勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第19話、リーヴェを開発
深呼吸を行いながら邪念を切り離すイメージにより、ふわふわしてしまっている心をなんとか落ち着かせる。
次に俯くリーヴェの背後へ回り込み指先を覆う魔力に意識を向けると、それこそ研磨したナイフのように魔力を鋭敏に研ぎ澄ませていく。
あとはリーヴェの肌と魔力の間に、私の魔力を差し込まなければならないわけなのだが——
「……服の中に手を入れるが、構わないか? 」
「……はい、よろしくお願いします」
ダメ元で聞いてみたが、意外にもすんなりオーケーが貰えた。
なら、期待に応えねば。
震える指先を無理やり制御する。しかし完全には震えが止まらない。
そんな中、左手で摘む事で出来た衣服の下方の隙間から、右の手を侵入させようと——
瞬間内に篭っていた熱気と、リーヴェから発せられる甘い香りが私へ届く。
……えぇい、ままよ!
意を決した私の魔力の先端が、まずはリーヴェの魔力へと触れる。
そして私は——
その魔力を受けて思わず片膝を付きそうになり、咄嗟に服の中の手を抜き取る。
なっ、これは!?
私は激流に落ちてしまった子羊のように、莫大な魔力の渦に身体を持って行かれ、危うく意識を失いかけてしまった、だと!?
なっ、なんだ今のは!?
手先のみならず、全身が震えてしまっている。
この震えは、先ほどのような疚しい感情から来るものではない。巨大な絶対者を目の前にして、足が竦み動けなくなってしまっている時の震えに近い。
しかし不思議な事に、震えはあるがイヤな感じはしなかった。なんと言うのだろうか、こう言うのもなんだが、まるで神などの神々しいものに近い気がする。
だから伸びた。
今のがなんだったのか、好奇心ともう一度神々しいものに触れたい一心で。
再度、リーヴェの魔力に触れる。
今度は意識を乱さぬよう、いつも以上に集中をして。そのお陰か、莫大な魔力を感じながらも、意識を保つ事が出来ていた。
しかしリーヴェに秘められた、この魔力の奔流はいったい?
これだけの魔力量があれば嫌な話、リーヴェは高値で売りに出され、決してパオルのような小物に買われる事はなかったはず。
いや、この感じ——
直に触れる事により、段々と分かって来たぞ。
リーヴェは魔力が溢れ出しているのだ。
人は普通、魔力を消費すれば時間をかけて少しずつ消費した魔力を回復していく。
他には魔法薬で回復をしたり、熟練の魔法使いならば瞑想で己が魔力の回復速度を上げる事も出来る。
しかしリーヴェは何もしていないのに、自然と高速で魔力が回復している状態。
もしかして——
服から手を抜き取ると、背中越しにリーヴェへ語りかける。
「リーヴェ、身体が弱いのは昔からなのか? 」
「はい、それと赤ちゃんの頃とかは、よく熱が出てたそうです」
やはりそうか。自然と魔力が溢れ出す体質は、前世の勇者パーティーにいた精霊使いもそうだった。
あいつ曰く、二千年前の文献に同じ特異体質の大魔法使いの記述があったので分かったらしいのだが、奴が赤子だった頃は原因不明で、度々高熱が出ては、各地から多くの医者を呼び寄せていたらしい。
リーヴェも幼少期に検査はされただろうが、溢れ出していたとしても、魔力総量が多いわけではないので、検査には引っかからなかったのだろう。
それに奴隷時の首輪、正常に機能していたならすぐに首が絞まってしまう。
と言う事は、呵責の魔具、本当の当たり首輪はリーヴェが引いていたのか?
