勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第39話、花咲く楽園の主
仄暗いローゼルの街。
しかしいつものアストラル界と比べ身体が重く感じ、また建物などの外観も不鮮明であるため、アストラル界の中でも低層に出てきてしまったようだ。
そして低層にいるという事は——
そこで肉が腐ったような、鼻を突く強烈なアンモニア臭が漂い始める。
やはり私は、この層に呼ばれたようだ。
悪臭は刻々と濃くなって来ており、あまりの臭さに吐き気を催してしまう。
そしてそいつは現れた。
私を追って、遠いローゼルの街までわざわざ来たのだろう。
仄暗い民家がここまで来たモノに憑依されたため、まるで生命が宿ったように民家自体が脈をうち、全ての壁面にミミズが這っているかのようにして蠕動を始める。
「あ"ぁァ、あルどぉ、アるドォォォオ」
その声と共に、民家の全てが真っ赤に染まる。
そして多くの生きた人間を砕き切断しぐちゃぐちゃにかき混ぜたような、鮮血に染まる人の原型を留めていない肉片と、見知らぬ多くの人間たちの恨めしい顔面が壁面や屋根に浮かび上がってくる。
これは死んだ霊、悪霊の複合体。
「アルドォォオおおオお! 」
そして先程から血の涙を流し私の名を叫んでいるのは、死んでも成仏できずにアストラル界に囚われ続ける多くの彷徨う霊たちに吸収されてしまった、私の元主人であるパオル。
霊には生前と全く変わらぬ思考する力がある。
そしてアストラル界に存在する際、夢を見ているのと同じ状態に感じてしまうため多くの霊は死んだ事に気が付けず延々アストラル界に留まってしまう。
パオルは死んでもなお、私への憎しみが収まらないためそれが未練となり成仏出来ていないようだ。
そしてその負の念に引き寄せられた霊の集合体に取り込まれてしまい、恨みを恨みで洗うようにして抜け出す事を難しくしているのだろう。
この状態は煉獄に落ちたとも言い表わせる状態なのだが、私が蒔いたカルマでもある。
またパオルの強い念でここまで引き摺られた他の霊たちは、ここで私と出会ったのはそのような縁なのだろ——
そこで壁面から、血が滴る無数の青白い腕が伸びてくる!
私はそれらを右へ左へ躱していきながら、呪文を発動させる。
三発の拳大の光球が、各々民家の壁に着弾し展開!
そうして私が放った神聖降臨弾が、民家に取り憑いていた霊の集合体を聖なる光で包み込み、一人残さず浄化。
多くの霊が眩い光となり、暗いアストラル界を照らしながら引っ張られるようにして上層へ登る中、憑き物が取れた顔のパオルも同じように光の中を上がっていく。
……パオルさん、次会う時があれば良い関係になれたら良いですね。
さてと、目的の地である花咲く楽園まで一気に飛ぶか。
ダンジョンに記されていた文字を頭に思い浮かべ、意識を集中させ、そこへ向け飛ぶ!
すると周りの景色が光となり、それらが後ろへ流れていく。
そしてその光のトンネルを進む事数秒、突然視界が開かれると先ほどの場所とは全く違う場所に出て来た。
辺りは同じように仄暗いのだが、身体が軽くなっている。
また視界に映る物も先ほどのように不鮮明ではなく、細部までがしっかりと見えているため、ここはアストラル界でも上層の場所のようだ。
しかし不思議な光景だな。
私の足元には、街の一区画はありそうな巨大な緑色の葉が一枚あるのだが、それと同じような葉が見渡す限り水面に浮かぶ蓮の葉のように広がっており、さながら地面のようになっている。
それと葉の精霊なのだろうか?
先ほど見た妖精のような大きさなのだが実体の無い、様々の色彩の光の球があちこちで風に吹かれるようにして舞っている。
また地面の葉自体も淡い緑色に発光しているため、時の流れを忘れて見入ってしまいそうになる幻想的な風景となっている。
そこで今度は花の甘い香りが、私の鼻腔へと届く。
この感じ、この香りがする方向に私が求める存在がいるはず!
