もふもふを探しています。

小狐

ルイの話

「俺の名前はルイ。いや本名はルケーイ・ラルテもとこの国の第一王子だった」

俺は天才だ。何でもできたバイオリン。楽器ならなんでもプロ級。魔法に勉強までやればやるほどに何できた。

いやそうなる様に影で努力もした。

やがて15歳になり念願の音楽学園に入る前。

俺は高熱で倒れた。それから五日間、体が燃えるように熱い、誰か誰か助けて、まだ死にたくない

『私がお前を、助けてやろう』

その時誰かが俺の手を握った。その次の日には熱も引き始め……俺を看病しにやってきたメイドは悲鳴をあげた。

「きゃあああぁぁっ…ルイ王子」

その声に駆けつけた父上。次に俺を見た母上は悲鳴を上げ倒れた。

何が起きている?俺を見て倒れた?俺の体どうなった?

「ルイ……助かったのだな」

父上は何も言わずに俺を抱きしめてくれた。今日はそのまま寝ていなさい。

まだ体もだるかった俺は父上に言われたとおり眠り、次の日鏡を見た。

「虎だ…虎になってる」

熱が下がると俺は虎の獣人に変わっていた。

この国では獣人はめずらしい。父上に「周りを怖がらす」と言い。

楽しみにしていた学園は諦めた。

「ひいいぃっ」

「きゃあ」

城の中を歩くだけでこうだ……メイド、騎士熱が出る前は皆優しかった。しかし虎となったいまでは俺を皆怖がる。

俺はもう第一王子としても、やってはいけないのだろう。

「城を出よう」

そう一番に思えたのは母上の目だ。俺を化け物を見るような目で見て来る、お前はもう私の子ではないと、そう目は言っている。

出る前に書庫で調べた所、昔この国でただ一人獣人の王がいた。

先祖返りか?いや、高熱で倒れた俺を助けたは、その王…その人だったのかもそれない。

「あなたのお陰で助かりました」

ここにはもう未練はない。獣人として生きていく…と決めた。

母上は俺を常に怯えた目で見る。目も合わさない…俺の名前を呼ばない。

「あなたは国王になるのよ、しっかりしなさい」

それを第二王子のマクーレに言っている所も聞いた。

出ていく前に父上の部屋で2人で話をした。

「父上、俺は城を出て行くよ」

「どうしてだ、ルケーイ。何故?出て行こうとする」

「俺を見てみんなが驚く…もう俺はここにはふさわしくない…母上にあの目で見られるのも耐えれない」

部屋の鏡に写った自分を見てそう呟いた。

「お前はどんな姿になろうとも私の大事な息子だ…それは変わらぬ」

話が終わると父上は椅子から立ち上がり、俺を両手で抱きしめた。

「父上…」

「ルケーイ……わかった」

この城でただ一人。俺を今も昔も大事にしてくれた父上。

「これだけは決めさせてくれ」と父上と一緒にこれから住む場所を選んだ。

「この街中に屋敷を立てるか?」

「それでは町の人が驚く」

「そうか…」

「ここは?」ちょうど近くに森があり、何もない大きな洞窟を見つけた。

父上はすぐさま魔導師を呼び。そこにいまの俺の部屋を移動させた。後は足りないもの…魔法で出来た冷蔵庫、キッチンにトイレなど普通に快適に過ごせる空間を作ってくれた。

「ありがとう父上。俺はここにいるから……」

「たまにはコッソリと、城にも帰ってきなさい。来る時は、私の部屋で待っているといい」

「はい、父上」

その時はそんなやりとりをしたと思う。

我慢できなかったのか…毎日のように手紙が来るし、騎士がコッソリ俺の好きな食べ物に本を持って来る。

俺も嬉しかったがしばらくして俺は旅に出ようと思った。仲間が……獣人の仲間が欲しかった、旅立つ前に城に行きその事を父上に報告しに行った

「父上俺は、仲間を探す、旅に出る」

「ルイそれは本当か本当なのか、だったら騎士を2、3人いや、10人連れていけ」

「いいや父上。俺は一人で行くよ、何も危ないことをするわけでないから」

「だがしかし」と言う父上を説得して了解してもらった。

獣人にはなかなか会えないと思っていたのだが…一番最初の街ですんなりと会えた。

すぐに意気投合した俺た達…だか奴には欠点があった…

オオカミのリトは無類の女好きだった。

奴は言う「俺を受け入れてくれる女なら誰でもいい、人間でも獣人でもどんな種族でも女なら誰でもいい」と言っていた。

「はは、ルイ女はいいぞ、特に胸の大きな豊満な女は癒されるぞ」

「やめろ、リト。俺に女を押し付けるな」