今となっては屋敷に戻って確かめる事は出来ないが、恐らくそう言う事なのだろう。
しかしリーヴェが、そんな寵児の器を持っていようとは。
魔力の自動回復、多くの魔法を習得した者たちが喉から手が出るほど欲しい能力だと言うのに、普通の村娘であるリーヴェが手にしてしまっているとは、なんという皮肉。
「リーヴェ」
「はい? 」
「どうやら、魔法の才があるようだ」
「……えぇ!? 本当ですか!? 」
「あぁ、信じられないだろうが、リーヴェとは一番無縁だと思われる魔法の才だ」
「……あの、アルドくん、リーヴェも魔法は無縁そうかなーとは思いますけど、別の言い方が良かったのです! 改まってアルドくんからそう言われると、なんだかとてもバカにされてる気がするのです! 」
「すまなかった」
「うぅ、そこも素直に謝らないで欲しかったです」
「わかったわかった、別角度からが良いと言う事だな? そうだな……、リーヴェは暗記とか苦手だったよな? 」
「はい、苦手ですけど? 」
「つまり改めて言うならば、宝の持ち腐れって奴だ! 」
「本当のことですけど、さっきと合わさって更にひどくなってます! 」
「私はリーヴェらしくて良いと思うよ」
「励ましになってないです! 」
「ふぅー、それでは言葉遊びはこれくらいにして、続きをしようか」
「うぅぅ、もうどうにでもして下さい」
再度背後から服の中に手を潜り込ませ、リーヴェの肌にギリギリ触れない所で止める。
全ての魔力回路を起動させる要となる魔力回路は丹田にあるが、その場所は個人で多少のズレがある。
しかしこの膨大な魔力の渦の中、探索に時間をかければかける程、自身の探る位置すらあやふやになり明後日の場所を探す羽目になるだろう。
短期決戦。狙いを定め、一気に見つけ出す!
魔力を鋭敏にすると、再度リーヴェの魔力に触れる。瞬間、私の魔力とリーヴェの魔力が混ざり合う。
リーヴェの魔力が逆流し、私の中に!
いや、狼狽えるな!
もう一度魔力を受け流し、私は己に与えられた仕事をこなすのだ!
どこだ、ここか? 
早く見つけねば!
だが焦るな!
頭は冷静に、それでいて身体は迅速に!
そして、そしてそして掴み取る!
「あぅっ」
リーヴェの魔力回路を!
やった、私はやったぞ!
正直成功確率は低かったが、なんとか魔力回路を握り込む事が出来た。
「はぁ、はぁ、はぁ、アルドくん——」
「わかってる! 」
時間をかければ、リーヴェへの負担が大きくなっていく。感慨にふけっている場合ではないのだ。
私の手の内でリーヴェの魔力回路が振動する程魔力を滲ませている中、神力を混ぜた魔力を僅かにだけ流し込みすぐさま止める。
「あぐぐぅっ」
声を漏らしたリーヴェを見やる。息を荒げてはいるが、少し待てば治って来ている。この感じならまだまだ余裕があるはず。
今からエルの時と同じように魔力を流し続けるわけなのだが、失敗してリーヴェを傷つけないためにも、ここからは彼女の様子を事細かに観察しなくては。
再開させると、すぐにリーヴェの呼吸が段々と荒くなってきた。
「はぁはぁはぁ、んぐっ、あっ、はぁ、あっあっ」
呼吸はいつしか意味をなさない声に変わり、それを恥じたのか、リーヴェは口元を両手で覆う。
「んっ、んっ、んぐっ、んぐっ、——ん、んっんっ——」
リーヴェはその声を抑える状態で、自身の身体を抱きしめるようにして前屈みになると、密着させた太腿を擦り合わせ始める。
リーヴェの魔力は、人の身に宿るには膨大すぎる。これは私の予想に反して、早々に限界が近づいて来ているのかもしれない。
「リーヴェ、これだけの魔力を流す魔力回路だ。通常のじっくりとしたやり方ではかえって負担が大きくなるやもしれない。そこで予定変更、一気に終わらせようと思う」
そこで振り返ったリーヴェは、口元を押さえながら涙目で不安そうな表情を浮かべていた。
「なぁに、手応えは感じている。絶対に上手くいく」
「あっ、アルドくん——」
「どうした? 」
「はぁはぁはぁ、リーヴェは怖いのです。んぐっ、電気がたくさん走って、気持ちがおかしくなって、身体が飛んでいって、しまいそうで——」
「大丈夫だ、魔力回路が開いても肉体はもちろん、エーテル体、メンタル体、コーザル体、アストラル体が欠損することはない」
「少し、あっ、掴まって、ても、あっあっ、いいです、んんぅ」
「それぐらい、お安い御用だ」
そしてこちらを向いたリーヴェが、私の胸に飛び込んできた。そして刺激に耐えるためだろう、口元を押さえていた手を外し、私の身体にしがみ付くようにして抱きついてきた。
私はリーヴェの背中、魔力回路を握りしめたままのため、そのか細い腰に腕を回すような格好になってしまっている。
熱を帯びた柔らかな肉厚が私の身体に刺激を与え、柔和な香りが鼻腔をくすぐる。
意識するな!
