勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第37話、闇に染まるエル
空一面に広がるどんより雲は、まさに今のボクの心境だ。
ボクたちはヘロヘロになりながらも、民家の壁面に挟まれた狭い路地を懸命に駆け抜けていく。
そして大きく右にカーブしている路地を進んでいると、目の前に現れた二体のスケルトンがボクたちに気がつき、剣を振り上げながら駆けてくる。
ボクはその振り下ろされる剣に対して、受ける剣を握りしめる事だけに意識を集中。
そして武器同士が衝突した後、すぐさま足腰を使い身体全体で剣を押し上げた。
相手の剣が宙を舞う中、即座に一歩踏み込み袈裟斬りで骨をバラバラに吹き飛ばす。
次のスケルトンは剣を横薙ぎに振ろうとしてきたけど、狭い通路のため武器を壁に当ててしまい隙だらけに。
すかさずそこへ斬り込み倒す。
そしてすぐさま走りを再開させた。
僅かな戦闘とはいえ、ロスしてしまった。これからまた走って後続から距離をとらないと!
緊張の連続に、滲み出る汗がダラダラと落ちていく。
気が休まる時がないから、目的の魔石回収なんて出来るわけがない!
路地を進んで行くと、左右に分かれた分岐点が見える。そこを運任せに左を選び進んで行くと——
前方に広がる一面の壁!
いっ、行き止まり!
さっきの道は右だった!?
急いで来た道を戻っていくと、既に追っ手は分岐点まで来ていた!
どうする!?
ここで助けを呼ばないと、本当にボクたち殺されてしまう。
しかしアルドさんを探すけど、唯一居そうな屋根の上にも姿がない。
ただアルドさんを探して色々と見回した結果、ここから見える民家の一件が煙突のある二階建てである事に気が付く。
しかもあの二階の部屋には、小窓も見える!
あの民家なら、もしかして!
一階入り口は鍵がかかっていたけど、扉を蹴破り突入。
そしてやった、すぐそこに二階へと続く階段がある!
真っ直ぐ駆け上がっていくと、正面に小窓が現れる。
助かった、これで後はなんとかなるかも!
緊張感が開放感に変わり、ボクは意気揚々と小さな観音開きの扉に手を掛けた——
まさにその時、背後から何かが覆いかぶさってきた。
その重い体重に片膝をついてしまう中、後ろから腕を回してきた背後のソレがボクの肩から顔を覗かせる。
「うゔぅぅぅ」
最初から部屋の死角にいたのだろう。突起の無いのぺっとした顔を、微かに振動させながら怨嗟の声を漏らすパペット。
「ぎゃぁ——」
ボクは身体を左右に振りながら肘打ちの連打を出して引き剥がすと、壁に寄りかかるパペットに対し何度も何度も剣を振り下ろして攻撃を加えていく。
「死ね、死ね死ね、早く死ねぇ! 」
そこで肩に手を置かれる。
お姉ちゃんだ。
「エルちゃん、ごめんなさい。早く射ろうと狙いをさだめてたのですけど助けられなくて——」
いや、早く射ったらダメです!
それより——
「お姉ちゃん、とにかく外へ! 」
小窓を開き外に出ると、屋根の上は結構な急斜面であった。
やっ、やった、疲れたけどなんとかやった!
……ただ、少しだけ休憩させて欲しい。
そして屋根の一番上で腰を下ろして休憩しようと思い、おぼつかない足取りで屋根の棟に向かって上がっていると——
「エルちゃん! 」
煙突の陰からスケルトンが飛び出してきた!?
驚くのも束の間、振り下ろされた斧を受け止めるけど足場が悪いため、スケルトンと剣を交えた形で仰向けに転倒しそのままスケルトンごと一緒に屋根を滑って行ってしまう。
だけど、背中の摩擦でなんとか止まった!
あと頭一個分滑れば屋根から落ちてしまう所まで滑ったけど、なんとか持ち堪えたぞ!
「とりゃー! 」
そして最後の力を振り絞り覆いかぶさるスケルトンの腹部部分の骨を蹴り上げ、スケルトンを屋根から落下させる。
ほっ、ほんと、もう動けない、ちょっとこのままで休ませて。
「エル、早く立ち上がるのだ! 」
突然の激励。
見上げれば、アルドさんが屋根の棟に片足を乗せてこちらを見下ろしていた。
「アルドさん、ちょっとだけ休憩を——」
「駄目だ! 」
ボクの弱音に被せてくる形で、アルドさんは言い放つ。
……もしかしてアルドさん、昨晩の件を根に持ってボクをしごいているのでは——とか考えていると、上空の渦巻く雲の異変に気が付く。
あれは?
