないですよ。帰る時はどうしてもお土産買うじゃないですか。そのお土産がみんなの生活の足しになるような物になると、次からはそんな土産を期待しちゃうんですよね」
「土産なしには生活できなくなる、ということか。自制心に満ちた村だな」
コウジさんは不思議そうな顔をしますが、村に残る人も出る人もみんなそう言い聞かせられてますから。
生活の知恵の一つですよ。
「じゃあなおさらだな」
「何がです?」
「そのノートにいろいろ書いとけってこと。その中身が村の人達の土産になったりするんじゃないか? 村の外の生活で得た知恵が、村でも役立つかもしれないだろうしな」
なるほど。
じゃあ早速書いてみます。
でも……。
「でも、最初はなんて書いたらいいんでしょう? 人に見せるものじゃないので、初めましてでもないでしょうし」
……なんですか、コウジさん。その大きなため息は。
「知るか。好きに書いたらいいだろ」
それもそっか。
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道具を作るレシピもいいんですが、確かにコウジさんの言う通り、あの村に帰ることができたらこのノートの中身をお土産にしようと思います。
この村では、子供の頃はみんな普通に生活できるけど、成長して仕事ができるようになると、村に残るか村から出るかを選ばせられます。
でも、どうしても村から出てほしいってお願いされる人もいます。
私もそうでした。
逆に、どうしても村に残ってほしいって頼まれる人もいます。
村の存続のためには必要な事なんですよね。
村から出てどこかの町に行くとしても、生活のための手段はないとそこに居続けることはできません。
手に職を持つってことです。
でも村を出なきゃならない年代になるまで、手に職を持てない人もいます。
私もそれに当てはまる一人です。
でも私達が生まれ育ったエルフの村は、その力には差はあるけれど、誰でも魔力を持っています。
それを活かさない手はありません。
私も冒険者には手っ取り早く就くことができました。
でも冒険者にも種類があるんですね。
人や場所を守る警備役。
魔物を倒したり狩ったりする討伐隊。
人捜し物探しの探索係。
魔物が持っていたりダンジョンの中に潜んでいる宝物を見つけ、持ち帰るトレジャーハンター。
魔術師も冒険者になれますが、その場合冒険者ではなく魔術師になります。
冒険者は一般的に、武術が高めの人を指すようです。
魔術師にも種類があって、人を守る回復役と魔物や賊を倒す役の二種類に分かれます。
私は、魔力が高いというより体力が劣ってたので魔術師、回復役の職に就きました。
ここで大切なことがあります。
それは、家族の名前を名乗らないようにすること。
捨てる、とまではいきませんけど、実は私は忘れかけてるところです。
実家に帰ることができれば思い出せるかもしれませんが。
村を出たのは十五才。それから五十年以上も名前を名乗らず、名乗る必要がなければ意外と忘れられるもんですよ。
なぜかというと、実家を突き止められて、不安を煽る人がいるらしいです。
ありもしない借金を抱えてる、と家族に伝え、その借金を背負わせる。
その借金の肩代わりにその人の身柄を拘束する、といったやり方。
これは一例ですけど。
なので、村を出た人は自分の名前だけを名乗るようになります。
身元を突き止められませんから安心というわけです。
ですので、私は回復術師のコルトということになります。
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