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「うーん、９０くらいかな？……マサさんに聞いていなくてもさ、話している間に『この人は地雷だ！』とか思ったもん」
　珍しく美樹が考え深げな表情を浮かべる。整形外科医の手を借りたとはいえ香川教授と似ている容貌なので、そちらの方が遥かに似合う。打算的な笑みとかよりも。
　ワンチャンとは「ワン・チャンス」の麻雀マージャン時のいわゆるスラングだが「万が一」とか「確率は低いけれども」といった時に使っていた。言葉というのは変わるものなのだな……としみじみ思ってしまった。
　俺の学生時代「雀のお宿」でも相手に「ワンチャン逆転の可能性が！！」とか言われたことが多々有るが連勝記録は保持したまま、ついでに借用書もばっちり取ってある。しかも法学部の雀友じゃんゆう――ちなみにソイツは司法試験で夢だった裁判官の道を閉ざされて「仕方なく」NYの弁護士資格を取るためにあちらのロースクールに通った後に向こうの弁護士事務所に入所している。
　司法試験の場合、なりたいモノになれるかは順位次第だ。例えばトップだと裁判官・判事・弁護士どれでも好きなものを選べる。
　しかし、例年裁判官と判事が先に埋まっていくので、下位合格者は弁護士にしかなれない。
　まあ、ソイツに「法的にも十分通用する」借用書の束は後生大事にしまってある。
　お金目的というよりも、「これを破く代わりに……」という交渉のために。
　法的に効力のある借用書なので――ちなみに今はNYのロースクールにいる友達のアドバイスで「時効」対策もばっちりだ。
「そんなに……。素人しろうと……いや、医師免許を持っていない点でプロではないでしょう？ほら、高校野球でどんなに有名になって優勝に物凄く貢献した選手だって素人ですよね。
　その後、ドラフト会議で球団から指名されて入団してお給料というか年俸を貰ってからは『プロ』です。その道でお金を稼ぐことが出来る人間をプロといいます」
　なんでこんな小学生レベルの解説をしているかといえば、美樹が「素人」という言葉にあからさまにムッとした表情を浮かべたからだった。
「え？そうなの？それは知らなかった、な。マサさんといると勉強になるから好き。
　他の人はね『いいよ、いいよ、美樹がそんな難しいこと知らなくても』とか言って教えようともしないんだよ。
　それはともかく。