勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第38話、アストラル界へGO!
◆ ◆ ◆
陽が高い内にダンジョンから無事帰還した私たちは、早速ギルドで魔石を買い取って貰う。
そしてその足でギルドに隣接する酒場で早めの夕飯を済ませると、そのまま宿へ戻り私は自室で荷物の整理に取り掛かった。
嫌われ者の役割は結構こなしているつもりなのだが、中々慣れないものだな。
ダンジョン内でエルが屋根から落ちそうになった時、とうに限界を迎えているのは分かっていた。
しかし私は、敢えて突き放す選択をした。
それはエルには酷だったろうが、ダンジョンに潜れば一人で生き抜く力と覚悟が必要になってくるから。
もしかしたら今後、望ましくない事態の一つとして、私たちを捨ててでも一人で逃げなければならない場面が訪れないとは言い切れない。
それらの試練に直面した時、エルが生きて新たな試練に身を投じるためにも正しい選択を出来るようにするのが、今の私に出来るお節介。
ただあの後のエルの奮闘、正直想定外であった。
一つ一つの魔力回路が育っていないとは言え、まさかあの土壇場の場面で数分間もの間、全魔力回路の起動を行なってしまうとは。
リーヴェの援護が少しだけあったが、あの場面はエル一人で全ての敵を倒したと言っても過言ではなかった。
本当にエルが男に生まれていれば、英雄たちの中に名を連ねる程の才器なのではと思わされた程だ。
しかしそんな有望なエルに対して、使えるのか使えないのか未だ分からないリーヴェ。
……どう導こうか?
魔力回路が機能し出して体力面での心配はだいぶ解消されたが——
それと猫の力は凄まじいものがあるが、冒険者に求められる力は高い平均値。
一度の勝負に勝ったとしても、武器を失ってしまうのは致命的過ぎる。その後の10戦の内一度でも勝てないとは言え逃げれずに死んでしまっては、一度の勝利になんて意味がない。
気を長く持ちじっくり育てていけば、いつかはララノアクラスにまで到達出来るのだろうか?
……この問題は、また後回しにするしかないのか。
さてと荷物も片付いた事だし、それでは本題の魔法研究を行うか。
クックックッ、壁画に描かれた文字の解読は、既にダンジョン内で終わっている。
あのダンジョンの壁画に描かれた内容、まだ何者かは謎のままだが、どうやら花咲く楽園と言う場所に存在する者について記されていた。
私たちが住む世界とは、いくつもの世界が重なりあって存在している。
その最上階の世界とは、言わずもがな高位の神々が住むとされる世界。
そして今から魔法研究のために私が赴く場所は、感情と欲望により創り上げられた想念の世界、アストラル界だ。
アストラル界とは人間界のすぐ上に位置する世界で、私たちは無意識のうちに何度もそこへ訪れている。
人が眠りにつくと見る場所、それはこの現実世界に非常に似ているが、確かに此処とは微妙に違う世界。
つまり夢の世界が、今から行くアストラル界なのである。
アストラル界は想念の世界で、私たち人類が思ったものが全てアストラル界にも存在する。
新たな家族が出来ればアストラル界にも家族が居て、念願の家を建てればあちらにも家が建っている。
もっと正確に言うならば、あちらは想念の世界のためアストラル界に出来た物が現実世界で願いが叶う形で出来ている事になる。
つまり言い換えると、子供を欲する夫婦はアストラル界に空想の子供を創り上げ、願いが叶い子供が産まれてくる。家を建てたい者は、先にアストラル界に家を建て始め、金銭を手に入れ実現可能になれば現実世界にも家を建て始める。
言霊や想いの力と言う、願い続ければ夢が叶う力とは、まず言葉にしたり想う力でアストラル界に想念でモノを創り上げ、そのアストラル界の力に引き寄せられる形で現実世界でも具現化している現象である。
さらに言うならば、神や天使を信じる者は、自身の想念で神や天使を作り出してしまう。その逆も然りで、人によっては化け物や悪魔をアストラル界に作り上げてしまう事もある。
ただしこれらの神や悪魔は、人の想念で作り出したまがい物になる……のだが、しっかりと現実世界にも影響を与えてしまう。
そのため意図的に神や天使を作り自身や家族を守る分には良いのだが、悪魔の囁きと言うように、幻覚や幻聴を見聞きしてしまい犯罪に手を染めたり精神病になってしまう事もあるため、悪いイメージを継続して負なる存在を創り上げ続けるとかなり危険な状態に陥ってしまうため注意が必要だ。
因みに本物の神々しい存在はアストラル界のような低層には住んでいない。
