勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める! 〜只の勤勉で心配性な聖職者ですけど?〜
第6話、卑劣な何でも屋ガルム②
くっ、くそ、聞いてねぇぞ!
ターゲットがこんなやばいイカれた奴だなんて!
「さてと、色々と知ってる事を聞かせて貰わないといけないわけなんだが——」
地面に座り込んでいる俺は、手にしている武器を手離し無抵抗をアピールした。しかしおもむろに近寄ってきた若造は跪くと、俺の口の中に手を突っ込んでくる。
「ぐがあっ! ぎゃあぁー、あーっ、はぁっはぁー」
俺の、こいつ無抵抗な俺の前歯を、有無を言わさず引っこ抜きやがった。
と言うかこいつの力、デタラメすぎる!
「どうしてそんな事を、って顔をしているな。別に指や目玉でも良かったんだが、これからの質問に素直に答えるようにそうした」
そこで奴の冷酷な表情が一瞬だけはっとしたものに変わり、視線を後方の女の方へ向ける。
「リーヴェ、ちょっとこれからはあまり見せられた事をしないから、私がいいって言うまで目を瞑って耳も塞いでてくれないか? 」
「はっはい! 」
そしてこちらを向いた奴は、先ほどと同じ冷酷な表情をしていた。
俺はこれから——
「お前たち三人以外に、仲間はいるのか? 」
俺はこれから殺されてしまうのか?
いや、どうやったら生き残れるのかを考えねぇと。
絶対あるはずだ、生き残る道は必ずあるんだと信じるんだ!
「——時間が勿体無い」
えっ?
いや、そんな——
奴は俺の剣を拾い上げると立ち上がり、俺の髪の毛を上からぐっと掴むと首筋にその剣を当て——
「ぐぎゃぎゃぎぃ——」
首をギコギコ斬られ痛みに絶叫していると、グィと視界が上がる。そして俺は宙にぷかぷか浮いたまま、ドサッと地面に倒れこむ首から先がない、俺の身体を、みて……ぃ……
はぁ!?
俺は、俺は何をしているんだ?
うぐぇっ、気分が悪いし吐き気がする。それに全身が怠くてかなり冷えちまっている。
これは、どうしちまったんだ!?
「今のでだいぶ血が流れたからな、気分が悪いだろ? 」
そこで俺の上半身が、首から下が血で真っ赤に染まっている事に気がつく。
俺はたしか、……首を斬られた?
いやでも、手で触ってみるが傷はないぞ?
目蓋も重いし、幻覚でも見ちまったのか?
「俺は、どうなったんだ? 」
「あっ、兄貴生きてるのか!? 首を刎ねられたのに」
ダガムの驚きの声に、背筋が凍りつく。
つまりさっきのは現実で、でも俺は生きてる?
頭が混乱しぐわんぐわんと目眩がする中、俺を見下ろす若造の声を耳が拾い上げていく。
「この街道はそこそこ人通りがあるわけなんだが、もう一度だけ同じ質問をしてやる。仲間は他にいるのか? 」
そこで固まってしまっている俺に向かって、再度跪いた奴が伸ばしてくる指が、俺の目玉に近づいて来ている事に気がつく。
「いっ、いねぇ。俺たち三人だけだ」
指を突き出した手が眼前で止まる。
「もしかして、お前たちは山賊か何かか? 」
「あぁ、ここらの街道を縄張りにしてる」
「なるほど。それと他に隠れてる奴も、本当にいなさそうだな」
なんだ? まるで探知系の魔法でも使ってるかのように、自信満々に言ってのけたぞ?
いや、魔法が使える奴はこんな所で配達屋なんてやってねぇ。そして生まれて才能がある奴は、王都の魔法学院に招集される。だから魔法じゃなくて何かしらのカラクリが——
いやまてよ、こいつの強さは異常だ。
もしかして本当に魔法を使ったのか?
それに俺たちは、嵌められたのでは?
