SS 創作小説

色鳥

『フラストレーション』

忍耐が出来る人は、欲するものを得る事が出来る。

柔らかい唇の渇きを不意に舌先で潤すその仕草。
邪魔と言いながら襟髪を撫で上げてそして垣間見える白い項。
無防備に投げ出された短めのスカートから覗く弾力のありそうな太股。

「……………」

正直もう限界だ。

彼女のその無意識過ぎる甘い誘惑には理性も感情も身体も。
ぐらぐらと激しく揺らいでそれでも何とか自我を保とうと神頼みに近い黙祷を捧げてみる彼の眉間にはいつもより深く皺が刻まれていた。

「……何してんのあんた」

何故かいきなり坐禅をし始めた彼のあまりに不自然且つ奇怪な行動に怪訝そうに首を傾げて少女が問い掛けたのだが、彼は全く反応を示さない。
確かに声は聞こえている筈なのに。

「ねぇ?」
「………」
「おーいー?」
「…………」
「……ちょっと」

気が長いとは間違っても言えない彼女には呼び掛ける事たったの二回の無反応でも不機嫌になる材料としては十分だったらしく、自らの幼い頬をぷくりと膨らませてゆっくり彼に詰め寄り始める。

「ねぇってばっ!」
「…………なん」

近付いた気配と大声に重い溜息と共に続けようとした何だと言う台詞は予定通りに紡がれる事はなくそれどころか物凄い速さで彼の喉奥へと逆戻っていった。
目を見開いて固まってしまった彼に理由の解っていない少女はますます不機嫌に顔を歪ませる。

「何なのよ」
「…………お前は一体何をしているんだ」
「…?何って…?」

きょとりと首を捻る少女の姿に今直ぐ睡魔とかそういう都合の良いものよ降りてこいと切に願った彼の想いは叶わず寧ろ現実を叩き付けられる結果に終わった。
下半身が酷く熱い。

(俺が何をしたと言うんだ…!)

ああもうこれは悪夢に違いない、そして目の前に居るのは小悪魔などと言う可愛らしいものでは決してなくてきっと絶対間違いなく悪魔なのだ。
四つん這い状態で更には今にもキスしてしまえそうな距離で、そして唇を半開きにさせて彼を見上げる少女の姿は欲目でも何でもいいがとにかく可愛過ぎた。
これは、もう。

「………………無理だ」
「?何が?」
「俺はよく耐えた方だと思う」
「何によ」
「自業自得だと納得してもらいたい」
「だから解るように説明しなさいってば!!何が無理なの?」
「理性の制御」
「はっ?」

意外に冷静なのではないかと思う程はっきり放たれた言葉は瞬時にその意味を少女に悟らせたのだが、身体に何かしらの行動を起こさせるまでには至らず華奢な身体は呆気なく世界をひっくり返されてしまった。

「…ぇっ、ちょ……っええええ?!!ちょっちょ、まっ」
「もう無理だと言った」
「いやあのっ、…やッ!あ…っ」

真顔で身体を弄る彼の掌の熱さに思わずビクリと背を反らせた少女がその後どうなったのかは当然当事者二人のみが知る。

〈完〉

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