カイカイカイ…

霜月 秋旻

回顧

僕は、みんなと同じでありたかった。ただそれだけだった。
僕は、みんなに合わせようと、必死だった。
みんなが当たり前にしていることを、僕も同じようにしたかっただけだった。
そうしないと、僕だけ置いていかれそうな気がしたから。


小学生の頃、クラスでは当時夕方四時くらいに放送されていた、ストレス戦隊ストレンジャーというアニメの話題でもちきりだった。みんなが楽しそうに話している。そのアニメの主人公の真似をして、机の上に立ってポーズをしている人もいれば、アニメの主人公に倒されている悪役の真似をしている人もいた。ストレンジャーのグッズを持ち歩いている人もいたし、主題歌を熱唱している人もいた。しかし僕は、そのアニメの話題にあまり関心がなかった。
家にテレビがなかったわけではない。たまたまそのアニメを観ていなかっただけだ。クラスでみんなが騒いでいるので、どんなアニメだろうとある日、夕方四時にストレンジャーを観てみた。しかし一話目から観ていないので、途中からだとどんな話なのかいまいちわからない。ところどころに出てくるコメディチックなシーンは笑ったが、別に毎週観たいとは思わなかった。魅力を感じなかった。しかし僕はそれから毎週、そのアニメを観た。観続けた。そして放送された翌朝、その内容がクラスの話題になる。その話題についていけないと、みんなの輪の中に入れない。仲間はずれにされる。観るしかなかった。そして翌日にクラスで観た内容について語る。面白かったフリをして作り笑いをして、クラスのみんなに合わせた。そんな日々が続いた。


「快ってさ、ひょっとしてみんなに合わせて、無理してあのアニメ観てる?」
ある日クラスメイトのひとりに、思いもよらぬ質問をされた。僕は必死に否定した。しかし、そのクラスメイトには見抜かれていた。僕が上辺だけで、アニメの話題に参加していることを。僕の下手な作り笑いに気付いていたのだろう。そのクラスメイトの名は、真之介といった。
「無理しなくていいよ。観たくなければ観なくていいじゃん」
真之介は僕に冷たい視線を投げかけた。軽蔑されている、そんな気がした。その日以来、僕はストレンジャーの話題に参加しなくなった。そして僕はストレンジャーを観なくなった。実際僕は真之介の言うとおり、そのアニメに関心がなかった。やがて僕は、クラスから取り残された。毎週ストレンジャーの話題で盛り上がるクラスの連中をよそに僕はひとり、机にうずくまって寝ているフリをするようになった。僕はみんなと何かが違う。なにかがズレている。そう考えるようになったのは、この頃からだった。

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