考えれば太っていたとは言え、成人男性がただの若造一人を殺してくれって依頼が、そもそもおかしい気がする。
不意打ちさえすれば、多少の力の差なんてあってないようなものだからだ。
くそっ、あの依頼人、俺たちを当て馬に——
「次の質問だ。なぜ私の名前を知っていた? 」
「殺しの依頼だ、あんたを殺してくれって頼まれた!」
「そいつは誰だ? 」
そこで奴がこちらに伸ばした指を、わざとらしく動かしてみせる。
「ブライアンって名の男だった! 小太りな中年男の! 」
若造は思案げな表情を浮かべたあと、口を開く。
「そのブライアンって奴の特徴を、更に詳しく言うんだ」
「フードを目深に被ってたから、顔はあまり見えなかった。ただ外套の下から僅かに見えた服は、俺たち平民が着るような安っぽい物じゃなかったように思える。
あとは一人で俺たちを訪ねてきて、……そうだ、奴は男なのに、微かに香水の匂いもしていた」
「香水か。……そう言えば、あんたの名前をまだ聞いていなかったな」
「俺か? 俺の名前はガルム! フーゴの町の何でも屋、ガルムだ! 」
「そうか」
若造は短くそう述べると、伸ばした手で俺の首を掴み立ち上がる。そして力がグッと込められていく。
「なっ、色々話したんだから、助けてくれるんだよな? ガハッ、俺には小さな娘がいるんだ! 」
一瞬掴む力が弱まったため、俺はジタバタもがいて手から逃れる。しかし片足が折れてしまっているため、俺はまた地面に尻餅をついた。
「お前は最初、不意打ちをするために嘘を吐いた」
「あっ、あれは調子に乗ってたんだ! すまない、調子に乗っちまって! 謝っても許されないかもしれないが、すまなかった。この通りだ! 」
膝をついたまま地面に触れるぐらい頭を下げると、むんずと髪の毛を掴まれ上を向かされる。
「お前たちは同じく命乞いをしてきた奴を、命を取らずに見逃してきたのか? 」
「あぁ、もちろんだ! 金だけ奪って逃した! 」
精一杯見上げながらこびを売っていると、若造が口元を嗜虐的な笑みに歪める。
「山賊業ではなくて、今回のように殺しの仕事をしている時はどうなんだ? 」
「それは金だけ奪って、……そうだ、もうここらに近づくなって逃してきた! 」
そこで若造が、一瞬だけ瞳を明後日の方向に動かす。
「いやな、実は昔、私はお前みたいな奴を見逃して痛い目にあっている。
それと後続の旅人が来たみたいだから、からかうのはもうお終いだ。まぁ運がなかったと思って、ただ死んでくれ」
「なっ、そんぶべっ」
見上げた視線が強制的に真後ろを向いた所で、息苦しさと共に俺の視界は徐々に閉じていった。
ターゲットがこんなやばいイカれた奴だなんて!
「さてと、色々と知ってる事を聞かせて貰わないといけないわけなんだが——」
地面に座り込んでいる俺は、手にしている武器を手離し無抵抗をアピールした。しかしおもむろに近寄ってきた若造は跪くと、俺の口の中に手を突っ込んでくる。
「ぐがあっ! ぎゃあぁー、あーっ、はぁっはぁー」
俺の、こいつ無抵抗な俺の前歯を、有無を言わさず引っこ抜きやがった。
と言うかこいつの力、デタラメすぎる!
「どうしてそんな事を、って顔をしているな。別に指や目玉でも良かったんだが、これからの質問に素直に答えるようにそうした」
そこで奴の冷酷な表情が一瞬だけはっとしたものに変わり、視線を後方の女の方へ向ける。
「リーヴェ、ちょっとこれからはあまり見せられた事をしないから、私がいいって言うまで目を瞑って耳も塞いでてくれないか? 」
「はっはい! 」
そしてこちらを向いた奴は、先ほどと同じ冷酷な表情をしていた。
俺はこれから——
「お前たち三人以外に、仲間はいるのか? 」
俺はこれから殺されてしまうのか?
いや、どうやったら生き残れるのかを考えねぇと。
絶対あるはずだ、生き残る道は必ずあるんだと信じるんだ!
「——時間が勿体無い」
えっ?
いや、そんな——
奴は俺の剣を拾い上げると立ち上がり、俺の髪の毛を上からぐっと掴むと首筋にその剣を当て——
「ぐぎゃぎゃぎぃ——」
首をギコギコ斬られ痛みに絶叫していると、グィと視界が上がる。そして俺は宙にぷかぷか浮いたまま、ドサッと地面に倒れこむ首から先がない、俺の身体を、みて……ぃ……
はぁ!?
俺は、俺は何をしているんだ?
うぐぇっ、気分が悪いし吐き気がする。それに全身が怠くてかなり冷えちまっている。
これは、どうしちまったんだ!?
