ロワとカラス城の魔女

thruu

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「それしきの事、俺様ともなればすぐに分かるのだよ。ロワ君」

 そう言うと黒猫はまん丸の目を鋭い目つきにした。

「俺はお前を立派な魔法使いにしたいんだ。その俺様の気持ちは分かるな?」

 まるで洗脳でもするかのように、黒猫は声を低くして囁くように言う。

「はい!ありがとうございます。お願いします!」

 私は感動すら覚えて、そう返事をした。

「俺様の言う通りにするんだぞ。よし!!立派な魔法使いにしてやるからな」

 薄暗い中で黒猫を見つけるのは困難だったけれど、時々振り返ると見える光る目を目印に追いかけた。

 途中、何度か壁や机、棚にぶつかった。それは仕方のない事だった。進めば進むほど灯りはなくなっていく。

「すみません、ディアさん。電気つけませんか?これじゃあ何も見えなくて」

 もうどこに黒猫がいるのかも分からなくなった。

 暗闇の中で黒猫は不思議そうな声を出した。

「は?何言ってんだ?カラス城だぞ。電気なんか通ってるわけないだろ」

 黒猫の大声がどこかから聞こえる。こっそりしなくていいのか。なんて、私には言えない。

「え!そうなんですか?じゃあどうやってこの暗闇を」

 歩き回るのだろう。と考えていると、呆れたような声が聞こえた。

「見えないんだったら、灯りくらい自分でだせよ。さすがにそれくらいは出来るだろう?魔法学校になんか行かなくたって誰でも……」

 黒猫の言葉に、私は返す言葉もなかった。

「おい、まさか」

 私の沈黙に黒猫は情けない声を出した。

「はい。できません」

 仕方なく認める。姿は見えないけれど、落胆している姿は想像できる。私にとって、誰かをがっかりさせる事なんていつもの事なのだ。けれど、黒猫は違った。

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