私はその場で浮かぶと、念じることでその匂いが香ってくる方向へ向け飛行を開始。
仄暗い闇に色とりどりの光球が舞う中、私は葉の上を進んでいく。
そして遠い先の前方に縦へ走る黄緑色の光が見え始め、その縦に伸びる線が次第に太く力強い光となり、遂にはそれが巨大な柱のような植物の幹である事が分かってくる。
そしてそれは、多くの花々と光の球に囲まれるようにして鎮座していた。
巨人が住んでいるような巨城に多くの蔦を絡みつかせ、その城のど真ん中を貫くようにして真上へと伸びる一本の巨大な幹。
その幹の先端である上空には、下方の巨城よりも大きな一輪の花が咲いており、その花の自重で下を向く様が、まるで花びらがこの空間を支配しているかのようにしてこちらを見下ろしている。
そこで頭の中に清らかな音が響く。
これはこの巨大な植物が、私の頭の中に直接話しかけてきているのだ。
人の言葉でないため詳細な意味は分からないが、純粋な子供のように私が何者なのかを聞いてきているのが伝わってくる。
そこで私は身体の力を抜き意識をフラットにしていつでも他人から思考を覗けれるようにすると、目の前の存在と精神面で接続するイメージを行なう。
すると目の前に多くの若々しい草木や美しい花が咲き乱れる映像が流れ始める。
そしてアニマ、この巨大な花を有する大樹の名前が『繁栄光樹アニマ』だという事が伝わってくる。
力ある存在の真名。
それだけで力があり、様々な呪文の基礎となる。
私は真名を教えてくれた感謝の気持ちをアニマに伝えると、これからもアニマが元気に存在する事を愛を込めて祈り、意識をアストラル界から現実へと引き戻す。
目を開けると、無事宿屋の一室に戻ってきていた。
アニマか……。
初めて聞く名の神々しい存在で、あの緑色の光自体に強い癒しの力を感じた。
そしてアニマからは、私が知る神の名残も覚えた。
世界真理神レダエル。
始まりの宗教の名に使われ、今も多くの信徒が信仰をする神。
今世で魔法が弱まり疑問を感じた私は、前世の時に知っていた世界真理神レダエルが存在する場所へと飛んだ。
しかしそこには、私が知るレダエルは存在しなかった。
代わりにそこへ居たのは、魂で感じる性質はレダエルと同じなのだが、その力を大きく弱め名も微妙に違えた神、天上真神レダギルであった。
しかしいつものアストラル界と比べ身体が重く感じ、また建物などの外観も不鮮明であるため、アストラル界の中でも低層に出てきてしまったようだ。
そして低層にいるという事は——
そこで肉が腐ったような、鼻を突く強烈なアンモニア臭が漂い始める。
やはり私は、この層に呼ばれたようだ。
悪臭は刻々と濃くなって来ており、あまりの臭さに吐き気を催してしまう。
そしてそいつは現れた。
私を追って、遠いローゼルの街までわざわざ来たのだろう。
仄暗い民家がここまで来たモノに憑依されたため、まるで生命が宿ったように民家自体が脈をうち、全ての壁面にミミズが這っているかのようにして蠕動を始める。
「あ"ぁァ、あルどぉ、アるドォォォオ」
その声と共に、民家の全てが真っ赤に染まる。
そして多くの生きた人間を砕き切断しぐちゃぐちゃにかき混ぜたような、鮮血に染まる人の原型を留めていない肉片と、見知らぬ多くの人間たちの恨めしい顔面が壁面や屋根に浮かび上がってくる。
これは死んだ霊、悪霊の複合体。
「アルドォォオおおオお! 」
そして先程から血の涙を流し私の名を叫んでいるのは、死んでも成仏できずにアストラル界に囚われ続ける多くの彷徨う霊たちに吸収されてしまった、私の元主人であるパオル。
霊には生前と全く変わらぬ思考する力がある。
そしてアストラル界に存在する際、夢を見ているのと同じ状態に感じてしまうため多くの霊は死んだ事に気が付けず延々アストラル界に留まってしまう。
パオルは死んでもなお、私への憎しみが収まらないためそれが未練となり成仏出来ていないようだ。
そしてその負の念に引き寄せられた霊の集合体に取り込まれてしまい、恨みを恨みで洗うようにして抜け出す事を難しくしているのだろう。
この状態は煉獄に落ちたとも言い表わせる状態なのだが、私が蒔いたカルマでもある。
またパオルの強い念でここまで引き摺られた他の霊たちは、ここで私と出会ったのはそのような縁なのだろ——
そこで壁面から、血が滴る無数の青白い腕が伸びてくる!
