その日、僕は初めて自分を知りました。

椎名蒼

赤紙編⑭

犯人が被害者を殺しその死体をバラバラに切断するにはそれぞれ違う理由はあるだろう。
死体を隠しやすくするため。中には切断した死体を焼いて食べてしまう狂者もいるかもしれない。
しかし、彼。木村はそのどちらでもなかった。
あの日永田を殺した木村は自分の庭に死体を運びそれを埋めた。母が仕事のため外出したのを見計らってのことであった。永田の顔は普通のものでは視認できないほどひどいものであったという。目が垂れ下がり、鼻からは鼻血が垂れ舌を丸出しにしその目からは涙を流していた。

「苦しかったかい?」
「悲しかったかい?」


木村は不気味に虚ろな目で死んだ彼の死体にそっと問う。その死体からは当然返答など返ってくるはずがない。彼の体はその時はまだ殺されて間もなく、暖かく血も美しいほど鮮明だったに違いない。
「お前はもう死んでいるのに…」

木村は死んでいる永田を見てだんだん苛立ちを覚える。いや、それと同時に気持ち良さが爆発しそうだった。

くそう。永田のやつ…死んでいるくせに…なんて美しいんだ。垂れ下がった目は醜いという表現では足りないくらい哀れなものだった。血が…血がトクトクと溢れ出す。

気持ちいい。僕はやっと解放されたんだ。やられていたままの状態から…やっと解放されたんだ。僕を横目に…僕を見捨てて…嘲笑っていたやつに…

「アハハハハハハハッ!!」

笑いが止まらなかった。

でもそれだけじゃ物足りなかった。木村は家にあったノコギリで永田の死体を切断し始めた。すっかり生気の失った腕を拾い上げると、その腕はだらんと垂れ下がった。

美しい…
僕を嘲笑っていたやつが僕の前でこんなに無理力な死体に成り上がっているなんて。












最高傑作だよ





















気分が…

非常に……

悪かった。

悲しみと非現実間…気持ち悪さに、春間は刑事から永田の遺体の切断のされ方、発見当時の様子。

木村は二階のベットで永田の×××を抱いて寝ていたという。


「今度は僕を裏切らないでね。」






木村が精神病院の一室のドアノブで自殺を図ったのは赤宮と中谷が春間から全てを聞いたわずか三日後であった。





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