プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
64話 予選の終わり
やかましいのが一人光の粒となって消えていった。
あんなやつではあったが、いなくなったらいなくなったで少しだけ寂しいような気もする。
そんな感傷に浸っていた俺達を妨げたのは軽快になるファンファーレだった。
「え? このファンファーレってなんですか?」
「何って、聞いてただろ? 条件達成だってよ」
この試練における最初の山場である予選、ナニィは見事その予選を突破したのだ。
「あっ!?そういえば私の条件って誰かのカードを一枚破壊することでした!」
心底驚いた様子のナニィを見て、苦笑する。
どうやら自分に課された条件を忘れていたようだ。
「あの、条件ってなんですか?」
一人状況についていけない四葉が頭にハテナマークを浮かべる。
「そういえば四葉にはまだ教えてなかったわね?」
アリスが指をピンと立てて、説明モードに入る。
「私達プリンセスにはこなすべき課題があって、それが一定期間の間にできないと強制的に元の世界に戻されちゃうのよ」
「え!? た、大変じゃないですか? アリスちゃんはそういうないの? 私アリスちゃんとお別れするなんて嫌だよ!」
「安心なさい、私の条件は一万人の人間と握手することよ。条件はとっくの昔に達成済みって訳」
俺はドヤ顔を決め込むアリスに思わず感心した。
一万もの人間と握手したのかよ、すげえなこいつ。
「とりあえず、予選通過おめでとうと言っておこうかしら?」
「えっと、ありがとうございます?」
「何よ、あんまり嬉しそうじゃないわね?」
「嬉しくない訳じゃないんですけど、本当にいいんでしょうか? 私なんかが本選に残っちゃって」
ナニィは自信なさそうに、そう呟く。
こいつは元々姉妹の支援に参加したプリンセスなので、他のプリンセスを差し置いて自分が残ってしまう現状に納得できないのかもしれない。
「なーに言ってんだ。姉妹も探さなきゃいけないんだろ? それにこれ終わったら銭湯に連れてくって約束したじゃねえか」
アリスとヘカテアの戦いに乱入する前、山道を散策している際に交わした約束だ。
約束を履行する前に勝手に還ってもらっては俺が困る。
「約束、そうですよね。それにムクロさんの中に宝珠を残したままにしておくわけにもいきませんし」
ナニィはうんうんと考え込む。
その間、頭のあほ毛がぴょんぴょん動いていた。
「決めました!どれだけのことが出来るかは分からないけど……私、もう少しこっちに残って頑張ってみます!」
考えが纏まったのか、決意を新たにナニィは残留の意志を示した。
「そういうことなら、これは貴方に返すわ」
アリスが一枚のカードをナニィに手渡す。
忘れもしないそれは、ナニィ自身のカードだ。
「いいんですか?」
「もちろんよ。期待なんて全くしてなかったし、せいぜい盾にでもしようと思ってたけど、悪くない働きだったわ」
「あはは、誤解しないであげてください。これで褒めてるんですよ?」
全く素直じゃないですよねと四葉がアリスをつついた。
「働きに対して十分な報酬を支払うのも高貴なるものの務めよ。あんたは仕事した分の報酬をきちっと受け取りなさいって話をしてるの、それに……あんたには必要でしょ?」
「分かりました。そういうことなら、私のカードを返してもらいます」
アリスがピンと指でカードを弾くと、カードは宙を舞ってナニィの手元に戻る。
「これからは本選が始まるわ。残ってるプリンセス達も弱い奴、愚鈍な奴はこの予選で粗方淘汰されたはず、生半可な気持ちでいるとあっさりやられるわよ? 精々気を付けることね」
「はい、ご忠告ありがとうございます!」
「また会える機会を楽しみにしてるわ」
びしっと敬礼するナニィにアリスは不適に微笑む。
恐らく、俺の人生で一番長いGWがようやく終わった。
だが、俺はまだ知らなかった。
これからの日々がこれまで以上に混沌とした密度の濃い日々になることを。
でも今だけは、束の間の安息を甘受することにしようと思う。
