異世界で目立ちたい!

紫 ヤタガラス

逃亡の理人

サポートマンに逃がしてもらった理人は後ろのことを考えずただひたすら逃げることだけを考えて走る。


「こんな、こんな。俺は敵前逃亡なんてしたくはなかったのに。くそくそくそ!」


 理人は走りながら叫んでいた。
 それで気絶していたマリアルの意識が戻る。


「ここは・・・?父さんは?吸血鬼は?」


「意識が戻ったか。お前の父さん、ヴラドリオは吸血鬼に身体を乗っ取られたままだ」


 マリアルはそれを聞いた時、理人の身体を思いっきり揺さぶる。


「な!揺らすな!落としてしまうだろうが」


「降ろして!降ろさないなら揺さぶるのをやめない」


「ダメだ!安全なところに向かうまではお前は降ろさない。サポートマンとの約束だ」


 マリアルは泣き脅しで理人に頼む。


「お願いだから止まって。私は父さんを助けなきゃ。もしくはまた吸血鬼の器になって父さんを解放してもらわなきゃ」


「ヴラドリオは・・・お前の父さんはそんなこと望んでいないはず。今は逃げるんだそして逃げてから考えよう」


「逃げてから考えるって何を考えるの?私は父さんに迷惑ばかりかけている。だから吸血鬼のことでさらに迷惑をかけたくはなかった。私はあのまま父さんに殺されて入ればそれで本望だった」


 理人はそんなことを言うマリアルを一度降ろす。


「やっと分かってくれたの・・・」


 ビタン!


 理人はマリアルの頬をビンタする。


「な!女性に手をあげるだなんてそれでもあなた男なの!」


 マリアルは理人に怒りをぶつけた。


「お前がわがままばかり言うからだ。まだ言うのなら俺は分かってくれるまで君の頬を叩きづける!」


「誰が女性に手をあげる奴の言うことなんか・・・」


 ビタン!ビタン!


 理人はまたマリアルの頬を叩く。


「暴力で従わせようなんて最低ね!」


「なんとでも言え。俺はサポートマンとの約束を守るためなら心を鬼にする」


 理人が本気の目でマリアルに言ったのでマリアルはこれ以上ビンタを喰らいたくなかったから、理人に従うことにした。


「本当に後で父さんを救う方法を考えてくれるんだよね」


「当たり前だ。俺だってヴラドリオには借りがあるし、吸血鬼を倒したとなればきっと皇国から賞賛される。まぁ賞賛の方は今はついでだがな。とりあえず今は逃げるぞ」


 理人はマリアルをもう一度おんぶするために腰を降ろす。


「大丈夫。もう1人で歩けるから」


「ダメだ。さっき吸血鬼と戦ってしばらく意識がなかったんだ。それにお前は吸血鬼に身体を乗っ取られていたからあまり今は感覚がないだろう?」


 確かに痛みなどは普通に感じ、少し歩くのがふらふらなマリアル。


「わかった。じゃお願いするわ」


 マリアルはまた理人の背中に乗り、理人は森の中を走る。


「よし、まずは俺の仲間のカルナクたちを探そう。あいつらが吸血鬼にあってなければいいが・・・」


 そう思いながら走る理人だった。

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