俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

第七十八話 ブルーゲイル


 「討伐隊に参加したいというのはお前か?」

 見た目通り高圧そうな雰囲気を出しながらユニオンマスターが俺の前で口を開く。

 「そうだ。俺はカケルってんだ。同行は問題ないかい?」

 「……私はイクシル。ユニオンマスターだ。失礼だがレベルは?」

 「レベルは7で、特技は回復魔法だ」

 すると眼鏡をくいっと持ち上げながら先ほど報告に行った受付のお姉さんをチラリと見ると、受付のお姉さんはコクコクと頷いていた。

 「回復魔法か、良かろう。相手は雑魚だが万が一ということもあるしな。カードに記録されているなら本当だろう、許可する」

 <嫌な奴ですね>

 ストレートに言うナルレアだが、その意見には同意せざるを得ない。戦力としては数えていないようだな……と考えていたら冒険者に絡まれた。

 「おいおい、マジかよ? こいつの武器、初心者の槍じゃねぇか。俺はお荷物と一緒に行くのは嫌だぜ?」

 「……30分後に出発だ、遅れるなよ」

 イクシルは気にした様子も無く、檻と一緒に一旦奥へと戻って行った。あの態度を見る限り、俺だけにって訳じゃなさそうだな。元々ああなんだなきっと。横目で向こうへ行くのを見ていると、突っかかってきた冒険者がまた突っかかってきた。

 「おい、回復魔法が使えるって? 別に珍しくもないが、どれくらいの効果があるのか見せてくれよ、なあ?」

 腕まくりをしながら冒険者がニヤリと笑う。なるほど、俺をぶん殴ってケガをさせるつもりか。

 「……」

 <生意気ですね、『力』に振り分けて畳んじゃいましょうや!>

 どこの時代劇だよ!? さて、ナルレアの言うようにここで倒してしまうのは確かに楽だが……

 「止めておきな。その兄さん……強いぜ」

 「何?」

 「ん?」

 冒険者の後ろから声がかかったので、そっちを見てみると全身鎧に身を包んで肩に槍を乗せた金髪の男が口元をゆるませながら立っていた。

 「……あんたは……ふん、やっぱり腑抜けたって噂は本当だったのか。こんな槍を持った男が強いぃ? そんなはずないだろうが!」

 「試してみれば分かる」

 むう、勝手に話を進めるのは止めてほしいんだが。仕方ない、ここは人懐っこい笑顔で収めるとしよう。

 「まあ、落ち着いてくれよ。俺は――」

 と、片手を上げた瞬間、頬に衝撃を受けた。

 <『体』を上げておきますね>

 ドン! ガッシャーン!

 俺は大きく吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。中々の威力、そこそこのレベルがありそうだ。ユニオン内に女性の悲鳴やどよめきが起こる中、俺を殴った冒険者が笑いながら言い放った。

 「みろ、この程度の攻撃も避けられないでどうする? まあ、行くってんなら止めはしないが、ゴブリンの囮くらいにしかなれんだろうな! 手柄はこの俺、ゴウリキ様が頂くぜ!」

 「あれー?」

 さっきの槍を持った男が声を上げると、ガハハと笑いながらゴキブリ……もといゴウリキが出ていく。完全に足音が無くなったのを見計らって俺はよっと立ち上がる。

 「よっと!」

 「うわあ!? 全然元気だこいつ!?」

 俺を助け起こしてくれようとした男が驚いて後ずさっていた。お、この人は確か……?