なので市井でよく預言者が神の信託を受けたと言っていても、中には低級の悪霊が神を装って間違いを教える事もあるため、聖人ハウニが教えるよう、なんでもかんでも神だからと言って無条件で信じてしまうのは危険だ。
ただアストラル界の全てがまがい物なのではなくて最上層からの影響も受けているため、そこに本物の神々の残像があったりもする。
そして数多の存在で渦巻いているアストラル界の中でその本物を見極める際、ダンジョンの壁画に描かれている文字が役に立ってくる訳だ。
要はダンジョン内に記されている文字は、広大なアストラル界にいる力を持った存在がいる場所を記した地図と言っても過言ではない。
さて、二人にはこの部屋に近付かないようにいってあるから時間はたっぷりあるわけだが、アストラル界を旅した後も色々と試したいから事があるから、早々に霊界探索を開始するか。
床に腰を下ろすと背骨をまっすぐにして座ると、瞳を閉じ肉体をリラックスさせ深呼吸を始める。
何度も深呼吸を行ない、一回一回の呼吸に時間を掛け心を落ち着けていくと、六感全てを研ぎ澄ませる。
次に鼻から息を吸い込むと同時に、周囲に漂う魔素を頭のてっぺんから肺へ取り込み、呼吸を一旦止め魔素を全身に巡らす。
そして活力を与えてくれエネルギーを失った魔素を口から息を吐くと同時に吐き出していくと、また同じように呼吸で魔素を取り込む。
魔素で満たされた全身からチリチリとした感覚が伝わってくる中、コオロギや鈴虫の虫の音を思い浮かべ頭の中で共鳴させ、自身のアストラル体も震わしていく。
これを何度となく繰り返し、意識が半覚醒状態へとなったのを見計らって、丹田にイメージで太陽を作り上げる。
それを背筋から螺旋を描き押し上げるイメージでゆっくり頭頂部まで上げていき、第七魔力回路から宇宙へと出ていく事を思い浮かべ、イメージの太陽と一緒に自身のアストラル体を肉体の外へと——
一気に押し出す!
そこで浮遊感を感じる。
そして目を開くと、そこは私が借りている宿屋の一室であった。
しかし部屋の照明は、漆黒のカーテンで遮られたような明るさしかない。
そこで床に足を付け部屋を後にし宿を出ると、部屋の中と同じ明るさしかない、ローゼルの街が広がっていた。
陽が落ちた広大な海を彷彿とさせる何処までも続く空間であり、この見上げる天すらも闇に丸呑みにされているような漆黒の中で仄かな灯火で浮かび上がる街々。
ここが人々の想念で創り上げられているもう一つの世界、アストラル界である。
そこで拳ほどの小さく淡い暖色の光を放つ玉が、私の眼前をゆっくりフラフラと上下に揺れながら横切る。
今のは背中に二対四枚の薄い羽根を生やした小さき者、女の子の姿をした妖精。
陽が高い内にダンジョンから無事帰還した私たちは、早速ギルドで魔石を買い取って貰う。
そしてその足でギルドに隣接する酒場で早めの夕飯を済ませると、そのまま宿へ戻り私は自室で荷物の整理に取り掛かった。
嫌われ者の役割は結構こなしているつもりなのだが、中々慣れないものだな。
ダンジョン内でエルが屋根から落ちそうになった時、とうに限界を迎えているのは分かっていた。
しかし私は、敢えて突き放す選択をした。
それはエルには酷だったろうが、ダンジョンに潜れば一人で生き抜く力と覚悟が必要になってくるから。
もしかしたら今後、望ましくない事態の一つとして、私たちを捨ててでも一人で逃げなければならない場面が訪れないとは言い切れない。
それらの試練に直面した時、エルが生きて新たな試練に身を投じるためにも正しい選択を出来るようにするのが、今の私に出来るお節介。
ただあの後のエルの奮闘、正直想定外であった。
一つ一つの魔力回路が育っていないとは言え、まさかあの土壇場の場面で数分間もの間、全魔力回路の起動を行なってしまうとは。
リーヴェの援護が少しだけあったが、あの場面はエル一人で全ての敵を倒したと言っても過言ではなかった。
本当にエルが男に生まれていれば、英雄たちの中に名を連ねる程の才器なのではと思わされた程だ。
しかしそんな有望なエルに対して、使えるのか使えないのか未だ分からないリーヴェ。
……どう導こうか?
魔力回路が機能し出して体力面での心配はだいぶ解消されたが——
それと猫の力は凄まじいものがあるが、冒険者に求められる力は高い平均値。
一度の勝負に勝ったとしても、武器を失ってしまうのは致命的過ぎる。その後の10戦の内一度でも勝てないとは言え逃げれずに死んでしまっては、一度の勝利になんて意味がない。
気を長く持ちじっくり育てていけば、いつかはララノアクラスにまで到達出来るのだろうか?
