俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる
汁物の麺類は、音を出しながら啜るのは異世界共通
女エルフのコルトって奴から、ずっとここに居させてくれって懇願された。
こいつのこの先、どうなることかと思ってたんだよな。
こっちは握り飯作りに追われる生活してたから、こいつだけ特別扱いなんかできるわけがない。
居住性なんか考えられない屋根裏部屋にずっといたら、不衛生だしストレスもたまるんじゃないかと思ってた。
ところがだ。
握り飯を求めるために一斉に押し寄せてくる冒険者達に何か呼びかけたらしい。
ショーケースの前が先頭になるように列を作らせて混乱をなくしてくれた。
他には、ここじゃ役に立たないガラクタ同然のアイテムを組み合わせて加工して、いろんな道具を作ってくれた。
その道具がこの店……って言うか俺が扱う商品にしてくれたんだから、何が幸いになるかほんっとに分からん。
そんなストレスなんかあるわけがない、って言うような、喜色満面の笑顔でそんな仕事してくれるんだから。
とにかくコルトは、俺、そして『畑中商店』にとって貴重な戦力になってくれてる。
異世界の連中やこの部屋を公にできるなら、彼女の力は店員になれるレベルだ。
屋根裏部屋ばかりじゃなく、この店継続の危機まで救ってくれそうだなんて、誰が考える?
いや、店の事情は俺しか知らないから、誰も考えるどころじゃない話なんだがな。
それだけのことをしてるんだから、避難しに来た他の冒険者達と同じような扱いをするわけにはいかない。
俺もコルトも初対面の冒険者が多いんだが、俺はそんな彼らからも責められてる。
「あの娘ってばよぉ、俺達に気を遣ってくれてよぉ、何やら工作もして、お前はそれを受け取って喜んでる。それはいいけどよ、この娘にお前、何かしてやってんのか? 俺らと同じ扱いはねぇんじゃねぇの?」
「ほんとよ。そっちの事情は知らないけどさ、待遇とかもう少しよくしてあげたらどうなの?」
種族性別分け隔てなく、俺に向けてそんなクレームが日に日に増えていった。
クレームが増えるのを喜んでるヤツって、俺くらいのもんじゃないか?
こいつらから言質とったってことでもあるしな。
俺だってコルトに何かしてやらないとって思うようになったさ。
けど事情を知らない奴が見たら、間違いなく依怙贔屓とか思うだろ?
そう思ってる連中は、この部屋を出たら拠点に帰るんだよな。
拠点に帰ったら、あったかい布団に入っておいしいご馳走を口にできるんだよ。
けどこいつは帰れそうにないんだよ。
俺に時間があったとしても、そんな豪勢な料理なんか作れそうにない。
用意できるとしてもせいぜい店屋物。
こいつらが自分の口に合うそんな料理の方が断然いいに決まってる。
そんな先のことが見えてるのに、それを棚に上げて貧相な料理を口にするコルトを羨む声をあげる様子が目に見える。
コルトにそんな目に遭わせるわけにはいかないよな。
こいつの居場所が、それこそどこにもなくなるに違いないから。
だからそんなクレームは大歓迎。
文句があるなら、コルトを擁護するんじゃねぇ! と言い張れる。
そうすりゃ俺に向かって人でなしだのなんだのと言うだろう。
コルトの待遇を良くしなきゃならない理由の出来上がりって訳だ。
もっとも冒険者達への待遇も良くなってる。
近所の湧き水を大きなペットボトルに入れて、紙コップもたくさん用意して、握り飯と一緒に出す。
握り飯だけの時よりも、喜ぶ顔の多いこと多いこと。
でコルトにはどうしてるかって言うと、基本的にはこいつ等と同じ。
でも週に一回くらいは、最悪でも素うどん。
金と時間に余裕があると、具沢山のうどんにした。
初めて部屋に持ち込んだ時は、そりゃ最高に笑えた。
部屋にいる全員の驚いた顔と言ったらもうね、堪えられなかった。
まさしく、してやったりって感じだった。
案の定、羨ましがる奴もいた。
そりゃそうだ。食欲を誘う匂い付きだからな。
しかもあいつら、俺にもくれ、などと言えないでやんの。
コルトへの待遇を改善する要望の声が上がった直後だったからな。
もちろん俺の分も持ち込んだ。
こいつはお前らとは違うんだぞって言うアピールもあるし、コルト一人じゃ間違いなく遠慮して一口も食べないままかもしれないと思ったからな。
「こ、こんな美味しそうなの、私一人でいいんですか?」
「ふざけんな。こっちは俺の分だ。独り占めすんな」
「あ……あ、すいません……」
「言っとくが、毎日は出せないからな? ま、週に一食くらいは出してやるよ」
コルトは何かあるとすぐに顔が赤くなる。
けど嬉しそうな表情しながら赤面するのは初めて見たような気がする。
食べ始める時は周りの目を気にしてた。
みんなこっちを見てたからな。
けど俺もコルトと向き合って一緒に食った。
コルトに壁の方を向いて座らせたから、食ってるうちに気にしなくなった。
おいしい顔ってこんな顔だよな。
目を線にして、一口ごとに喜んでる。
顔が赤いままなのは、久々にあったかい物を食ったからだろうな。
作った甲斐があったってもんだ。
こいつのこの先、どうなることかと思ってたんだよな。
こっちは握り飯作りに追われる生活してたから、こいつだけ特別扱いなんかできるわけがない。
居住性なんか考えられない屋根裏部屋にずっといたら、不衛生だしストレスもたまるんじゃないかと思ってた。
ところがだ。
握り飯を求めるために一斉に押し寄せてくる冒険者達に何か呼びかけたらしい。
ショーケースの前が先頭になるように列を作らせて混乱をなくしてくれた。
他には、ここじゃ役に立たないガラクタ同然のアイテムを組み合わせて加工して、いろんな道具を作ってくれた。
その道具がこの店……って言うか俺が扱う商品にしてくれたんだから、何が幸いになるかほんっとに分からん。
そんなストレスなんかあるわけがない、って言うような、喜色満面の笑顔でそんな仕事してくれるんだから。
とにかくコルトは、俺、そして『畑中商店』にとって貴重な戦力になってくれてる。
異世界の連中やこの部屋を公にできるなら、彼女の力は店員になれるレベルだ。
屋根裏部屋ばかりじゃなく、この店継続の危機まで救ってくれそうだなんて、誰が考える?