今にも雨が降り出しそうな暗雲から、丸めた布の端を持って下へ落としたような、沢山の真っ黒い何かがスゥーと真下へ伸びて来る。
あの黒いの、たしか先日城エリアに向かう途中に襲ってきていた影の悪魔!
それらの多くは途中で空を旋回し始めたのだけど、その一部が弧を描きボクたちの方へと降りて来る!
そしてあろうことか、ボクの身体を掴み屋根の下へと引き摺り落とそうとし出した。
「ぎゃー、来るな! 」
剣を振って霧へと変えていくけど、数が多い!
お姉ちゃんは短剣を抜いてボクの方へ来ようとしてるけど、あっちの方にも多くの影の悪魔が降りてきていて、纏わり付かれて進めないでいる。
おわわっ!?
そこでグイッと引っ張られてしまったボクは屋根から完全に体が出てしまうけど、落ち掛ける中懸命に片手を伸ばし屋根の軒先に辛うじて指だけで引っ掛ける事に成功する。
とその時屋根の棟にいる、自身の周囲に飛んで来る影の悪魔を片っ端から霧に変えているアルドさんと目が合った。
「アッ、アルドさん、助け——」
「エルなら出来る! 」
そのアルドさんの声は、助けを求めるボクの心の声を遮るようにして言った。
……アルドさんは、ボクを助けてくれないんだ。
そこでボクを繋ぎとめていた気持ちと言う名の紐が、ブチブチと次々に千切れていく。
誰も助けてくれない。
戦場ではボクは一人ぼっち。
……なんかもういいや、どうでもいいや。
ただ助けてくれないのなら、ボクは好きに動かさせて貰う!
命を大事に? そんなの知るか!
ボクに指図をするな!
ボクの命はボクの物だ!
下方を見ると、多くのモンスターたちがぶら下がるボクに殺到している。
お前たち、ここからはどちらかが死ぬまでの戦いだ!
みんな、倒してやる!
みんなみんなヌッコロしてやる!
指の力を抜くと、自由落下を始める。
やってやる、この感情を全てブチまけてやるぞ!
モンスターを踏みつけ降り立ったボクは、手始めに周囲を取り囲む奴らに襲いかかる。
「ぁるどぉ! ぁるどりゃ! どりゃどりゃどりゃー! 」
それから全てのモンスターを倒すまで、ボクはノンストップで動き続けるのであった。
本日の結果、魔石を20個ゲット。
そしてボクは戦闘での掛け声と共に、ダークサイドの力を手に入れるのであった。
ボクたちはヘロヘロになりながらも、民家の壁面に挟まれた狭い路地を懸命に駆け抜けていく。
そして大きく右にカーブしている路地を進んでいると、目の前に現れた二体のスケルトンがボクたちに気がつき、剣を振り上げながら駆けてくる。
ボクはその振り下ろされる剣に対して、受ける剣を握りしめる事だけに意識を集中。
そして武器同士が衝突した後、すぐさま足腰を使い身体全体で剣を押し上げた。
相手の剣が宙を舞う中、即座に一歩踏み込み袈裟斬りで骨をバラバラに吹き飛ばす。
次のスケルトンは剣を横薙ぎに振ろうとしてきたけど、狭い通路のため武器を壁に当ててしまい隙だらけに。
すかさずそこへ斬り込み倒す。
そしてすぐさま走りを再開させた。
僅かな戦闘とはいえ、ロスしてしまった。これからまた走って後続から距離をとらないと!
緊張の連続に、滲み出る汗がダラダラと落ちていく。
気が休まる時がないから、目的の魔石回収なんて出来るわけがない!
路地を進んで行くと、左右に分かれた分岐点が見える。そこを運任せに左を選び進んで行くと——
前方に広がる一面の壁!
いっ、行き止まり!
さっきの道は右だった!?
急いで来た道を戻っていくと、既に追っ手は分岐点まで来ていた!
どうする!?
ここで助けを呼ばないと、本当にボクたち殺されてしまう。
しかしアルドさんを探すけど、唯一居そうな屋根の上にも姿がない。
ただアルドさんを探して色々と見回した結果、ここから見える民家の一件が煙突のある二階建てである事に気が付く。
しかもあの二階の部屋には、小窓も見える!
あの民家なら、もしかして!
一階入り口は鍵がかかっていたけど、扉を蹴破り突入。
そしてやった、すぐそこに二階へと続く階段がある!
真っ直ぐ駆け上がっていくと、正面に小窓が現れる。
助かった、これで後はなんとかなるかも!
