プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す

笑顔

45話 クロスチェンジ

 俺とアリスが医務室にて無言のまましばらく過ごした後、ナニィと四葉が戻ってきた。


「はー、これで一段落つきましたねー」


「おつかれさん」


 ナニィは気力を使いつくしたとばかりに椅子に座り込んでしまう。
 ぐったりと背もたれに身体を預けるその姿には威厳のカケラもない。


「大勢に囲まれるって大変です。威圧感すごいし、私こういうの好きじゃないです」


「お前、一応候補者だろ?」


 仮に女王になったら一体どれだけの人間に囲まれるか分かったものじゃないだろうに。


「候補者は候補者でも私はなんちゃって候補者ですけどねー」


 あははーと気楽に笑って見せるナニィはそこで一度姿勢を正し、ベッドに座ってるアリスに視線を向けた。


「アリスさんごめんなさい。あの時、本当なら私が気づかないといけなかったのに……」


「別にいいわよ。いきなりステージに引っ張り上げちゃったのはこっちだし、それで周囲の警戒までしろって言うのも気が引けるわ」


「助けてくれて……ありがとうございました」


「ふ、ふん勘違いしないでもらいたいわね? このカードがある限り貴方は私の奴隷よ、精々こきつかってあげるから覚悟しておきなさい!」


「あはは、お手柔らかに……それで怪我の具合はどうなんですか?」


 ナニィは布団に隠されているアリスの足を伺う。


「そうねぇ、本番には……間に合わないかもしれないわね」


「ええっ!?」


 それを聞いて一番に驚いたのはナニィではなく……四葉だった。


「アリスちゃん……そんなに酷い怪我なの?」


「深手ならこうしておしゃべりなんてできないわよ。でも、立つだけならともかく躍るなんて流石に無理よ」


「そ、そんな――」


「あの? 二人は何のお話をしてるんですか? アリスちゃんが怪我しちゃったのは残念ですけど、実際に四葉ちゃんは無傷なんですしお祭りは出来るんじゃ……」


「ナニィ――お前ちょっと鈍すぎだ」


「な、なんでですか? こういう時のためにアリスさんは四葉ちゃんと入れ替わってたんじゃないんですか?」


「練習ってのは、本人がやらないと意味がないだろ?」


 可愛らしい顔をぷんぷん膨らませて抗議するナニィにそう諭す。
 他人にトイレに行ってもらってもなんにもならないのだ。


「アリスと四葉が入れ替わってたのは今日に始まったことじゃなくて、ずっと前からだったんだろ?」


 俺の指摘に四葉は顔を俯かせ逡巡する……。


「……神無さんの、おっしゃる通りです」


「四葉っ!?」


「良いの! ここまで来て隠し事なんて出来ないもん」


 四葉は意を決したように毅然とした態度で口を開く。


「私と四葉ちゃんが入れ替わるようになったのは、今から大体半年前のことなんです」


 そうして、俺たちは二人の馴れ初めを聞くことになった。



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