女勇者様が弱すぎるんだが
1章 4〜ロレンと最弱女勇者
「すみません、マグマジェイル持ってますか?」
暮石の隣に立っている、目つきが悪く、服装もだらしない毒舌の勇者に尋ねる女勇者。
「はっ!? マグマジェイルなんて持ってるわけねーだろ!」
「そ、そうですか。」
「考えてもみろ! マグマジェイルは氷鏡の扉を開けるのに必要なんだ! つまり勇者は全員マグマジェイルを使っちまってる! 残ってるわけねーだろ!」
「そ、そっかぁ……たしかにそうだよね……」
正論を突かれたようで、口が荒い毒舌の勇者に恐縮する。
「だろ!? いまだにマグマジェイルを持ってるヤツがいるとしたら……そいつは魔王城に入ろうとしなかった『臆病者』に決まってるぜ。」
「じゃあ……マグマジェイルはひとつも残ってないってことですか?」
「ああ! ひとつも残ってねぇだろ! ただし! 『臆病者』がいれば別だけどな。」
「うーん……『臆病者』の勇者かぁ……さすがにそんな人いないよね?」
と、苦笑いを見せると、ロレンは、はっと何かを思い出したようだ。
「いや……昔訪ねてきた人の中に『臆病な勇者』って二つ名の人がいたかもしれない。」
「ええ!? 『臆病な勇者』って……すごい矛盾してない!?」
「そういえば……何かあるたびに木の陰に隠れてたよ。」
「さ、さすが『臆病な勇者』だね……変なところにいるかもしれないから気をつけて探してみようっ!」
「ああ。」
2人の会話が終わると、女勇者は毒舌の勇者に目を向けて、恐縮した様子で尋ねる。
「私たち、仲間を探しているんですが……一緒に戦ってもらえませんか?」
「バカか! なんて怖いことを言いやがるんだ! オレは戦えねぇんだよ! 足がガタガタで腰が抜けるんだ! 二度と誘うんじゃねーぞ!」
そう言って、そっぽを向いてしまった。
その場を離れ、歩いているとロレンは冗談目そうに口を開く。
「あの人の方が臆病なんじゃないのか?」
クスクスと笑みを浮かべて苦笑した女勇者の表情は悩んだような顔に変わった。
「……それにしても『オレは戦えねぇ』ってどういうことだろう? やっぱり……ここにいる人たちにはなにか『戦えない事情』があるのかな?」
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