緊張感が開放感に変わり、ボクは意気揚々と小さな観音開きの扉に手を掛けた——
まさにその時、背後から何かが覆いかぶさってきた。
その重い体重に片膝をついてしまう中、後ろから腕を回してきた背後のソレがボクの肩から顔を覗かせる。
「うゔぅぅぅ」
最初から部屋の死角にいたのだろう。突起の無いのぺっとした顔を、微かに振動させながら怨嗟の声を漏らすパペット。
「ぎゃぁ——」
ボクは身体を左右に振りながら肘打ちの連打を出して引き剥がすと、壁に寄りかかるパペットに対し何度も何度も剣を振り下ろして攻撃を加えていく。
「死ね、死ね死ね、早く死ねぇ! 」
そこで肩に手を置かれる。
お姉ちゃんだ。
「エルちゃん、ごめんなさい。早く射ろうと狙いをさだめてたのですけど助けられなくて——」
いや、早く射ったらダメです!
それより——
「お姉ちゃん、とにかく外へ! 」
小窓を開き外に出ると、屋根の上は結構な急斜面であった。
やっ、やった、疲れたけどなんとかやった!
……ただ、少しだけ休憩させて欲しい。
そして屋根の一番上で腰を下ろして休憩しようと思い、おぼつかない足取りで屋根の棟に向かって上がっていると——
「エルちゃん! 」
煙突の陰からスケルトンが飛び出してきた!?
驚くのも束の間、振り下ろされた斧を受け止めるけど足場が悪いため、スケルトンと剣を交えた形で仰向けに転倒しそのままスケルトンごと一緒に屋根を滑って行ってしまう。
だけど、背中の摩擦でなんとか止まった!
あと頭一個分滑れば屋根から落ちてしまう所まで滑ったけど、なんとか持ち堪えたぞ!
「とりゃー! 」
そして最後の力を振り絞り覆いかぶさるスケルトンの腹部部分の骨を蹴り上げ、スケルトンを屋根から落下させる。
ほっ、ほんと、もう動けない、ちょっとこのままで休ませて。
「エル、早く立ち上がるのだ! 」
突然の激励。
見上げれば、アルドさんが屋根の棟に片足を乗せてこちらを見下ろしていた。
「アルドさん、ちょっとだけ休憩を——」
「駄目だ! 」
ボクの弱音に被せてくる形で、アルドさんは言い放つ。
……もしかしてアルドさん、昨晩の件を根に持ってボクをしごいているのでは——とか考えていると、上空の渦巻く雲の異変に気が付く。
あれは?
今にも雨が降り出しそうな暗雲から、丸めた布の端を持って下へ落としたような、沢山の真っ黒い何かがスゥーと真下へ伸びて来る。
あの黒いの、たしか先日城エリアに向かう途中に襲ってきていた影の悪魔!
それらの多くは途中で空を旋回し始めたのだけど、その一部が弧を描きボクたちの方へと降りて来る!
そしてあろうことか、ボクの身体を掴み屋根の下へと引き摺り落とそうとし出した。
「ぎゃー、来るな! 」
剣を振って霧へと変えていくけど、数が多い!
お姉ちゃんは短剣を抜いてボクの方へ来ようとしてるけど、あっちの方にも多くの影の悪魔が降りてきていて、纏わり付かれて進めないでいる。
おわわっ!?
そこでグイッと引っ張られてしまったボクは屋根から完全に体が出てしまうけど、落ち掛ける中懸命に片手を伸ばし屋根の軒先に辛うじて指だけで引っ掛ける事に成功する。
とその時屋根の棟にいる、自身の周囲に飛んで来る影の悪魔を片っ端から霧に変えているアルドさんと目が合った。
「アッ、アルドさん、助け——」
「エルなら出来る! 」
そのアルドさんの声は、助けを求めるボクの心の声を遮るようにして言った。
……アルドさんは、ボクを助けてくれないんだ。
そこでボクを繋ぎとめていた気持ちと言う名の紐が、ブチブチと次々に千切れていく。
誰も助けてくれない。
戦場ではボクは一人ぼっち。
……なんかもういいや、どうでもいいや。
ただ助けてくれないのなら、ボクは好きに動かさせて貰う!
命を大事に? そんなの知るか!
ボクに指図をするな!
ボクの命はボクの物だ!
下方を見ると、多くのモンスターたちがぶら下がるボクに殺到している。
お前たち、ここからはどちらかが死ぬまでの戦いだ!
みんな、倒してやる!
みんなみんなヌッコロしてやる!
指の力を抜くと、自由落下を始める。
やってやる、この感情を全てブチまけてやるぞ!
モンスターを踏みつけ降り立ったボクは、手始めに周囲を取り囲む奴らに襲いかかる。
「ぁるどぉ! ぁるどりゃ! どりゃどりゃどりゃー! 」
それから全てのモンスターを倒すまで、ボクはノンストップで動き続けるのであった。
本日の結果、魔石を20個ゲット。
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