治癒+魔族=毒

神部大

第10話 ロロキストの修行③


ジンクスの街ギルド支部。
その扉をぶち開けながら俺はそこにいるはずの奴の名を叫んだ。


「しぃしょぉぉぉ!!」

「おぅ、どうしたそんな奇声を発してよ。生まれつきか?」


奇声が生まれつきの奴なんているかっ。
どう考えても文句をつけに来たんだ。


「し、師匠……一体これはどういう事ですか。俺は……あれでよかったのかどうか……」
「ほぅ、その分だと依頼を達成したらしいな。お疲れさん」


それだけぇ!?
こっちは冷冷しながら必死の思いで……



「あいつはさ……昔からの馴染みなんだよ。だから依頼料なんて取るわけにはいかねぇだろ?それにミルーナの奴もいねぇし」
「だ、だからって!毒……そのあんなので……」


「あぁ?大丈夫だろ、治るんだから。フライドビーの猛毒よりマシさ、大体お前のもやし稽古に付き合ってるせいでルイスの野郎もミルーナも依頼に出掛けちまってんだ、俺だけハブにされてよ……ったく、報酬は山分けしてもらわねぇとやってらんねーぜ……ルイスの野郎……ぶつぶつ」



いや、ぶつぶつは自分の口で言うもんじゃないんですけどね。
そうか、ミルーナさんはいないのか……まぁ今日はそんなに疲れてないからいいけど。


「おらっ、もやし!ぶつぶつ言ってねーで修行の続きだ、とっととその足で隣街まで行ってこい!罰としてこの酒樽をグレイブの親父のとこまで届けろ」


ぶつぶつ言ったのはあんただろーっ!って、なんだそのあからさまにギルドで受けたであろう仕事は。

俺はゴーストシェインか、くそ。



俺はぶつぶつと文句を垂れ流しながら酒樽を両手に持ち、大剣を二本背中に担ぎながらプラットの街へと向かったのだった。








三週間たった。
いい加減に俺もシェインの訳の分からない修行に何とも思わなくなっている。
と言うかゴーストギルド員みたいな扱いを受け、俺はシェインの代わりに様々な依頼をこなしていた。


隣街までの酒樽の配送はもとより、ペット探しから毒消し。
簡単な仕事ばかりではあったがこれはこれで遣り甲斐を感じている。


ただ問題は何故かいつも走らされると言うこと。
大剣を二本手に持ち、或いは背負い、そして隣街へ……時には片道だけで日が暮れるような街、村まで。


何故ジンクスの街でこれをやらせてくれないのか……それならどんなに楽か……。


そういえば皆どうしてるだろうか?魔術の修行に勤しみながら試験に備えているのだろうか?
と言うか試験て何の試験だったっけ?


あ、そういえばレイスの事も忘れていたな。あいつ怒ってるかなぁ……




「戻りましたよぉ……!?」



俺はジンクスの街のギルドに今日も一日の使いっぱしりを終えて戻ってきた。
ギルドにはシェインと久しぶりの顔ぶれが揃い、何やら楽しそうに話し込んでいた。



「でよ、あいつ……毒魔術をさ、キュアポイズンとか言って……ぷくく」


「ちょっとシェイン……私がいないからってそんな粗治療させてたの!?全く何考えてるのよ」


「しっかし、キュアポイズンか、すげえな。そりゃよく考えたもんだ」




何だ、何の話しだ?
随分楽しそうじゃないか。


「ルイスさんにミルーナさん、戻ってたんですか?」



俺がそう声をかけると三人はやっと俺の存在に気づいたのか、こちらを向いて笑った。



「おう、ロロシ。戻ったか!」


……最早何も言うまい。
この三週間で一体どれだけのアダ名がついたかは分からない。
ただ噛んでる訳じゃないのは分かった。完全なる故意だ。



「ロロ君、大変だったわね……ごめんね、国からの要請でなかなか戻れなかったのよ」
「そうなんだよ、わりぃなロロ。ったく俺達ソードバインダーをあんなじじいの護衛如きに使いやがって……」



護衛か、それでずっといなかったんだ。
でも国の護衛にギルド員が抜擢されるのは凄い事なんじゃないのか?
まぁ、この人達だもんな。



「おう、そうだロロシスト。今日は特別に自由時間をくれてやるよ、友達も少しはいんだろ?仲良くしてこい。俺らはちょっと野暮用で出てくるからよっ」



俺は自分大好きな人間か!!程遠いからその名はやめて。
シェインはそういって一人笑いながらルイスとミルーナさんを一瞥した。


「……自由時間?」



自由時間ってなんだ、どっか行くのか?
俺に今さらどうしろと……いきなりそんな事言われてもな。



「ま、そう言うわけだから、な!」
「んじゃまたな、ロロキスト」


ん、スキン……いやルイス、今ちゃんと呼べたな俺の名前。


二人は軽くそう言うとギルドを出ていった。



「ロロ君、ありがとうね。シェインのあんな楽しそうな顔久しぶり……ロロ君のお陰ね!きっといい執行員になれるわぁ」


そうボソッと耳元で囁くミルーナさん。
あ、久しぶりの甘美な薫り……


そう言いながらミルーナさんも二人を追って行った。



「って……おいおい。こんな中途半端な訓練の途中でどっか行くのかよ!」


あと一週間しかないんだぞ?
剣の稽古はどうした? いつやってくれんだよっ!



……まぁ、最初の事を考えればもう生きて帰れない気もしたしな。
たまには休暇もいいだろう。



俺はとりあえず久しぶりのジンクス散策を堪能することにした。

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