治癒+魔族=毒

神部大

第2話 武器屋さん


「これがジンクスの街か……」


思えばここジンクスの街にある訓練校に父親のコネを使い、と言うか使われ半ば無理矢理に入学してからは缶詰め状態だった。

だからこうして街をゆっくり歩くのは一年ぶりでむしろ初めてだ。


さて、修行と言っても何をしたらいいか。

思い返せば一年間、世界の歴史や仕組み、魔術の基本基礎から応用までを必死に学んだ。
そして分かったことは俺が忌み嫌われる理由、位の物だったな。


父と母がいない俺が、預けられた親戚から毎日白い目で見られ続け、15になると同時にとっととこの訓練校に投げ入れられた。

訓練校の入学時、魔力の確認をされた。
皆沈黙と同時に驚愕の表情を浮かべていたのは今でも忘れない。


本来なら、いや下手をすればその場で牢獄行きにでもなり得る状態だったんだと気付いたのは訓練校での授業を聞いてから。


魔力には確認されている物で八種類。
人族はそれを主要五属と付与三属に分類した。


その中でも専らに魔物が使うとされる付与三属魔術の一つが毒属魔術という。
そしてその毒族魔術、それこそが俺の元来持つ魔力の種類だったのである。


愕然としたと同時に俺はスッキリもしていた。
何故俺がいつもこんな腫れ物に触るようなそんな扱いを受けるのかが分かったからだ。


魔物と同じ魔力。
そして母が魔物だった事、だがその夫は対魔術執行員設立者であり魔大戦を収めた英雄、その上魔物でも人族と交流出来る者が中にはいると証明する歴史を作った人。

そういった魔物を魔族と呼んで。


だが、未だ魔族と人族の間に禍根は消えない。
種族間差別、これはいつの時代になっても完全には消えないのだろう。

父の功績も言ってしまえばその程度でしかない。

だからこそ俺もこう言った差別を受けているわけだ。
だが皮肉にもそれでも俺がここにいれるのは父の栄光がまだ残っているからに他ならない。

恨むことも感謝することも出来ないでいる。




「さてな……強くなるったって俺みたいな魔術じゃ何の役にもたたないよな……やっぱりここは武器か」


今度の試験、例年通りなら魔物討伐のはずだ。
皆魔術を存分に使いながら戦うだろうな。


俺の魔術は当てにならない。
だとしたら武器の扱いに頼るしかない。


そう決めた俺の行動は早かった。訓練校で得た金で自分の武器を買って魔物を倒して修業だ、残りの一ヶ月はこれで行こう。


早速俺は街の何処かにあるはずの武器屋を探して街を右往左往した。





どれくらい歩いただろうか、入口に鉄板で剣の形を象った物が置かれている家屋を見つけた。
『武器屋さん』と分かりやすく書いてある。
こんなに分かりやすい店を見付けるのに小一時間かかった自分が悔しくて堪らない気分になりながら俺は中に入った。



中には所狭しと剣やら斧やら槍やらと棚上に陳列され、或いは壁にフックでかけられていた。


この中からどれが一番自分に合うか、訓練校で習うのは基本的に魔術重視で武闘訓練は剣での基本所作ぐらいの物だったが。



「少年……武器を探してるのか?」
「えっ、あ、はぁ……まぁ」


突然店先から静かに声をかけてくる店主らしき男。
前髪に隠されたその素顔から表情を読み取るのは難しい。


「得物は何を使う?」
「あ、いや……剣位しか使ったこと無いんです」


と言っても基礎の基礎だ、専らに剣を使っての実戦を生業とするギルド員には到底及ばない。


「剣と一概に言っても種類は多岐にわたる……威力重視なら両手持ちが基本のバスターソードだが、君の身長ならやはりダガーかショートソードだろうな……持ってみろ」


「おっわっ!」


突然こちらに放り投げられるショートソード。
危うく刃先を握る所だった、何考えてんだこの店主。あぶねぇ、クレイジーだ。


そう思いながらもショートソードの柄を握り感触を確かめる。


うん、これは訓練の時に使っていたものとほぼ同じだ。これなら行けそうだな。


「あの……これ、いくらですか?」


訓練校で支給された給付金は5000メタル、武器の相場は分からないが足りるだろうか。


「それなら10000メタルだ。因みに少年、その制服は訓練生だな?武器なんて必要か?」


「え、えぇ。なんと言うか……あんまり魔術得意じゃなくて」



対魔術執行員の殆どはその訓練された魔術を使うとされる。
だからこうして俺の様に武器を使う人間は珍しいのかもしれない。


「執行員で魔術が苦手か。よく入れたもんだが、まぁいい。執行員になったらこれからも贔屓にしてくれよ、少年」


と言うか、そんな事より買えない。
贔屓所かとても買えない。

なんだ、武器ってそんなにするものなのか……訓練生だから給付金が安くても仕方ないが、どうしよう。



「えと、あの。ちょっと買えそうに無いんで……すみません」


俺は頭を下げながらショートソードを店主に返した。


「ん?なんだ。10000も無いのか?まぁ訓練生だしな、君みたいな奴は珍しい、面白いから有り金で売ってやるよ。いくらなら持ってる?」


「5000、メタルなら……」


さすがに馬鹿にすんなとか言われるだろうか。半額は無いよな、でも高すぎるだろ武器。


「いいぜ。今後も買いに来いよ……因みにこれはサービスだ、持ってけ」



……いいんだ。半額で。
適当過ぎないか、経営。
しかも腰バンドまで付けてくれた。


「あ、ありがとうございます」


俺は丁寧に礼を述べてから武器屋を後にしたのだった。

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