……この問題は、また後回しにするしかないのか。
さてと荷物も片付いた事だし、それでは本題の魔法研究を行うか。
クックックッ、壁画に描かれた文字の解読は、既にダンジョン内で終わっている。
あのダンジョンの壁画に描かれた内容、まだ何者かは謎のままだが、どうやら花咲く楽園と言う場所に存在する者について記されていた。
私たちが住む世界とは、いくつもの世界が重なりあって存在している。
その最上階の世界とは、言わずもがな高位の神々が住むとされる世界。
そして今から魔法研究のために私が赴く場所は、感情と欲望により創り上げられた想念の世界、アストラル界だ。
アストラル界とは人間界のすぐ上に位置する世界で、私たちは無意識のうちに何度もそこへ訪れている。
人が眠りにつくと見る場所、それはこの現実世界に非常に似ているが、確かに此処とは微妙に違う世界。
つまり夢の世界が、今から行くアストラル界なのである。
アストラル界は想念の世界で、私たち人類が思ったものが全てアストラル界にも存在する。
新たな家族が出来ればアストラル界にも家族が居て、念願の家を建てればあちらにも家が建っている。
もっと正確に言うならば、あちらは想念の世界のためアストラル界に出来た物が現実世界で願いが叶う形で出来ている事になる。
つまり言い換えると、子供を欲する夫婦はアストラル界に空想の子供を創り上げ、願いが叶い子供が産まれてくる。家を建てたい者は、先にアストラル界に家を建て始め、金銭を手に入れ実現可能になれば現実世界にも家を建て始める。
言霊や想いの力と言う、願い続ければ夢が叶う力とは、まず言葉にしたり想う力でアストラル界に想念でモノを創り上げ、そのアストラル界の力に引き寄せられる形で現実世界でも具現化している現象である。
さらに言うならば、神や天使を信じる者は、自身の想念で神や天使を作り出してしまう。その逆も然りで、人によっては化け物や悪魔をアストラル界に作り上げてしまう事もある。
ただしこれらの神や悪魔は、人の想念で作り出したまがい物になる……のだが、しっかりと現実世界にも影響を与えてしまう。
そのため意図的に神や天使を作り自身や家族を守る分には良いのだが、悪魔の囁きと言うように、幻覚や幻聴を見聞きしてしまい犯罪に手を染めたり精神病になってしまう事もあるため、悪いイメージを継続して負なる存在を創り上げ続けるとかなり危険な状態に陥ってしまうため注意が必要だ。
因みに本物の神々しい存在はアストラル界のような低層には住んでいない。
なので市井でよく預言者が神の信託を受けたと言っていても、中には低級の悪霊が神を装って間違いを教える事もあるため、聖人ハウニが教えるよう、なんでもかんでも神だからと言って無条件で信じてしまうのは危険だ。
ただアストラル界の全てがまがい物なのではなくて最上層からの影響も受けているため、そこに本物の神々の残像があったりもする。
そして数多の存在で渦巻いているアストラル界の中でその本物を見極める際、ダンジョンの壁画に描かれている文字が役に立ってくる訳だ。
要はダンジョン内に記されている文字は、広大なアストラル界にいる力を持った存在がいる場所を記した地図と言っても過言ではない。
さて、二人にはこの部屋に近付かないようにいってあるから時間はたっぷりあるわけだが、アストラル界を旅した後も色々と試したいから事があるから、早々に霊界探索を開始するか。
床に腰を下ろすと背骨をまっすぐにして座ると、瞳を閉じ肉体をリラックスさせ深呼吸を始める。
何度も深呼吸を行ない、一回一回の呼吸に時間を掛け心を落ち着けていくと、六感全てを研ぎ澄ませる。
次に鼻から息を吸い込むと同時に、周囲に漂う魔素を頭のてっぺんから肺へ取り込み、呼吸を一旦止め魔素を全身に巡らす。
そして活力を与えてくれエネルギーを失った魔素を口から息を吐くと同時に吐き出していくと、また同じように呼吸で魔素を取り込む。
魔素で満たされた全身からチリチリとした感覚が伝わってくる中、コオロギや鈴虫の虫の音を思い浮かべ頭の中で共鳴させ、自身のアストラル体も震わしていく。
これを何度となく繰り返し、意識が半覚醒状態へとなったのを見計らって、丹田にイメージで太陽を作り上げる。
それを背筋から螺旋を描き押し上げるイメージでゆっくり頭頂部まで上げていき、第七魔力回路から宇宙へと出ていく事を思い浮かべ、イメージの太陽と一緒に自身のアストラル体を肉体の外へと——
一気に押し出す!
そこで浮遊感を感じる。
そして目を開くと、そこは私が借りている宿屋の一室であった。
しかし部屋の照明は、漆黒のカーテンで遮られたような明るさしかない。
そこで床に足を付け部屋を後にし宿を出ると、部屋の中と同じ明るさしかない、ローゼルの街が広がっていた。
陽が落ちた広大な海を彷彿とさせる何処までも続く空間であり、この見上げる天すらも闇に丸呑みにされているような漆黒の中で仄かな灯火で浮かび上がる街々。
ここが人々の想念で創り上げられているもう一つの世界、アストラル界である。
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