女勇者様が弱すぎるんだが

ふつ

1章 2〜ロレンと最弱女勇者


「あのっ! もしよかったら……仲間になってもらえませんか?」

 焚き火を囲んでいたうちの1人、上半身が裸でその逞しさがが伝わるほど筋肉質の『マッチョ』に女勇者は問う。

「た、戦えない……! 私は、戦えないんだーーーっ!!」

 どこか悲しげで、悔しそうな顔をして叫ぶマッチョ。

「そ、そうなんですか……」

 残念そうに落ち込んでる女勇者。

 「この人……どこかで見たことある気がする……」

 眉を寄せ、じっくりと考えてるロレンは女勇者に聞こえない程に、ぼそっと言った

「次を渡ろう」

 と、女勇者。

 焚き火を囲んでるうちのまた1人、茶色いニット帽をかぶりその隙間から、ちらほらと飛び出ている白い毛に髭を生やした老人だ。近づくと、次は声をかける前に老人から声をかけてきた。

「いらっしゃい。売り物を見ていきますか?危険な場所にあって、手に入れるのがとっても難しい珍しい品物ばかりですよ。」

 落ち着いたトーンでニコニコしながら話す老人はどうやら『道具屋らしき老人』だようだ。

「へえー……行商の人かな? ちょっと見ていこうかな」

 少し好奇心が湧いた女勇者は、道具屋らしき老人が差し出した品物を見ると、目を丸くして声をあげる。

「……えっ!?」

それにつられるようにロレンも目を丸くする。

「この人が売ってる道具……ほんとに普通は手に入らない世界中の貴重な品物ばっかり……あなた……いったい何者なんですか?」

 無我夢中で問い詰める女勇者。

「私ですか? 世界を旅する行商人ですよ。それ以外にも何かやらなきゃいけないことがあったような気がするんですが……頭がぼんやりしてよく覚えていないんです。」

 うーん、と唸るように考える道具屋らしき老人はそう言うと、マッチョと同じ時のように悲しげな顔をする。

「この人も……どこかで見たことある気がする……」

 その後2人は歩き回り、手当たり次第に声をかけていったがやはり仲間は見つけられなかったようで、仕方なく2人は魔王城に向かった……

「……ゴクリ。この扉の中が魔王城だよっ!準備はいい?」

 階段を登りきった2人は大きな扉を前にして心の準備を整える。

「ああ。」

 真剣な表情をしているロレンだが、どことなく強張っている。

「それじゃあ行くよ!!」

 少し企んでいるような笑みを浮かべる女勇者は2、3本後ろに下がり、助走をつけ、扉へ突っ込む。

「てやぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

 ドカッ!

「あイタっ!?」

「……」

 鈍い音を立てて、弾き返され座り込む女勇者にロレンは落胆した様子で女勇者を見下ろす。

「ち、ちがうの! 思ったより扉が重くて!!」

 顔を真っ赤にして、必死に言い訳をする女勇者は小さな声で呟く。

「うぅ……カッコ悪いところ見せちゃった。」

「それじゃあ……普通に引っぱって開けるね。うーーーーーーーーんっ!」

 よいしょと立ち上がる女勇者は再び扉の前に行き、取っ手を掴むと、力一杯に引き始める。

「うーーーーーんっ! ……あ、あれ?扉がビクともしない!」

 疲れた様子の女勇者は目を見開いて言った。

「もしかして、この扉……『凍ってる』のか?」

 ロレンは凍っている扉の前に近づき、目を凝らしながら曖昧に言う。

「あ! だから押しても引いても開かなかったんだ。」

 なるほどっ、と納得をし、晴れ晴れとした様子の女勇者。

「じゃあ、ロレンくんの必殺技で壊しちゃおうよ」

 目を輝かせながら提案する女勇者に、ロレンは乗り気に答える。

「ああ。やってみよう!」





















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