いや、店の事情は俺しか知らないから、誰も考えるどころじゃない話なんだがな。
それだけのことをしてるんだから、避難しに来た他の冒険者達と同じような扱いをするわけにはいかない。
俺もコルトも初対面の冒険者が多いんだが、俺はそんな彼らからも責められてる。
「あの娘ってばよぉ、俺達に気を遣ってくれてよぉ、何やら工作もして、お前はそれを受け取って喜んでる。それはいいけどよ、この娘にお前、何かしてやってんのか? 俺らと同じ扱いはねぇんじゃねぇの?」
「ほんとよ。そっちの事情は知らないけどさ、待遇とかもう少しよくしてあげたらどうなの?」
種族性別分け隔てなく、俺に向けてそんなクレームが日に日に増えていった。
クレームが増えるのを喜んでるヤツって、俺くらいのもんじゃないか?
こいつらから言質とったってことでもあるしな。
俺だってコルトに何かしてやらないとって思うようになったさ。
けど事情を知らない奴が見たら、間違いなく依怙贔屓とか思うだろ?
そう思ってる連中は、この部屋を出たら拠点に帰るんだよな。
拠点に帰ったら、あったかい布団に入っておいしいご馳走を口にできるんだよ。
けどこいつは帰れそうにないんだよ。
俺に時間があったとしても、そんな豪勢な料理なんか作れそうにない。
用意できるとしてもせいぜい店屋物。
こいつらが自分の口に合うそんな料理の方が断然いいに決まってる。
そんな先のことが見えてるのに、それを棚に上げて貧相な料理を口にするコルトを羨む声をあげる様子が目に見える。
コルトにそんな目に遭わせるわけにはいかないよな。
こいつの居場所が、それこそどこにもなくなるに違いないから。
だからそんなクレームは大歓迎。
文句があるなら、コルトを擁護するんじゃねぇ! と言い張れる。
そうすりゃ俺に向かって人でなしだのなんだのと言うだろう。
コルトの待遇を良くしなきゃならない理由の出来上がりって訳だ。
もっとも冒険者達への待遇も良くなってる。
近所の湧き水を大きなペットボトルに入れて、紙コップもたくさん用意して、握り飯と一緒に出す。
握り飯だけの時よりも、喜ぶ顔の多いこと多いこと。
でコルトにはどうしてるかって言うと、基本的にはこいつ等と同じ。
でも週に一回くらいは、最悪でも素うどん。
金と時間に余裕があると、具沢山のうどんにした。
初めて部屋に持ち込んだ時は、そりゃ最高に笑えた。
部屋にいる全員の驚いた顔と言ったらもうね、堪えられなかった。
まさしく、してやったりって感じだった。
案の定、羨ましがる奴もいた。
そりゃそうだ。食欲を誘う匂い付きだからな。
しかもあいつら、俺にもくれ、などと言えないでやんの。
コルトへの待遇を改善する要望の声が上がった直後だったからな。
もちろん俺の分も持ち込んだ。
こいつはお前らとは違うんだぞって言うアピールもあるし、コルト一人じゃ間違いなく遠慮して一口も食べないままかもしれないと思ったからな。
「こ、こんな美味しそうなの、私一人でいいんですか?」
「ふざけんな。こっちは俺の分だ。独り占めすんな」
「あ……あ、すいません……」
「言っとくが、毎日は出せないからな? ま、週に一食くらいは出してやるよ」
コルトは何かあるとすぐに顔が赤くなる。
けど嬉しそうな表情しながら赤面するのは初めて見たような気がする。
食べ始める時は周りの目を気にしてた。
みんなこっちを見てたからな。
けど俺もコルトと向き合って一緒に食った。
コルトに壁の方を向いて座らせたから、食ってるうちに気にしなくなった。
おいしい顔ってこんな顔だよな。
目を線にして、一口ごとに喜んでる。
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