碧き舞い花
『筆師の後書き、そして追記』
やぁ、皆さん。ユフォン・ホイコントロだ。
ん? なんだい?
もしかしてガフドロ・バギィズドとの戦いがはじまるのを期待していたかい?
もしそうならば、申し訳ない。本当に申し訳ない。
そもそもそこを目指しての物語だと言われてしまえば、返す言葉はないけれど。セラとガフドロの戦いは書かない。
書かないのだが、申し訳なさもあるから抽象的にだけ記すことにする。
『奪われしハヤブサにはじまり、想いなぞるツバメに終わる』
これでどうだろうか。
もちろん、結果は知っての通りだろ?
僕がこれを書いていること、彼女が僕のベッドで悪夢のない眠りに就いていること、それがすべてさ。ははっ。
さて。
僕にとってはついさっき彼女から聞いた話をここまで書いてきたわけで、僕が知る『碧き舞い花』の物語はここまでだ。
そしてこれから彼女の物語は、僕も彼女も知らない、誰も知らないところへと向かっていくんだ。楽しみだろ?
あまり長々と書いても仕方がないので、そろそろ筆を置こうと思う。久々の熟睡を邪魔したくはないけれど、彼女がすぐそこで待ってる。僕もいかなきゃ。
物語を終えることよりも、これからのことを考えて筆が震える。ははっ!
『舞い花に誘われし筆師 ユフォン・ホイコントロ』
ー追記ー
あとがきを書いて二日が経った。
物語を書き終えた翌日の話を少ししようと思う。ガフドロとの戦いを書かない代わりと言っては、別方向のものだけどね。
ユフォンの邪魔も含めて熟睡を満喫したセラは、目覚めると身体を起こし、朝日を受けてプラチナや白い肌を麗しく輝かせていた。
「おはよう」
ユフォンが開き切らない目で彼女を見ながらそういうと、セラは微笑んで「おはよう」と返した。
マグリアで再開したカフェで朝食を済ませると、セラは鞘に収まったものと裸のもの、二本の剣を背負ってユフォンを伴ってアズの森に向かった。
森閑とした、光の注ぐ森の中。
兄ビズラスの墓標の隣、ズィーの墓標。彼女はその前に裸の剣を突き立てる。彼のハヤブサを、彼の元へ。
そうして数歩下がると、セラは二人の前で口を開く。
「ズィー、ビズ兄様……。みんなのおかげでエレ・ナパスが戻って来たよ。これからユフォンと一緒に行くんだ。一緒に………………一緒に帰りたかった」
瞳を閉じる彼女にユフォンがそっと寄り添った。セラはサファイアを開く。
「お父様も、お母様も、スゥラ姉さまも……一緒に、帰りたかった。どれだけでも願える。一緒に帰りたいって。でも、みんなそんなわたしの背中を押すんでしょ?」
セラは優しく笑う。
「止まってなんていられない。大丈夫、一人じゃないもんね」
セラは隣のユフォンにも笑顔を届ける。彼が微笑みを返すの見てから、再び墓標に目を向ける。
「行くね、みんな。また来るよ」
碧き花が舞って――。
彼女のサファイアには懐かしき故郷が、仲間と民とともに映る。
‐完‐
ん? なんだい?
もしかしてガフドロ・バギィズドとの戦いがはじまるのを期待していたかい?
もしそうならば、申し訳ない。本当に申し訳ない。
そもそもそこを目指しての物語だと言われてしまえば、返す言葉はないけれど。セラとガフドロの戦いは書かない。
書かないのだが、申し訳なさもあるから抽象的にだけ記すことにする。
『奪われしハヤブサにはじまり、想いなぞるツバメに終わる』
これでどうだろうか。
もちろん、結果は知っての通りだろ?
僕がこれを書いていること、彼女が僕のベッドで悪夢のない眠りに就いていること、それがすべてさ。ははっ。
さて。
僕にとってはついさっき彼女から聞いた話をここまで書いてきたわけで、僕が知る『碧き舞い花』の物語はここまでだ。
そしてこれから彼女の物語は、僕も彼女も知らない、誰も知らないところへと向かっていくんだ。楽しみだろ?
あまり長々と書いても仕方がないので、そろそろ筆を置こうと思う。久々の熟睡を邪魔したくはないけれど、彼女がすぐそこで待ってる。僕もいかなきゃ。
物語を終えることよりも、これからのことを考えて筆が震える。ははっ!
『舞い花に誘われし筆師 ユフォン・ホイコントロ』
ー追記ー
あとがきを書いて二日が経った。
物語を書き終えた翌日の話を少ししようと思う。ガフドロとの戦いを書かない代わりと言っては、別方向のものだけどね。
ユフォンの邪魔も含めて熟睡を満喫したセラは、目覚めると身体を起こし、朝日を受けてプラチナや白い肌を麗しく輝かせていた。
「おはよう」
ユフォンが開き切らない目で彼女を見ながらそういうと、セラは微笑んで「おはよう」と返した。
マグリアで再開したカフェで朝食を済ませると、セラは鞘に収まったものと裸のもの、二本の剣を背負ってユフォンを伴ってアズの森に向かった。
森閑とした、光の注ぐ森の中。
兄ビズラスの墓標の隣、ズィーの墓標。彼女はその前に裸の剣を突き立てる。彼のハヤブサを、彼の元へ。
そうして数歩下がると、セラは二人の前で口を開く。
「ズィー、ビズ兄様……。みんなのおかげでエレ・ナパスが戻って来たよ。これからユフォンと一緒に行くんだ。一緒に………………一緒に帰りたかった」
瞳を閉じる彼女にユフォンがそっと寄り添った。セラはサファイアを開く。
「お父様も、お母様も、スゥラ姉さまも……一緒に、帰りたかった。どれだけでも願える。一緒に帰りたいって。でも、みんなそんなわたしの背中を押すんでしょ?」
セラは優しく笑う。
「止まってなんていられない。大丈夫、一人じゃないもんね」
セラは隣のユフォンにも笑顔を届ける。彼が微笑みを返すの見てから、再び墓標に目を向ける。
「行くね、みんな。また来るよ」
碧き花が舞って――。
彼女のサファイアには懐かしき故郷が、仲間と民とともに映る。
‐完‐
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