碧き舞い花
515:時は迫る
「ところで、セラ」
ユフォンは唐突に真面目な表情になった。
「なに?」
「ところでというか、これが本題なんだけど。イソラが戻ってきた、というかここに来た。ついさっき。エァンダの力の影響で戸惑ったみたいだけど、感覚がすごいからね彼女は。それで、君を呼びに来た。ズィーもいたら一緒に連れてくつもりだったんだけど。グゥエンダヴィードのことだから。それも重要な」
「ズィーはわたしが連れてく。イソラのところに行けば……伯父さんもっていうか、エァンダの気配すごい小さい」
セラがイソラのいる場所を探るとそこにはゼィロスとサパル、それからかなり弱ったエァンダの気配があった。彼の周囲にいる、恐らくは治療をする者たちの気配に埋もれてしまっているほどだ。
「僕も治癒のマカを使ったし、ヒュエリさんが疲労回復のマカも使った。それでもまだまだ回復とは言えない」
「そっか……。とりあえず、ズィーを連れていくね」
「うん。僕は先に戻ってる」
「イソラ!」
ついさっき別れたばかりのズィーを連れてイソラの前に現れたセラは、小麦色の友を抱擁した。彼女は全身汚れまみれで、髪も前髪を下して、ぼさぼさだった。
「ただいま?……セラおねえちゃん!」
「来てすぐのところ悪いが」ゼィロスがセラの肩に手を置いた。「部屋を移ろう。エァンダの治療に集中してもらう」
セラは伯父の背後で治療を受けるエァンダに視線を向ける。治療の手を休めない大勢のいくつかの世界の薬師たちが囲むベッドの上に、髪を黒く染めたエァンダがいた。
彼を間近にして悪魔の気配を感じられた。エァンダ本人の気配と競り合うように滲み出ている。エァンダが押さえ込んでいるからそれで済んでいるのか、それともこれからより濃くなっていくのか。セラは不安に思った。
と、そんな彼女に向けてエァンダの口元が笑った。どう見ても弱っているにも関わらず、安心を与える笑みだった。
エァンダのところにサパルを残し部屋を移動すると、ゼィロスはすぐさまイソラに報告を指示した。
「グゥエンダヴィードを壊すって! だからあたし帰ってきたの。ルピはもしもの事を考えて残ってる。鍵でナパスの人たちを助けられるように」
ズィーがものすごい剣幕でイソラに詰め寄る。「すぐなのかっ!」
「ちょっとズィー、落ち着いて」
セラは二人の間に割って入り、イソラに優しく尋ねる。
「どうなのイソラ?」
「うん。今すぐじゃないんだけど、すぐ。でね」
イソラは閉じた瞳でじっくりとセラを見つめた。
「第一部隊が来るみたいなの」
セラがイソラの両肩を掴む。「ガフドロっ!」
「おい、セラ」ゼィロスがセラをイソラから離す。「ズィーを止めたそばから」
「ごめん。でも今までずっと――」
「わかってる」
ゼィロスはセラを抱き寄せる。
「今回ばかりはちゃんとお前を行かせる。お前のためにも、ナパスのためにも」
「もちろん俺も行くぞ!」
「ああ。今回はセラとズィーに任せる。エァンダは当然だが、俺も戦えるほど回復していないからな」
ゼィロスは抱くセラを弱々しい笑みで見下ろした。伯父も一族のために戦いたいはずなのだ。
「じゃあ、戦える戦士集めてすぐにでも行こう!」
「駄目!」
セラはゼィロスより早くズィーの言葉に首を振った。
「なんでだよ。みんなを早く助けないとだろっ?」
ありとあらゆる感情が焚きつく。セラは低い声で言った。
「ガフドロを待たなきゃ」
ユフォンは唐突に真面目な表情になった。
「なに?」
「ところでというか、これが本題なんだけど。イソラが戻ってきた、というかここに来た。ついさっき。エァンダの力の影響で戸惑ったみたいだけど、感覚がすごいからね彼女は。それで、君を呼びに来た。ズィーもいたら一緒に連れてくつもりだったんだけど。グゥエンダヴィードのことだから。それも重要な」
「ズィーはわたしが連れてく。イソラのところに行けば……伯父さんもっていうか、エァンダの気配すごい小さい」
セラがイソラのいる場所を探るとそこにはゼィロスとサパル、それからかなり弱ったエァンダの気配があった。彼の周囲にいる、恐らくは治療をする者たちの気配に埋もれてしまっているほどだ。
「僕も治癒のマカを使ったし、ヒュエリさんが疲労回復のマカも使った。それでもまだまだ回復とは言えない」
「そっか……。とりあえず、ズィーを連れていくね」
「うん。僕は先に戻ってる」
「イソラ!」
ついさっき別れたばかりのズィーを連れてイソラの前に現れたセラは、小麦色の友を抱擁した。彼女は全身汚れまみれで、髪も前髪を下して、ぼさぼさだった。
「ただいま?……セラおねえちゃん!」
「来てすぐのところ悪いが」ゼィロスがセラの肩に手を置いた。「部屋を移ろう。エァンダの治療に集中してもらう」
セラは伯父の背後で治療を受けるエァンダに視線を向ける。治療の手を休めない大勢のいくつかの世界の薬師たちが囲むベッドの上に、髪を黒く染めたエァンダがいた。
彼を間近にして悪魔の気配を感じられた。エァンダ本人の気配と競り合うように滲み出ている。エァンダが押さえ込んでいるからそれで済んでいるのか、それともこれからより濃くなっていくのか。セラは不安に思った。
と、そんな彼女に向けてエァンダの口元が笑った。どう見ても弱っているにも関わらず、安心を与える笑みだった。
エァンダのところにサパルを残し部屋を移動すると、ゼィロスはすぐさまイソラに報告を指示した。
「グゥエンダヴィードを壊すって! だからあたし帰ってきたの。ルピはもしもの事を考えて残ってる。鍵でナパスの人たちを助けられるように」
ズィーがものすごい剣幕でイソラに詰め寄る。「すぐなのかっ!」
「ちょっとズィー、落ち着いて」
セラは二人の間に割って入り、イソラに優しく尋ねる。
「どうなのイソラ?」
「うん。今すぐじゃないんだけど、すぐ。でね」
イソラは閉じた瞳でじっくりとセラを見つめた。
「第一部隊が来るみたいなの」
セラがイソラの両肩を掴む。「ガフドロっ!」
「おい、セラ」ゼィロスがセラをイソラから離す。「ズィーを止めたそばから」
「ごめん。でも今までずっと――」
「わかってる」
ゼィロスはセラを抱き寄せる。
「今回ばかりはちゃんとお前を行かせる。お前のためにも、ナパスのためにも」
「もちろん俺も行くぞ!」
「ああ。今回はセラとズィーに任せる。エァンダは当然だが、俺も戦えるほど回復していないからな」
ゼィロスは抱くセラを弱々しい笑みで見下ろした。伯父も一族のために戦いたいはずなのだ。
「じゃあ、戦える戦士集めてすぐにでも行こう!」
「駄目!」
セラはゼィロスより早くズィーの言葉に首を振った。
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