「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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 病院長に自科のクレームを――しかも医師や看護師が悪いモノ――隠蔽したいという気持ちも分かる。
 そして俺の恋人が患者さんからの信望の厚い精神科医だからこそ、真殿とかいう教授と大喧嘩しても病院に残れたのも確かだった。そしてその不定愁訴外来では病院長に報告出来るというウワサが広がっているならばゲシュタボとまでは言い過ぎだろうが、反感とか妬みなどを受けやすいだろうなとも思ってしまう。
「ま、話が逸れてしまった。とにかく香川外科の研修医の先生が同級生だったんだろう?井藤の。
 そして、そんな性格じゃ恋人なんて出来ないのは分かってはいる。性格じゃなくて、正確には病気の範疇だけれどな。
 ただ、そういう患者さんの肌を触ってみるとその反応で色々なことが分かるから、今回はホントに残念だった。
 その美樹さんは高速道路に置いてきぼりにされたって?精神的外傷トラウマとかは大丈夫なのか?」
 俺の恋人の職業意識と、そして博愛主義は大変好ましく思う。ただ、まだ掴まれた場所が痛い俺のことももう少し労わってくれたらいいのに……と思ってしまう。
 臨床経験はないものの精神科専攻として初歩的なミスを犯したというこちらが悪いのも分かってはいたが。
「そちらは大丈夫なようです。美樹は恋人を財力で選ぶ人間ですから。今の恋人も羽振りは良さそうですが、何となく別れの気配を感じているようなので、さらに資産力が有ってしかもそれをバンバン使う人間を紹介すると言ったらあっさりと笑顔になりましたよ」
 最初は確かに怖がっていたが、最後の方は見事に立ち直っていた――何度も言うが臨床経験はないものの、俺だって真面目に精神科の講義は受けたし、自慢ではないがそちら系の成績はオール「優」だ。
 外科などは「可」が見事に並んでいたものの。大学での成績は「優」が一番良くて次は「良」でその次は「可」そして単位は上げないぞ!という「不可」がある――それなりに精神疾患には造詣が深い方だと自認している。
 当然成績表も就職の時に提示する義務が有ったので、俺の精神科の知識を求めて来る上司も居るし、その上司の求めている以上の答えは出しているとも自負している。
 美樹の場合はメンタルヘルスとは無縁の性格をしているような気がする。
 まあ、何百万を「あの顔」に投資したのか知らないが、ご自慢の顔が何らかの事情で壊れてしまった時には一気に来るかも知れないが。
 ただ。

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