冒険者が女主人公でも良いじゃない。

十徒

今日は朝からお仕事です(4)

少年のいる部屋から移り部屋にあった椅子に座る。
少しの虚無感の後に気づく。

私の手は血だらけで震えていた。
痛みはないが痺れているような感覚。
その痺れと震えは少年を抱え続けていたからなのか、
別の理由なのかはわからない。
自分の身なりをどことなく見ていると、
心臓がものすごい早さで動いている事に気づいた。
自分の胸に手を当て、改めて自分の鼓動を手で確認する。

そうしていると部屋の戸が開き看護師が入ってきた。
「これ使ってください」
そう言って看護師は私に白い布を差し出す。
「ありがとうございます」
自分でも気づくほど声に力が無かった。
「飲み物お持ちしましょうか?」
この状況で飲み物を勧めてくるのかと思ったとき、
口の中で血の味がする事に気づく。
「お水お願いします」
「わかりました。少し待っててくださいね」
そう言って看護師は少しすると
金属のコップに水を注いで持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「良かったらシャワー使いますか?」
「そこまでして頂くわけには」
「わかりました。部屋を出て左に行ったところに
水道があるので自由に使ってください」
そう言って看護師は部屋を去っていった。


それから少し経ち、時間がやけに長く感じる。
やがて手持ち無沙汰に思え、水道で血を拭おうと部屋を出た。
水道には鏡があった。
そこに映った私は思っている以上に血だらけだった。
当然だが服も血だらけだったので、
周りを確認して手早く服をすすいだ。
すすいだ服を着て貰った布を濡らし、腕や足を拭う。
顔を洗うと落ちる水は赤黒かった。
自分に着いた血を拭い終わりさっきいた部屋に戻る。


戻ると部屋には部屋のベッドで横になる少年と、
その横で椅子に座る医者がいた。
「気分は落ち着いたかい?」
「少しは落ち着きました」
「それなら良かった。不安だろうから先に言うと彼は無事だ。
じきに目を覚ますだろう」
「よかった、」
漏れ出るように私の声が出る。
「しかし君が連れてくるのがあと5分遅ければ、
助からなかっただろうね。良い判断力だ」
「ありがとうございます。」
「それで今後の事についてなんだが彼に身寄りはあるのかね」
「私にも何とも、洞窟で初めて見たので」
「そうか、彼のいたところに彼の荷物は無かったかい?」
「無かったとは思いますが動転していたので
確かなことは分かりません。」
「わかった。一応彼の目覚める前に聞いておきたいんだが、
もし彼に身寄りがなかった場合君はどうしたい?」
「、、どうしたい、というと」
「簡単に言えば彼をうちで預かるか、君の元で預かるかだね。
両足と片腕がない彼は一人ではまず生きられないからね」
「それは、、」
「もちろん君が彼を預からなければいけない理由はないから、
無理に預かる必要はない。
しかし、何も思い入れの無い人に対して、
ここまで出来るものかと考えると、
君の元で預かる方が彼のためになるんじゃないかと思ってね」
私は言葉に詰まった。

正直現在の生活に余裕があるとは言えない。
だが何故だかわからないが彼を放って置きたくないという、
出所のわからない感情が心に残る。
恐らく両足片腕の無い少年と過ごすのは苦労が増えるだろう。
しかしそれを考えても何かが心に引っ掛かるのだ。
そして私の口はいつの間にか動いていた。

「目が覚めたときに彼にどうしたいか尋ねてもいいですか?」

「わかった。
彼の意見を待とう。声が聞けるまではここにいると良い。
彼もその方が安心だろう。
じきに昼だが食事はとれそうかい?」
「今は大丈夫です」
「そうか。この部屋は自由に使って良いから、
とりあえず君も少し休みなさい」
「ありがとうございます。」
そう言い終えると医者は部屋の戸を閉めた。






更新ペース遅くってごめんなさい
(読者いないんだろうけど)

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