「今のでだいぶ血が流れたからな、気分が悪いだろ? 」
そこで俺の上半身が、首から下が血で真っ赤に染まっている事に気がつく。
俺はたしか、……首を斬られた?
いやでも、手で触ってみるが傷はないぞ?
目蓋も重いし、幻覚でも見ちまったのか?
「俺は、どうなったんだ? 」
「あっ、兄貴生きてるのか!? 首を刎ねられたのに」
ダガムの驚きの声に、背筋が凍りつく。
つまりさっきのは現実で、でも俺は生きてる?
頭が混乱しぐわんぐわんと目眩がする中、俺を見下ろす若造の声を耳が拾い上げていく。
「この街道はそこそこ人通りがあるわけなんだが、もう一度だけ同じ質問をしてやる。仲間は他にいるのか? 」
そこで固まってしまっている俺に向かって、再度跪いた奴が伸ばしてくる指が、俺の目玉に近づいて来ている事に気がつく。
「いっ、いねぇ。俺たち三人だけだ」
指を突き出した手が眼前で止まる。
「もしかして、お前たちは山賊か何かか? 」
「あぁ、ここらの街道を縄張りにしてる」
「なるほど。それと他に隠れてる奴も、本当にいなさそうだな」
なんだ? まるで探知系の魔法でも使ってるかのように、自信満々に言ってのけたぞ?
いや、魔法が使える奴はこんな所で配達屋なんてやってねぇ。そして生まれて才能がある奴は、王都の魔法学院に招集される。だから魔法じゃなくて何かしらのカラクリが——
いやまてよ、こいつの強さは異常だ。
もしかして本当に魔法を使ったのか?
それに俺たちは、嵌められたのでは?
考えれば太っていたとは言え、成人男性がただの若造一人を殺してくれって依頼が、そもそもおかしい気がする。
不意打ちさえすれば、多少の力の差なんてあってないようなものだからだ。
くそっ、あの依頼人、俺たちを当て馬に——
「次の質問だ。なぜ私の名前を知っていた? 」
「殺しの依頼だ、あんたを殺してくれって頼まれた!」
「そいつは誰だ? 」
そこで奴がこちらに伸ばした指を、わざとらしく動かしてみせる。
「ブライアンって名の男だった! 小太りな中年男の! 」
若造は思案げな表情を浮かべたあと、口を開く。
「そのブライアンって奴の特徴を、更に詳しく言うんだ」
「フードを目深に被ってたから、顔はあまり見えなかった。ただ外套の下から僅かに見えた服は、俺たち平民が着るような安っぽい物じゃなかったように思える。
あとは一人で俺たちを訪ねてきて、……そうだ、奴は男なのに、微かに香水の匂いもしていた」
「香水か。……そう言えば、あんたの名前をまだ聞いていなかったな」
「俺か? 俺の名前はガルム! フーゴの町の何でも屋、ガルムだ! 」
「そうか」
若造は短くそう述べると、伸ばした手で俺の首を掴み立ち上がる。そして力がグッと込められていく。
「なっ、色々話したんだから、助けてくれるんだよな? ガハッ、俺には小さな娘がいるんだ! 」
一瞬掴む力が弱まったため、俺はジタバタもがいて手から逃れる。しかし片足が折れてしまっているため、俺はまた地面に尻餅をついた。
「お前は最初、不意打ちをするために嘘を吐いた」
「あっ、あれは調子に乗ってたんだ! すまない、調子に乗っちまって! 謝っても許されないかもしれないが、すまなかった。この通りだ! 」
膝をついたまま地面に触れるぐらい頭を下げると、むんずと髪の毛を掴まれ上を向かされる。
「お前たちは同じく命乞いをしてきた奴を、命を取らずに見逃してきたのか? 」
「あぁ、もちろんだ! 金だけ奪って逃した! 」
精一杯見上げながらこびを売っていると、若造が口元を嗜虐的な笑みに歪める。
「山賊業ではなくて、今回のように殺しの仕事をしている時はどうなんだ? 」
「それは金だけ奪って、……そうだ、もうここらに近づくなって逃してきた! 」
そこで若造が、一瞬だけ瞳を明後日の方向に動かす。
「いやな、実は昔、私はお前みたいな奴を見逃して痛い目にあっている。
それと後続の旅人が来たみたいだから、からかうのはもうお終いだ。まぁ運がなかったと思って、ただ死んでくれ」
「なっ、そんぶべっ」
見上げた視線が強制的に真後ろを向いた所で、息苦しさと共に俺の視界は徐々に閉じていった。
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