そしてリーヴェは俯き私の胸に顔を埋めながら、意を決した声色でお願いしてくる。
「んっ、あっ、んぐっ、んっ、お願い、んぁ、します! 」
「あぁ」
もしかしたらエルの時のように、リーヴェも大きく仰け反るかもしれない。そうなると首を痛めてしまうかも。
そこで私は空いている腕を、リーヴェの肩と頭を包み込むようにして腕を回す。
呼吸を荒げているため紅潮させてしまっているリーヴェがこちらを見上げてきた。
そこで目と目が合い、私は簡潔に宣言する。
「いくぞ! 」
少し強めの、神力混じりの魔力を流し込む。
声にならない声を上げながら、私にしがみ付く手をさらにキュッと握りしめてくるリーヴェ。
それから程なくして、リーヴェは私の腕の中で小刻みに震えた。
「あっ、あ"っ、——あ"っ」
そこで張り詰めていた全身が弛緩したようで、その場に崩れ落ちるリーヴェ。
私は彼女を抱きしめ支えると、そのままお姫様抱っこをして寝台へ寝かした。
と言うか、目のやり場にこまる。
長い髪が乱れているため呼吸を荒げる口元しか見えないリーヴェは、着衣が袖の短い寝巻きな上に少しはだけているため、汗ばんだ腹部とかが見えてしまっている。
私はそんな横になるリーヴェに、そっと掛け布団をかけた。
「紳士ですね〜」
ふざけた調子の声。エルが扉の隙間からニヤニヤしながら見ていたようだ。
しかしエル、私が他の事に集中していたとは言え、気配を感じさせないとはやるじゃないか。
「覗き見とは悪趣味だな」
「いやいや、それよりお姉ちゃんは同性から見てもエッチな身体をしてるからですね。見るぐらいなら、お姉ちゃんも怒ったりしないですよ? 」
「馬鹿を言うな。第一私は聖職……、聖職者のようなものだ。覗き見なんぞしない」
「うわたぁー、これは険しい道のりになりそうだなー」
「なんの話だ? 」
「いえ、こっちだけの話ですよー」
結局そのまま一人にしておけなくてリーヴェの側で様子を見ていたが、暫くすると呼吸が落ち着きスヤスヤ寝息を立て始めた。
魔力回路の確認は、後日に持ち越す事にするか。
ただ彼女を運んで起こしては可哀想なので、急遽私とリーヴェたちの部屋を交換する事に決め、荷物を纏めた私は退室をするのであった。
次に俯くリーヴェの背後へ回り込み指先を覆う魔力に意識を向けると、それこそ研磨したナイフのように魔力を鋭敏に研ぎ澄ませていく。
あとはリーヴェの肌と魔力の間に、私の魔力を差し込まなければならないわけなのだが——
「……服の中に手を入れるが、構わないか? 」
「……はい、よろしくお願いします」
ダメ元で聞いてみたが、意外にもすんなりオーケーが貰えた。
なら、期待に応えねば。
震える指先を無理やり制御する。しかし完全には震えが止まらない。
そんな中、左手で摘む事で出来た衣服の下方の隙間から、右の手を侵入させようと——
瞬間内に篭っていた熱気と、リーヴェから発せられる甘い香りが私へ届く。
……えぇい、ままよ!
意を決した私の魔力の先端が、まずはリーヴェの魔力へと触れる。
そして私は——
その魔力を受けて思わず片膝を付きそうになり、咄嗟に服の中の手を抜き取る。
なっ、これは!?
私は激流に落ちてしまった子羊のように、莫大な魔力の渦に身体を持って行かれ、危うく意識を失いかけてしまった、だと!?
なっ、なんだ今のは!?
手先のみならず、全身が震えてしまっている。
この震えは、先ほどのような疚しい感情から来るものではない。巨大な絶対者を目の前にして、足が竦み動けなくなってしまっている時の震えに近い。
しかし不思議な事に、震えはあるがイヤな感じはしなかった。なんと言うのだろうか、こう言うのもなんだが、まるで神などの神々しいものに近い気がする。
だから伸びた。
今のがなんだったのか、好奇心ともう一度神々しいものに触れたい一心で。
再度、リーヴェの魔力に触れる。
今度は意識を乱さぬよう、いつも以上に集中をして。そのお陰か、莫大な魔力を感じながらも、意識を保つ事が出来ていた。
しかしリーヴェに秘められた、この魔力の奔流はいったい?
