「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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「もしかして、そういうお誘いがあるのですかっ!?」
 本人は至って無頓着だが、俺の恋人も香川教授並みにモテる。そんな兆候があるならば、真っ先に潰しにかかる必要がある。香川教授はーーもちろん為人ひととなりも好きだがーーわが省にとって掛け替えのない人物という側面がある。だから公務的にも守る必要があるが、俺の恋人は私的な部分で大好きだった。それに何より香川教授には田中先生という心強い騎士ナイトが付いている。それに比べて俺の恋人には俺しかいない。まあ、病院内のことならば田中先生に懇願なきついての「お願い」に参上したら良いとは思うが。
 香川教授の件は確かに重要事項ではある。しかし俺の恋人にちょっかいを出されているのであれば、田中先生に申し訳ないものの最優先事項はこちらだ。
 田中先生御用達のーーといっても教授と恋仲になってからは足を運んでいないらしかったがーーのゲイバーに「呉先生もお連れしていいのですがね」などと良く脅かされたモノだったがーー店に行っても絶対にお近づきになりたい男どもから酒はどんどん運ばれて来るタイプの容姿は持ち合わせている。
 今回あの狂気の研修医駆除のためにこんなにあちこちに根回ししたり実際に動いているのは将来俺の恋人だってそういうリスクがないとは言えないからという側面もある。
 まあ、大輪のカトレアのような美しさを持つ香川教授がターゲットの井藤とやらは俺の恋人は好みのタイプではないだろうが。
「バーカ、何言ってんだよ。オレに『そういう』興味を持つ人間なんて、しかも同性で……なんてそんな物好きはそうそう居ないって」
 カラリと笑い飛ばされたが、そうでないことは惚れた弱みを持つ俺はまあ置いておくとして田中先生もモテるだろうな……とは思っているハズだ。
 だから御用達のゲイバーに連れて行くという軽い脅しめいたジャブが利くわけで、俺の恋人と香川教授という両手に花状態でくだんのゲイバーに行ったら多分、人気は二分されるだろう。
 そういうのは単に好みの問題でしかない。AKBとかそういう「一般男性受けしそうなアイドル」を多数厳選して集めたグループだって誰押し(だったと思うが興味がないので違うかもしれない)とかで細分化される。
「では異性ですかっ!?」
 すると。

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