女勇者様が弱すぎるんだが

ふつ

1章 1〜ロレンと最弱女勇者



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「魔王城...…教会のすぐそばなんだね。あっという間に着いちゃった。中に入って強い魔物がいたらどうしよう? す、すごく頼っちゃうからね! 私、ものすごく弱いし! はーあ、情けないな……私」

 魔王城に続く古びた階段を前にしてロレンと並んでいる女の子は、自称勇者のスライムですら倒せない『枯れ枝より弱い勇者』。160手前くらいの身長。細い体に大き過ぎず小さ過ぎない胸。1番長くて胸位の金糸雀色の髪の毛を遊ばせて、肩ぐらいの位置で揺らしてる。女の子らしい赤いリボンのヘアピンをつけ、長い前髪は片側に寄せてるため大人びいて見え、濃い緑色をしたノースリーブのワイシャツに青いネクタイのようなものをしている。         
 綺麗な肌に整った顔立ちで、一様に身を焦がすほど赤く染まっている紅赤色の瞳が彼女の全てを物語ってるようだ。


「だいじょうぶ。私は従者です。勇者様を全力でお守りします」

 顔を暗くした女勇者に、ロレンは安心させるように言った。

「や、やめてよ。そんなしゃべり方! 私たちは仲間なんだからね!」

 ムッとした様子の顔。

「...…わかった。じゃあ普通に話すよ」

「うん、よろしくねっ。さあっ、元気よく行くよー!」

 すっかり元気になった女勇者は本当にあの魔王を倒すのかと言うほど緊張もしてない様子でするすると進むと、古びた階段を1歩踏んだ。

「ちょっと待って。気をつけて進んだ方がいい。なにしろここは普段は誰も近寄らない場所。世界中の人々が恐れる魔王の居城、今までここを目指した勇者様たちは誰ひとり帰ってこなかったんだ」

 やはり心配だったようで、それを止めようとするロレンの言葉で、階段を上がろうとしていた足を止めて、ロレンの元へ戻っていった、

「そ、そうなのかぁ...…」

 急に女勇者はキョロキョロと周りを見回す。

「まわりは魔物だらけかと思ったけどそうでもないんだね。普通の人が結構いるし、思ってたより平和な感じ?」

 魔王城を向かって左側にある休憩所のような広場に焚き火を囲んでいる数人の人がいる。

「ん? あそこにいる人...…どこかで見たことある気が..….?」

 ロレンはぼそっと言う。

「どうしたの?」

 没頭しているロレンに女勇者は聞く。
 
「あ、ごめん。ちょっとね..….」

「ふぅーん。そうだ! 強そうな人がいたら仲間になってもらおうよ!」

 ロレンの言葉に対してあまり気にしてない様子の女勇者は話題を変える。

「ああ。さすがに2人じゃ不安だ。実質戦力は俺だけだしな」

 意地悪っぽく言う。

「し、失礼だよ! 私だってできることいっぱいあるんだからねっ!」

 頬を膨らませて言う女勇者に、少し笑みを浮かべたロレンは話題を変える。

「……そういえば勇者の『二つ名』は何だったんだ?」

「ふたつな?」

 首を傾げる女勇者。

「たとえば『炎の勇者』とか『怪力の勇者』とか、それ聞けばどんな勇者なのかがわかる『あだ名』みたいなものだよ。キミはなんて呼ばれてたんだ?」

 ……

 言いたくなさそうに真逆の方に向く女勇者は少し焦っている。

「……か」

「...…か?」

『枯れ枝より弱い勇者』

「枯れ枝より弱い...…」

 反復するロレンは痛ましそうに女勇者を見る。

「で、でも今はがんばって野宿の時とかは枝を素手で折れるようになったよ! もう枯れ枝よりは強いんだよっ!」

 馬鹿にされたと感じたようで、女勇者は悔しそうにロレンの元へ向かい頰を膨らませる。

......

 枯れ枝より強いことを自慢する女勇者に呆れた様子のロレン。

「仲間を探そう。生きて帰るために絶対に必要だ...…」

 ロレンは不安を覚えたような顔で言う。

「...…はい」

 女勇者は気が沈んだ声で言う。

……

「...…じゃあ行こうっ!」

 すぐに気を取り戻した女勇者は、その場を逃げるかのように、さっさと進んでいった。





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