私はそれらを右へ左へ躱していきながら、呪文を発動させる。
三発の拳大の光球が、各々民家の壁に着弾し展開!
そうして私が放った神聖降臨弾が、民家に取り憑いていた霊の集合体を聖なる光で包み込み、一人残さず浄化。
多くの霊が眩い光となり、暗いアストラル界を照らしながら引っ張られるようにして上層へ登る中、憑き物が取れた顔のパオルも同じように光の中を上がっていく。
……パオルさん、次会う時があれば良い関係になれたら良いですね。
さてと、目的の地である花咲く楽園まで一気に飛ぶか。
ダンジョンに記されていた文字を頭に思い浮かべ、意識を集中させ、そこへ向け飛ぶ!
すると周りの景色が光となり、それらが後ろへ流れていく。
そしてその光のトンネルを進む事数秒、突然視界が開かれると先ほどの場所とは全く違う場所に出て来た。
辺りは同じように仄暗いのだが、身体が軽くなっている。
また視界に映る物も先ほどのように不鮮明ではなく、細部までがしっかりと見えているため、ここはアストラル界でも上層の場所のようだ。
しかし不思議な光景だな。
私の足元には、街の一区画はありそうな巨大な緑色の葉が一枚あるのだが、それと同じような葉が見渡す限り水面に浮かぶ蓮の葉のように広がっており、さながら地面のようになっている。
それと葉の精霊なのだろうか?
先ほど見た妖精のような大きさなのだが実体の無い、様々の色彩の光の球があちこちで風に吹かれるようにして舞っている。
また地面の葉自体も淡い緑色に発光しているため、時の流れを忘れて見入ってしまいそうになる幻想的な風景となっている。
そこで今度は花の甘い香りが、私の鼻腔へと届く。
この感じ、この香りがする方向に私が求める存在がいるはず!
私はその場で浮かぶと、念じることでその匂いが香ってくる方向へ向け飛行を開始。
仄暗い闇に色とりどりの光球が舞う中、私は葉の上を進んでいく。
そして遠い先の前方に縦へ走る黄緑色の光が見え始め、その縦に伸びる線が次第に太く力強い光となり、遂にはそれが巨大な柱のような植物の幹である事が分かってくる。
そしてそれは、多くの花々と光の球に囲まれるようにして鎮座していた。
巨人が住んでいるような巨城に多くの蔦を絡みつかせ、その城のど真ん中を貫くようにして真上へと伸びる一本の巨大な幹。
その幹の先端である上空には、下方の巨城よりも大きな一輪の花が咲いており、その花の自重で下を向く様が、まるで花びらがこの空間を支配しているかのようにしてこちらを見下ろしている。
そこで頭の中に清らかな音が響く。
これはこの巨大な植物が、私の頭の中に直接話しかけてきているのだ。
人の言葉でないため詳細な意味は分からないが、純粋な子供のように私が何者なのかを聞いてきているのが伝わってくる。
そこで私は身体の力を抜き意識をフラットにしていつでも他人から思考を覗けれるようにすると、目の前の存在と精神面で接続するイメージを行なう。
すると目の前に多くの若々しい草木や美しい花が咲き乱れる映像が流れ始める。
そしてアニマ、この巨大な花を有する大樹の名前が『繁栄光樹アニマ』だという事が伝わってくる。
力ある存在の真名。
それだけで力があり、様々な呪文の基礎となる。
私は真名を教えてくれた感謝の気持ちをアニマに伝えると、これからもアニマが元気に存在する事を愛を込めて祈り、意識をアストラル界から現実へと引き戻す。
目を開けると、無事宿屋の一室に戻ってきていた。
アニマか……。
初めて聞く名の神々しい存在で、あの緑色の光自体に強い癒しの力を感じた。
そしてアニマからは、私が知る神の名残も覚えた。
世界真理神レダエル。
始まりの宗教の名に使われ、今も多くの信徒が信仰をする神。
今世で魔法が弱まり疑問を感じた私は、前世の時に知っていた世界真理神レダエルが存在する場所へと飛んだ。
しかしそこには、私が知るレダエルは存在しなかった。
代わりにそこへ居たのは、魂で感じる性質はレダエルと同じなのだが、その力を大きく弱め名も微妙に違えた神、天上真神レダギルであった。
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