物渡り

ノベルバユーザー302214

9日目

今日は財布になりました。
目が覚めると誰かのワンルームの部屋にいました。
近くに鍵や時計などが並んでいて、遠くにはベッドがあります。
ベッドには誰かが布団に包まっていて眠っているようです。
壁掛け式の時計は6:30前程を示しており、日はまだ登っていません。
リリリリ...リリリリ...
アラームが鳴ると布団に包まっていた人が起き上がり、スマホのアラームを止めています。
「んん〜っ、はぁ...もう朝かよ...」
軽く伸びをしてそう呟くとのそのそと起きて洗面台で顔を洗い、朝食を取り、着替え終わるまでずっと眠そうな顔をしていました。
突然鏡の前に立ち、自分を見つめています。
この人はナルシストなのでしょうか?
その考えは間違っていたようで、男性は突然自分の顔を1回叩き、隣人の事など気にせず大声で叫びました。
「よし!今日も頑張るぞー!!!」
2度、壁を叩く音がしておじいさんの声が聞こえてきます。
「うるさい!」
「すみません!」
振り返り自分の元まで来た男性は最初に時計を手に取り左手首に付けています。その男性の顔はさっきとは打って変わって、凛々しい顔になっていました。
時計を付け終わると自分をポケットに押し込みました。
その後なにかをとる音がしたのは恐らく鍵でしょう。
男性はドアを開け、誰も居ないはずの部屋に向かって声をかけ、仕事に向かいました。
「行ってきます。あきちゃん」

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