これだけの魔力量があれば嫌な話、リーヴェは高値で売りに出され、決してパオルのような小物に買われる事はなかったはず。
いや、この感じ——
直に触れる事により、段々と分かって来たぞ。
リーヴェは魔力が溢れ出しているのだ。
人は普通、魔力を消費すれば時間をかけて少しずつ消費した魔力を回復していく。
他には魔法薬で回復をしたり、熟練の魔法使いならば瞑想で己が魔力の回復速度を上げる事も出来る。
しかしリーヴェは何もしていないのに、自然と高速で魔力が回復している状態。
もしかして——
服から手を抜き取ると、背中越しにリーヴェへ語りかける。
「リーヴェ、身体が弱いのは昔からなのか? 」
「はい、それと赤ちゃんの頃とかは、よく熱が出てたそうです」
やはりそうか。自然と魔力が溢れ出す体質は、前世の勇者パーティーにいた精霊使いもそうだった。
あいつ曰く、二千年前の文献に同じ特異体質の大魔法使いの記述があったので分かったらしいのだが、奴が赤子だった頃は原因不明で、度々高熱が出ては、各地から多くの医者を呼び寄せていたらしい。
リーヴェも幼少期に検査はされただろうが、溢れ出していたとしても、魔力総量が多いわけではないので、検査には引っかからなかったのだろう。
それに奴隷時の首輪、正常に機能していたならすぐに首が絞まってしまう。
と言う事は、呵責の魔具、本当の当たり首輪はリーヴェが引いていたのか?
今となっては屋敷に戻って確かめる事は出来ないが、恐らくそう言う事なのだろう。
しかしリーヴェが、そんな寵児の器を持っていようとは。
魔力の自動回復、多くの魔法を習得した者たちが喉から手が出るほど欲しい能力だと言うのに、普通の村娘であるリーヴェが手にしてしまっているとは、なんという皮肉。
「リーヴェ」
「はい? 」
「どうやら、魔法の才があるようだ」
「……えぇ!? 本当ですか!? 」
「あぁ、信じられないだろうが、リーヴェとは一番無縁だと思われる魔法の才だ」
「……あの、アルドくん、リーヴェも魔法は無縁そうかなーとは思いますけど、別の言い方が良かったのです! 改まってアルドくんからそう言われると、なんだかとてもバカにされてる気がするのです! 」
「すまなかった」
「うぅ、そこも素直に謝らないで欲しかったです」
「わかったわかった、別角度からが良いと言う事だな? そうだな……、リーヴェは暗記とか苦手だったよな? 」
「はい、苦手ですけど? 」
「つまり改めて言うならば、宝の持ち腐れって奴だ! 」
「本当のことですけど、さっきと合わさって更にひどくなってます! 」
「私はリーヴェらしくて良いと思うよ」
「励ましになってないです! 」
「ふぅー、それでは言葉遊びはこれくらいにして、続きをしようか」
「うぅぅ、もうどうにでもして下さい」
再度背後から服の中に手を潜り込ませ、リーヴェの肌にギリギリ触れない所で止める。
全ての魔力回路を起動させる要となる魔力回路は丹田にあるが、その場所は個人で多少のズレがある。
しかしこの膨大な魔力の渦の中、探索に時間をかければかける程、自身の探る位置すらあやふやになり明後日の場所を探す羽目になるだろう。
短期決戦。狙いを定め、一気に見つけ出す!
魔力を鋭敏にすると、再度リーヴェの魔力に触れる。瞬間、私の魔力とリーヴェの魔力が混ざり合う。
リーヴェの魔力が逆流し、私の中に!
いや、狼狽えるな!
もう一度魔力を受け流し、私は己に与えられた仕事をこなすのだ!
どこだ、ここか? 
早く見つけねば!
だが焦るな!
頭は冷静に、それでいて身体は迅速に!
そして、そしてそして掴み取る!
「あぅっ」
リーヴェの魔力回路を!
やった、私はやったぞ!
