「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難
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現場に行かない部署の同僚も存在するが、俺の場合はそうでもない。むしろ病院の監査のために潜入とかを行っている。麻薬絡みの事件の時には逮捕出来る麻薬取締官はウチの省の管轄で、俺の手足となって働いてくれる彼にも「専門的」かつ「実地」のアドバイスを仰いだこともあるし、大学時代からの旧友でもある警察庁の島田を介して所轄の警察署の刑事などからも教えを受けてきた。
美樹が「ナンパ」をするためには一人で歩いていたという感じを装わなくてはならないだろう。
咄嗟にすぐ近くにあったレクサスの陰に隠れて井藤の視界に入らないようにした。
困ったような、そして物凄く気合の入った笑みを浮かべた美樹が井藤に何やら話しかけている。
この時間に来ていて本当に良かったな……と思う。何しろ、高級車が停まっているこちら側は医師のエリアらしく誰も出て来ていない。皮膚科などの定時で上がれると評判の科の医師もまだ仕事中みたいで誰も出て来ていない。
価格帯の安めの車のエリアには女性がちらほら歩いて来ては車を動かして出て行く。あれは事務職か看護師だろうなと思いつつ、美樹の方へと視線を向けた。
というより、真っ赤なフェラーリという車はこの黒や白のベンツとかBMWなどに比べて圧倒的に目立つのも事実だった。
井藤も美樹の容姿に見惚れたような感じだった。
まあ、顔はともかく俺が自腹で出したスーツや美容院での効果とも相俟って、より香川教授に似ているのだから当たり前かも知れなかったが。
定時で帰れるという点では、その香川教授も同じ条件で働いていることは俺の恋人から聞いている。もちろん教授の場合は完璧過ぎるほど自分の職務を果たした上で帰るのだから本人の優秀さと手際の良さの賜物だが。
彼の場合は徒歩出勤なので駐車場は通らないのも分かっているので気は楽だった。
井藤が狂気の執着を見せている教授本人がここを通りかかれば美樹などはあっさりと忘れ去られかねないので。
井藤が何か一生懸命に話して、美樹がそれを聞いている図というのは俺の読み通りで安堵した。
まあ、欲を言えば同じ覗き見なら――いや「監視」だ――例えば香川教授と田中先生のように絵になるカップルを見ていたかったが、それを望むのは贅沢すぎるだろう。
美樹がフェラーリの話に食いついている感じだった。しかし、井藤の場合はその完璧なフォルムとかを見せるのかと思っていたが、そうではなくてタイアを見せるという「変人」っぷりだったが。
そして。
美樹が「ナンパ」をするためには一人で歩いていたという感じを装わなくてはならないだろう。
咄嗟にすぐ近くにあったレクサスの陰に隠れて井藤の視界に入らないようにした。
困ったような、そして物凄く気合の入った笑みを浮かべた美樹が井藤に何やら話しかけている。
この時間に来ていて本当に良かったな……と思う。何しろ、高級車が停まっているこちら側は医師のエリアらしく誰も出て来ていない。皮膚科などの定時で上がれると評判の科の医師もまだ仕事中みたいで誰も出て来ていない。
価格帯の安めの車のエリアには女性がちらほら歩いて来ては車を動かして出て行く。あれは事務職か看護師だろうなと思いつつ、美樹の方へと視線を向けた。
というより、真っ赤なフェラーリという車はこの黒や白のベンツとかBMWなどに比べて圧倒的に目立つのも事実だった。
井藤も美樹の容姿に見惚れたような感じだった。
まあ、顔はともかく俺が自腹で出したスーツや美容院での効果とも相俟って、より香川教授に似ているのだから当たり前かも知れなかったが。
定時で帰れるという点では、その香川教授も同じ条件で働いていることは俺の恋人から聞いている。もちろん教授の場合は完璧過ぎるほど自分の職務を果たした上で帰るのだから本人の優秀さと手際の良さの賜物だが。
彼の場合は徒歩出勤なので駐車場は通らないのも分かっているので気は楽だった。
井藤が狂気の執着を見せている教授本人がここを通りかかれば美樹などはあっさりと忘れ去られかねないので。
井藤が何か一生懸命に話して、美樹がそれを聞いている図というのは俺の読み通りで安堵した。
まあ、欲を言えば同じ覗き見なら――いや「監視」だ――例えば香川教授と田中先生のように絵になるカップルを見ていたかったが、それを望むのは贅沢すぎるだろう。
美樹がフェラーリの話に食いついている感じだった。しかし、井藤の場合はその完璧なフォルムとかを見せるのかと思っていたが、そうではなくてタイアを見せるという「変人」っぷりだったが。
そして。
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