冒険者が女主人公でも良いじゃない。

十徒

今日は朝からお仕事です(2)

店の奥からカナが出てくる。
「お待たせ、しかしまだこんな安いの使う気?」
「物持ちが良いと言って欲しいね、まだそれでも掘れるもの」
「とは言っても重いわ刃こぼれするわで
なかなか使いづらいと思うけどねぇ。
今時男でもこんな重いの使ってないよ」
そう言ってカナはつるはしを私に渡す。
「ギルドの加盟祝いで貰ったのだし
使えればそれで十分よ」
「全くもう、じゃあ今回のはタダにしておくから今度新しいの買っていきな」
「あんまり高いのは買えないよ?」
「あんたにお金は求めちゃいないよw
そんなことよりあんたこれから仕事なんだろう?」
「そうだった、これありがとね
今度流行りので打ってもらおうかな」
「またその注文かい。まぁ今のよりは良いのを打つよ。
ささ、気をつけて行ってらっしゃい!」
「ありがと、行ってきます」


そう言って背中を叩かれカナの店を後にする。
カナとはたまに一緒に飲むほど仲が良い。
なんというか頼れる女友達だ。
そんなカナから酷評を貰ったつるはしを持って洞窟へ向かう。
この洞窟は出てくる獣も強くないため難易度は低い方だ。


ギルドのある町から出て少し歩くと洞窟に着いた。
朝早くに来たせいか、いるのは私一人だ。
久しぶりに来たけど確かにこれは問題になると、
少し見ただけでも分かる程そこらじゅう掘られていた。
浅いところで採掘したいがかえって危険だと思い、
気は向かないが奥へ進む。


入り口から30分程進んだ所で獣の気配を感じとり、
愛用の盾と剣(格安)を構える。
相手の足音が聞こえることから恐らく相手は歩行型。
この辺りの歩行型はほとんどが4足歩行で突進が主な攻撃方法、
壁を背にして盾を置き、左右に動ける体勢をとる。
足音が力強く早くなる。
獣の姿を捉え、予想通り小型の歩行型だと分かる。
ギリギリまで接近を待つ。
まだ、まだ、まだ、もうちょっと、今ッ。
当たる寸前で左側に避け、そのまま獣の後頭部に剣を振る。
左手に来る当たった感触から仕留めたと確信を得る。
獣は声を上げることもなく動かなくなった。


剣に着いた血を払い、獣の牙と肉を取って洞窟の端に寄せる。
仕留めた獣は埋める人もいるが、
私はここで獣が出たと後続に知らせるために
近くに置くようにしている。
仕留めた獲物の処理を終え、採掘に戻る。
ちょうど近くに目的の鉱石があったので、
そこで採掘をする。
目的の量をとり終え、
鞄が重いと思いながらも松明を持ったその時だ。
奥の方から何か音がする。
何とも言えない音、水気のある音だ。
いつもの私なら気にせず帰っていたところだが、
今日の私は何故だか音の方に向かっていた。
だんだんと松明の光が届き見えるようになる。
白い布のようなものが見え、
少し進むとその白い布は途中から赤くなっている。
それと同時に少し茶色がかった毛が目に入る。
そこからそれが人だと分かるまでには時間はかからなかった。




いきなり数日空いてしまった。

コメント

  • 侘助

    主人公の、物を大切にする性格好き!
    続き気になるから読む!

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