「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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「マサさんてさ、インテリゲンチャンなのに、キチンと向き合ってくれるでしょ?
 そりゃ甘やかしてくれる恋人もーーそしてバンバン、プレゼントをくれるならもっと良いんだけど、さーーとっても貴重だけど『良いよ、美樹がそんなことを知らなくて』とか言われるとちょっとムッとするというか……。そりゃさ、頭だって悪いし、言われたことも直ぐに忘れてしまったりはするけれど……。なんか『人間扱い』をホントにされてるのかな?って思っちゃう時も有る。
 可愛い犬にさ、洋服を着せて散歩させているマダムとか居るよね?ああいうのと一緒でさ……。 犬はお洋服なんか着たくないだろうなとか思ってしまう。あ、俺は欲しいけどねー」
 ちらりと赤い舌を出す美樹は照れたように笑った。
 確かに美樹の恋人パトロン選びはお金持ち度が優先されるのも事実だろうが、もっとチャラい感じの顔ではなくて理知的かつ怜悧な香川教授の容貌に似せたーーほんの偶然だろうがーーのは「インテリゲンチャン」とやらに憧れの気持ちがあったからかも知れない。
「あ!そういえば、フェラーリの中で感じたんだけど、オレの恋人だって『美樹は知らなくても良いことだよ』くらいは言ってくれたりするんだよね。なんか難しいことを言った後で。えと、ハイパーインフレとスタグ……なんとかについてとか携帯で話していた時に『ハイパーインフレって何?』とか聞いたら。
 でもアイツはなんだか一方的に話しているだけって感じで、何か会話しているというよか、NHKの英会話教室の番組でも、あんな一方的な感じじゃなかったような気がした。
 オレが『こういう治療薬もありますよね?』とか言っても五月蠅うるさい!黙れみたいな空気が流れていたよ。
 なんか、これを知っている自分てスゴイ!!みたいな感じで一方的に喋っていたって感じ。
 人の話ってさ、マサさんほどの博識じゃなくても会話のキャッチボールでもあるよね。
 それがアイツの場合、バッティングセンターの玉飛ばしの機械みたいに一方的に投げてくるというか、他人の話なんて必要ないって感じは受けたなぁ」
 井藤はそういう点が多いと田中先生も言っていたような気がした。
 大学時代に教授に激高してケンカを売りに行くとか正気の沙汰ではないーー俺だったらいくら教授にムカついても正面切ってのケンカなどは絶対にしない。ま、ウチの母校の教授なんてプライドと権威が服を着て歩いているといっても過言ではないので。
 カツンとくることどころか殺意を覚えるような人間はたくさん居たが。
 そういう場合は。
 

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