長身のリト。今日もまた女連れで酔っ払ってやがる。初めてあった獣人がこれなのか無理だ。俺は女は嫌い、恐怖に怯える母上を思い出すから嫌い

しばらく滞在して他の獣人を探しに、他の場所にそろそろ行こうと思っていたある日。

「よっ、ルイ」

「どうした、リト?」

珍しく酔っ払っていないリトが俺が滞在する宿まで来た。リトは「怒らずに聞いてくれ」そう言って話しを始めた。

「本当は話を聞き。お前を見に来たんだ…王子が獣人になるなんてな面白いだろ」

面白いだと…なんて失礼な奴だ…

俺は……

「好きでなったのではない」

「そう怒るな。俺達はもう獣人仲間だろ、なあ、王子助けてくれよ」

「助けてくれだと?」

話を聞くとリトはここから一山も二山をも越えた、かなり人里から離れた小さな村から来たと言った。

ほんの数週間前までは、静かな村で獣人の仲間たちとのんびり暮らしていたらしい…

そこにいきなり人間どもが現れ平和だった村は焼かれ、仲間はなんとか逃げ延びた。

「仲間達はいま村の近くの洞窟で身を潜めていて、食べ物が底をつきそうなんだ」

いつも女と酒に酔っていたリトが頭を下げた。

「頼む」

住むところを見つけにここまで来た所、俺の噂話を耳にした、もしかすると頼めるかもと探しに行こうとしていた所に、ちょうど俺が来たとリトは言った。

「頼む、みんなを助けてくれ」

お前なら分かると信じてる。

「リトの話はわかった」

「よろしく頼む」

「少し時間をくれ、戻って、父上と相談をしてくる」

俺は自分の洞窟に戻り父上に手紙を送った。

すぐに調べると返ってきた手紙から数日後、その話は本当で洞窟に身を潜め、怯えていた獣人達を見つけたと報告を受けた。

見つけた騎士達に威嚇をする。かなり人間に怯えているとの事、城に行き父上に相談をした俺ではこの問題は大き過ぎた。

「父上いい案はない?」

「うむ、だったらここから南、海を渡った所にある島が良い。私の避暑地に連れて行けば良い」

「あの島か……島はずっと温かいし、果物も豊富だ話してみるよ」

すぐに隣町にもどりリトに話すと大いに喜んだ。喜びすぎて俺に抱きつきリトは大泣きをした。リトの大事な母親もその洞窟にいたと聞いた。

「本当にいいのか?俺達がそこに住みついても大丈夫か?後でダメだも言わないか?」

「ああ、安心しろ。父上に俺の名義に変えてもらったから、あの島は俺の持ち物だ。だだし悪さはするなよ」

「わかった。ありがとうルイ、お前に会えてよかった」

また泣き出したリト。彼はそのまま泣きながら、すぐにみんなを呼んで来ると喜んで帰って行った。

それから三年が経った。平和に暮らしていると島の情報の他に新しい獣人が来たよ、店を作ったとか毎週のように来るリトからの手紙で教えてくれる。

俺もここが寒くなったら行こう、そろそろ、寒くなる時期が来るからな。

「そういや」

最近来た手紙に女が島にやって来た。歳は15、16くらいだ。その女の作る菓子が上手い…しかし人間だどうしたらいい?

内容はそんな感じに書かれていた。

一度見に行かなくてはと思っていたから、ちょうどいいか、しかし偶然か俺も小さな女の子を拾った。

「くふふふ」

また寝ながら変な笑い声を出す小さな女の子。

人食い虎が出ると言う森。噂を父上に頼んで言いふらしてもらっているのに知らないのか?

本当にいたらどうするつもりだったのだろう?

しかし「甘い。いい匂いだ、やばい」俺の好きな匂いだ、舐め回したい、この人間の女の子を食っちまいたい衝動にかられる。

「初めてだ」

こんな変な気持ちに悩まされる。リトに相談するかな、聞くだけ無駄かもしれないけど

「しかし困った」

お前は貴族で俺の弟の婚約者になるはずだったろ?
なんでこんな所に来たんだ?

まさか俺の弟の趣味か?最近知ったのだが小さい子が好きだなんてな…

「それに気が付き、逃げ出したのか?」

有りうるな…

今日のお昼頃だ。俺も父上に用事で城にいた、お前とこの子が手を繋いだ時ちょうど茂みから見たんだ。

一瞬ニヤっとした弟の顔にゾッとした。絶対にこの子の事を気に入っただろう。

小さくて可愛い子だものな。俺の作った葉っぱ、枯葉や落ち葉で出来たベッドでぐっすりと眠る小さな女の子。

「へへへ……しやわせ」

全く変な寝言だ。

「でも、可愛い」

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