ロワとカラス城の魔女

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「すいませーーーん!」

 結局、出せる限りの大声で叫ぶ。が、しばらく待ってみても反応はない。仕方がない。

「すいませーーん!!」

 もう一度呼んでみる。今度は音が響かない扉も叩いてみた。が、やはり反応がない。今度は全力で息を吸う。そして再び大声をだす。

「すーーいーーまーーせーーん!!!!」

 お次は連続で扉を叩きながら大声を出す。何度も叫ぶ。声が枯れそう。しばらくして、借金の取り立て屋みたいだと気が付く頃だった。

 黒くて大きな扉の横から、微かな音が聞こえた。見れば、普通サイズの扉がある。全てが黒くて、全く気が付かなかった。その扉がほんの少し開いていたのだ。みる限り、ほんの5cmほどだったけれど。

「あ!研修で来ました、ロワといいます。今日からお世話になります!!」

 そんな隙間からこちらが見えているか分からなかったけれど、第一印象が大事だ。誠意のあるっぽい事を言って頭を下げた。

「看板みて、帰りなさい」

 女性の小さな声と共に、白いほっそりした手が隙間から出てきて指差す。

ーー魔女だ。

 心の中で叫びながら、魔女に言われた言葉を頭の中で整理する。

「看板?」

 指を差された方向に目をやると、確かに木で出来た看板が立っていた。けれど雨風のせいだろうか、ここからでは書いてある文字は全く読めなかった。

 目を凝らして見ようとした時、扉が閉まる音がした。扉はきっちりと閉められ、今や黒さのせいでそこに扉があるだなんて分からなくなってしまった。

 仕方がなく、言われるがままに看板を見に行く。最悪な事に雨まで降ってきた。

「あぁ、マントに防水スプレーかけてくるんだったー……」

 マントのフードを被りながらぶつぶつと独り言を吐きながら、看板の文字を解読する。薄くなりすぎて本当に読めない。無意識に声に出していた。

「なになに。研修生、お……断……お断りぃぃ?」

 研修生お断り。まるで『セールスお断り』みたいな書き方。研修生もセールスも、同じだということか。

 よく見ると、その文字の下にはまだ続きがあった。今読んだ言葉以上に驚く言葉はないだろうけれど、ついでに読んでみる。

「黒魔術専門。呪いのご依頼は……裏口へおまわり下さい」

 なにそれ!!!!!!!?怖い!!

 こんな事って、あるのだろうか。学校から、ここへ行けと言われて来ているのに。仕方なく、来たのに。こんな事って。

 私だって、尊敬する魔法使いの所に行って、夢の研修生活を送りたかったのに。黒猫に、薬草摘みに、ほうき作りに、人助けとか。師匠と呼べる素敵な魔法使い様……。

 なのに、私が来た所は、研修生を追い返す黒魔術専門の魔女の城。誰も寄り付かないカラス城。

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