正直成功確率は低かったが、なんとか魔力回路を握り込む事が出来た。
「はぁ、はぁ、はぁ、アルドくん——」
「わかってる! 」
時間をかければ、リーヴェへの負担が大きくなっていく。感慨にふけっている場合ではないのだ。
私の手の内でリーヴェの魔力回路が振動する程魔力を滲ませている中、神力を混ぜた魔力を僅かにだけ流し込みすぐさま止める。
「あぐぐぅっ」
声を漏らしたリーヴェを見やる。息を荒げてはいるが、少し待てば治って来ている。この感じならまだまだ余裕があるはず。
今からエルの時と同じように魔力を流し続けるわけなのだが、失敗してリーヴェを傷つけないためにも、ここからは彼女の様子を事細かに観察しなくては。
再開させると、すぐにリーヴェの呼吸が段々と荒くなってきた。
「はぁはぁはぁ、んぐっ、あっ、はぁ、あっあっ」
呼吸はいつしか意味をなさない声に変わり、それを恥じたのか、リーヴェは口元を両手で覆う。
「んっ、んっ、んぐっ、んぐっ、——ん、んっんっ——」
リーヴェはその声を抑える状態で、自身の身体を抱きしめるようにして前屈みになると、密着させた太腿を擦り合わせ始める。
リーヴェの魔力は、人の身に宿るには膨大すぎる。これは私の予想に反して、早々に限界が近づいて来ているのかもしれない。
「リーヴェ、これだけの魔力を流す魔力回路だ。通常のじっくりとしたやり方ではかえって負担が大きくなるやもしれない。そこで予定変更、一気に終わらせようと思う」
そこで振り返ったリーヴェは、口元を押さえながら涙目で不安そうな表情を浮かべていた。
「なぁに、手応えは感じている。絶対に上手くいく」
「あっ、アルドくん——」
「どうした? 」
「はぁはぁはぁ、リーヴェは怖いのです。んぐっ、電気がたくさん走って、気持ちがおかしくなって、身体が飛んでいって、しまいそうで——」
「大丈夫だ、魔力回路が開いても肉体はもちろん、エーテル体、メンタル体、コーザル体、アストラル体が欠損することはない」
「少し、あっ、掴まって、ても、あっあっ、いいです、んんぅ」
「それぐらい、お安い御用だ」
そしてこちらを向いたリーヴェが、私の胸に飛び込んできた。そして刺激に耐えるためだろう、口元を押さえていた手を外し、私の身体にしがみ付くようにして抱きついてきた。
私はリーヴェの背中、魔力回路を握りしめたままのため、そのか細い腰に腕を回すような格好になってしまっている。
熱を帯びた柔らかな肉厚が私の身体に刺激を与え、柔和な香りが鼻腔をくすぐる。
意識するな!
そしてリーヴェは俯き私の胸に顔を埋めながら、意を決した声色でお願いしてくる。
「んっ、あっ、んぐっ、んっ、お願い、んぁ、します! 」
「あぁ」
もしかしたらエルの時のように、リーヴェも大きく仰け反るかもしれない。そうなると首を痛めてしまうかも。
そこで私は空いている腕を、リーヴェの肩と頭を包み込むようにして腕を回す。
呼吸を荒げているため紅潮させてしまっているリーヴェがこちらを見上げてきた。
そこで目と目が合い、私は簡潔に宣言する。
「いくぞ! 」
少し強めの、神力混じりの魔力を流し込む。
声にならない声を上げながら、私にしがみ付く手をさらにキュッと握りしめてくるリーヴェ。
それから程なくして、リーヴェは私の腕の中で小刻みに震えた。
「あっ、あ"っ、——あ"っ」
そこで張り詰めていた全身が弛緩したようで、その場に崩れ落ちるリーヴェ。
私は彼女を抱きしめ支えると、そのままお姫様抱っこをして寝台へ寝かした。
と言うか、目のやり場にこまる。
長い髪が乱れているため呼吸を荒げる口元しか見えないリーヴェは、着衣が袖の短い寝巻きな上に少しはだけているため、汗ばんだ腹部とかが見えてしまっている。
私はそんな横になるリーヴェに、そっと掛け布団をかけた。
「紳士ですね〜」
ふざけた調子の声。エルが扉の隙間からニヤニヤしながら見ていたようだ。
しかしエル、私が他の事に集中していたとは言え、気配を感じさせないとはやるじゃないか。
「覗き見とは悪趣味だな」
「いやいや、それよりお姉ちゃんは同性から見てもエッチな身体をしてるからですね。見るぐらいなら、お姉ちゃんも怒ったりしないですよ? 」
「馬鹿を言うな。第一私は聖職……、聖職者のようなものだ。覗き見なんぞしない」
「うわたぁー、これは険しい道のりになりそうだなー」
「なんの話だ? 」
「いえ、こっちだけの話ですよー」
結局そのまま一人にしておけなくてリーヴェの側で様子を見ていたが、暫くすると呼吸が落ち着きスヤスヤ寝息を立て始めた。
魔力回路の確認は、後日に持ち越す事にするか。
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