「気分は下剋上」 森技官の優雅な受難

こうやまみか

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『なんだ、そんな簡単なコト?雅さんが珍しく深刻そうな感じの声を出してたから、もっと難しいコトなんじゃないかって内心思ってた。
 ふーん、二十代だったらテクはともかく持久力とかスゴそうだし、色々愉しめそう……。
 抜かずに何回出来るかとか。一回イっても、直ぐに回復してガンガン腰振ってくれるとかさ。
 それに顔なんて目を瞑っていたら見えないし、チェリー君をツバメ扱いするのも良いな。
 それにフェラーリを持っているほどの金は持っているんだから色々貢いでくれそう』
 電話越しにでも、語尾にハートマークが付いている、いやフェラーリに反応していたから$マークかもしれないが、まあ、俺の知ったことではない。
 ただ、美樹のような人間――彼は根っからの快楽主義者だし、お金さえ支払えば良い「駒」として割り切っていた俺とは異なって――田中先生は「彼」の将来まで気にしていた。そういうところが田中先生の「人間としての真っ当さ」なのかもしれない。
 ただ、俺の恋人から聞き出したのだが田中先生は香川教授と恋人になる前は色々遊んでいたらしい。
 そもそも香川教授がアメリカに発作的に行ってしまったのは――結果論ではあるが香川「教授」が今居るのはそのお蔭だ――ゲイ・バーで田中先生が「綺麗な人」を口説いていた現場を見たからだった――。
 「綺麗な人」というのは香川教授の主観的判断だったようだが、多分客観的に比較したらかなりの確率で教授の方がより多くの人の目を惹く容姿の持ち主だと俺は密かに思っていた。
 ただ、その頃の田中先生は、俺には及ばないまでも、かなりモテたに違いない。
 それこそ日替わりでお持ち帰りとか。そういう田中先生を「人格者」に変えたのは香川教授だろうが。
「確認なんですが、彼氏さんは今東京ですか?」
 旦那とかパトロンとか金蔓かねづると表現した方が正確だが、流石にそんな失礼なことは俺も言わない。
「え?今は、ハワイに行っている。あ、旅行も兼ねてるみたいだけど、なんか不動産投資のために視察をするんだって。仮想通貨で物凄く儲けたとか言っていたから、そのお金でハワイのホテルを買収するかもとか言っていた。
 だから当分は日本に居ないし、何時帰って来れるかダーリンにも分からないみたいだ。
 ちなみに、仮想通貨を勧められてやってみたんだけど、一挙に突っ込んだお金が10倍になってホントにラッキーだったよ!!」
 仮想通貨はバブルが弾けたと思っていたが、どうやら美樹はパトロンともども最高値に近い時点で売り抜けたらしい。
 まあ、それはどうでも良かったが。
 明らかに乗り気なので――しかもどの程度の金額を投資に回したのか知らないが、まとまった現金を持っていることは確かだ――京都に呼ぼうと思った。
 そして。
 

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