俺達はアリス達と別れ、家路につくのだった。
あんなやつではあったが、いなくなったらいなくなったで少しだけ寂しいような気もする。
そんな感傷に浸っていた俺達を妨げたのは軽快になるファンファーレだった。
「え? このファンファーレってなんですか?」
「何って、聞いてただろ? 条件達成だってよ」
この試練における最初の山場である予選、ナニィは見事その予選を突破したのだ。
「あっ!?そういえば私の条件って誰かのカードを一枚破壊することでした!」
心底驚いた様子のナニィを見て、苦笑する。
どうやら自分に課された条件を忘れていたようだ。
「あの、条件ってなんですか?」
一人状況についていけない四葉が頭にハテナマークを浮かべる。
「そういえば四葉にはまだ教えてなかったわね?」
アリスが指をピンと立てて、説明モードに入る。
「私達プリンセスにはこなすべき課題があって、それが一定期間の間にできないと強制的に元の世界に戻されちゃうのよ」
「え!? た、大変じゃないですか? アリスちゃんはそういうないの? 私アリスちゃんとお別れするなんて嫌だよ!」
「安心なさい、私の条件は一万人の人間と握手することよ。条件はとっくの昔に達成済みって訳」
俺はドヤ顔を決め込むアリスに思わず感心した。
一万もの人間と握手したのかよ、すげえなこいつ。
「とりあえず、予選通過おめでとうと言っておこうかしら?」
「えっと、ありがとうございます?」
「何よ、あんまり嬉しそうじゃないわね?」
「嬉しくない訳じゃないんですけど、本当にいいんでしょうか? 私なんかが本選に残っちゃって」
ナニィは自信なさそうに、そう呟く。
こいつは元々姉妹の支援に参加したプリンセスなので、他のプリンセスを差し置いて自分が残ってしまう現状に納得できないのかもしれない。
「なーに言ってんだ。姉妹も探さなきゃいけないんだろ? それにこれ終わったら銭湯に連れてくって約束したじゃねえか」
アリスとヘカテアの戦いに乱入する前、山道を散策している際に交わした約束だ。
約束を履行する前に勝手に還ってもらっては俺が困る。
「約束、そうですよね。それにムクロさんの中に宝珠を残したままにしておくわけにもいきませんし」
ナニィはうんうんと考え込む。
その間、頭のあほ毛がぴょんぴょん動いていた。
「決めました!どれだけのことが出来るかは分からないけど……私、もう少しこっちに残って頑張ってみます!」
考えが纏まったのか、決意を新たにナニィは残留の意志を示した。
「そういうことなら、これは貴方に返すわ」
アリスが一枚のカードをナニィに手渡す。
忘れもしないそれは、ナニィ自身のカードだ。
「いいんですか?」
「もちろんよ。期待なんて全くしてなかったし、せいぜい盾にでもしようと思ってたけど、悪くない働きだったわ」
「あはは、誤解しないであげてください。これで褒めてるんですよ?」
全く素直じゃないですよねと四葉がアリスをつついた。
「働きに対して十分な報酬を支払うのも高貴なるものの務めよ。あんたは仕事した分の報酬をきちっと受け取りなさいって話をしてるの、それに……あんたには必要でしょ?」
「分かりました。そういうことなら、私のカードを返してもらいます」
アリスがピンと指でカードを弾くと、カードは宙を舞ってナニィの手元に戻る。
「これからは本選が始まるわ。残ってるプリンセス達も弱い奴、愚鈍な奴はこの予選で粗方淘汰されたはず、生半可な気持ちでいるとあっさりやられるわよ? 精々気を付けることね」
「はい、ご忠告ありがとうございます!」
「また会える機会を楽しみにしてるわ」
びしっと敬礼するナニィにアリスは不適に微笑む。
恐らく、俺の人生で一番長いGWがようやく終わった。
だが、俺はまだ知らなかった。
これからの日々がこれまで以上に混沌とした密度の濃い日々になることを。
でも今だけは、束の間の安息を甘受することにしようと思う。
俺達はアリス達と別れ、家路につくのだった。
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