 「あんた、昨日酒場で飲んでた……」

 「お? おお! オススメを譲ってくれた兄ちゃんか! 昨日は助かったよ、おかげで仲間の祝いができた。それより体は大丈夫か?」

 「ん? ああ、まあこれくらいならな。あいつ考え無しにやってくれたな……≪ハイヒール≫」

 俺は壊れたイスやテーブル、壁に回復魔法をかけて修復していく。服だけじゃなくてこういうのも治せるのは本当に便利だと思う。

 「へ?」

 「これでよし、と。集合場所まで行きたいけど、あいつにまた絡まれそうだな」

 俺が腕を組んでどうするか考えていると、先程の槍を持った男が近づいてきた。

 「大丈夫か?」

 「ん? ああ、問題ない。フォレストボアの体当たりに比べたら全然だ」

 すると槍の男がパチパチと目を瞬かせたあと、笑いながら言った。

 「フッ、確かにな。君は後から来るといい、移動中まではヤツもちょっかいはかけてくるまい」

 「そうさせてもらうよ」

 俺は手を上げて男を見送ると、酒場で出会った男が小さく呟いた。

 「……竜の騎士、クリューゲルか」

 「知ってるのか?」

 「この国出身なら知らない人間は居ない。こんなところで冒険者になっているとは……」

 何か事情がありそうだけど、とりあえず今は置いておこう。酒場で出会った男もそう思ったのか、また俺に話しかけてきた。

 「あんたは中々面白そうだ。俺はニド。ゴブリン退治、宜しく頼む」

 「おお、こっちこそ。カケルだ」

 握手を求められたので、ニドの手を握り返すとわらわらと後ろから他の冒険者もやってきた。酒場でみた顔なので、おそらく仲間なのだろう。

 「リーダー、俺達も紹介してくれよ? 俺はアルってんだ! シーフをやっている」

 バンダナを頭に巻いた小柄な男が歯を見せて笑いながら自己紹介してくれる。うん、シーフって感じの男だな。続いて金髪三つ編みの女の子が口を開いた。

 「私はコトハと申します。呪術士ですわ」

 「呪術……」

 「ええ、魔物を痺れさせたり眠らせたりと、妨害するのが得意です。ゴブリンみたいなチンケな魔物は即キルで……コホン。すぐ黙らせてさしあげますわ」

 あまりニュアンスは変わらないけどな……綺麗な顔をしているが口は悪いみたいだ。その後ろにおどおどしたオレンジの髪をした女の子がコトハの背中からひょこっと顔を出して俺をじっと見ていることに気付く。目が合うと慌てて顔を引っ込めたが、もう一人いた男に首根っこを掴まれて出てくることになった。

 「ほら、リーダーが挨拶したんだからお前も挨拶しろよ? オレはドアールだ。ジョブは剣士、よろしくな!」
 
 くすんだ灰色の長髪を後ろで束ねたドアールが軽い感じで片手をあげてくると、杖を持った女の子がおずおずと上目使いをしながら口を開いた。

 「サ、サンで、す……そ、僧侶、です……」

 「カケルだ、よろしくな」

 「ひゃ!?」

 俺が手をあげて挨拶すると、びっくりしてまたコトハの後ろへと隠れた。うーむ、驚くほどの人見知り。トレーネの爪の垢を飲ませてやりたいくらいだ。

 「ははは、パーティ以外の人間と話すことはあまり無いからなサンは。で、俺を含む五人がパーティ『ブルーゲイル』だ」

 「5人パーティか、バランスがいいな」

 「そう言ってくれると嬉しいね。気が合う合わないがあるから中々この人数を集めるのは難しいんだ」

 「ああ、同郷とかじゃないのか?」

 俺が尋ねるとニドが肩を竦めて言う。

 「だな。あちこちで依頼を受けている時に助けあったりして今に至るってところだ、サンは――」

 と、ニドが話始めたところで、先程の槍の男、クリューゲルが入り口から声をかけてきた。

 「そろそろ来た方がいいぞ、マスターは時間にうるさいからな」

 「了解、サンキュー」

 その声を聞いて他の冒険者達もぞろぞろと出ていき、ブルーゲイルのメンバーも歩き出した。

 「また後でな! お互い頑張ろうぜ」

 全員出て行った後、俺も外へと向かう。

 <気のいい人達でしたね>

 「ああ。ケガをしたら優先的に治してやりたいくらいにはな。それと、あの獣人の子。あの子を助けないとな」

 <カケル様ならできますよ>

 おだてるなっての。

 ゴブリン退治と獣人救出か……自分から面倒事に突っ込んだので文句は言えない。できるだけのことはすると思いながら俺はユニオンから外へ出た。

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