碧き舞い花
165:狙われたセラ
戻ってすぐに戦闘を再開するセラ。
一体減ってる。
彼女が戦場に戻っての率直な感想。
遠く離れた島からでは感じられなかったが、最初の二体のうち一体の気配がない。増殖したばかりのものは彼女が離れる前より増えているが、記憶にある飛び抜けて強い活力を持つもの存在が一つなくなっているのだ。
誰かが仕留めたのだろう。
「!?」
それは唐突に、彼女の思考を停止させた。
セラは空を見上げる。
もちろん、そこにプライの影はない。
日光に眩む視界。彼女はそこにいる者を肌で感じる。
ビュソノータスの空気よりも冷たい、殺意とは違う獲物を狙うような気配。城で感じた悪寒がエァンダに向けられていたものの余波だったのだと教えるような、正真正銘セラだけに向けられたものだ。
狙われている。
セラは感覚よりも、超感覚よりも正確にそう思った。
「オマエ、コノ中でイチバン面シロイ」
言葉と共に降ってくる生物。
セラは転がって避ける。すぐに立て直し、生物に目を向ける。
「ホシイ……ホシイ……欲シい……」
会話が通じるとは思わなかったが、セラは目の前の生物について気付いたことを訊く。「一つになったの?」
対峙する生物は破界者とはすでに別の形になっていた。両生類を思わせる肌を持ち、骨格があるのかと疑問に思うような滑らかな線の身体つき。時々、皮膚が波打つ。
そして、その体から感じる気配は最初の二体のうちの一体なのだが、その中、注意深く意識を向けるともう一体の気配があった。
つまり、二体は一体へと集合したらしかった。
「ホジイィ!!」
ぐりゅんと生物の腕が伸びて、セラに迫る。まるで蛇だ。
迫りくる腕に対して彼女はオーウィンを振るう。ここまで増殖してしまった状況では、今さら一体や二体増えることに誰も文句は言わない。むしろ、一番の強敵を倒すことこそがこの戦場での第一目標となっているといってよかった。
現に彼女にだけ視線を向けるその生物に、名もなき戦士たちが斬り掛かっている。すべて、目もくれない生物によって返り討ちに会い、血肉を散らしてしまっているが。
「っく……」
彼女の剣は止められた。生物は斬られることなど恐れていないかのように堂々と、フクロウに巻き付いたのだ。
びくともしない。とてつもない腕力。
それが、ふとなくなる。
しかし、セラにとっては予期しないことではなかった。
名のある者たちが皆、この場に向かっていることは感じていたからだ。
きれいに後転した彼女はすぐさま剣に纏わりついた蛇を払い捨てた。そして、蛇を斬り裂いた兄弟子にお礼を言う。
「ありがと、エァンダ」
「気を付けろよ。分かってると思うけど、くっついたぞあいつら」
「うん。分かってる」
「あと一つ。どうやら次の寄生先をご所望のようだ、特にセラ、お前がいいらしい」
「どうしてなの?」
「さあな、女だからじゃないか?」
「ふざけてる?」
「半々」
それだけ答えてエァンダは駆け出した。
彼に少しばかり遅れての到着に大事な人を助ける役目を奪われたズィーが激しい攻防を繰り広げている最中へと。
もちろんセラもその中へ。
一体減ってる。
彼女が戦場に戻っての率直な感想。
遠く離れた島からでは感じられなかったが、最初の二体のうち一体の気配がない。増殖したばかりのものは彼女が離れる前より増えているが、記憶にある飛び抜けて強い活力を持つもの存在が一つなくなっているのだ。
誰かが仕留めたのだろう。
「!?」
それは唐突に、彼女の思考を停止させた。
セラは空を見上げる。
もちろん、そこにプライの影はない。
日光に眩む視界。彼女はそこにいる者を肌で感じる。
ビュソノータスの空気よりも冷たい、殺意とは違う獲物を狙うような気配。城で感じた悪寒がエァンダに向けられていたものの余波だったのだと教えるような、正真正銘セラだけに向けられたものだ。
狙われている。
セラは感覚よりも、超感覚よりも正確にそう思った。
「オマエ、コノ中でイチバン面シロイ」
言葉と共に降ってくる生物。
セラは転がって避ける。すぐに立て直し、生物に目を向ける。
「ホシイ……ホシイ……欲シい……」
会話が通じるとは思わなかったが、セラは目の前の生物について気付いたことを訊く。「一つになったの?」
対峙する生物は破界者とはすでに別の形になっていた。両生類を思わせる肌を持ち、骨格があるのかと疑問に思うような滑らかな線の身体つき。時々、皮膚が波打つ。
そして、その体から感じる気配は最初の二体のうちの一体なのだが、その中、注意深く意識を向けるともう一体の気配があった。
つまり、二体は一体へと集合したらしかった。
「ホジイィ!!」
ぐりゅんと生物の腕が伸びて、セラに迫る。まるで蛇だ。
迫りくる腕に対して彼女はオーウィンを振るう。ここまで増殖してしまった状況では、今さら一体や二体増えることに誰も文句は言わない。むしろ、一番の強敵を倒すことこそがこの戦場での第一目標となっているといってよかった。
現に彼女にだけ視線を向けるその生物に、名もなき戦士たちが斬り掛かっている。すべて、目もくれない生物によって返り討ちに会い、血肉を散らしてしまっているが。
「っく……」
彼女の剣は止められた。生物は斬られることなど恐れていないかのように堂々と、フクロウに巻き付いたのだ。
びくともしない。とてつもない腕力。
それが、ふとなくなる。
しかし、セラにとっては予期しないことではなかった。
名のある者たちが皆、この場に向かっていることは感じていたからだ。
きれいに後転した彼女はすぐさま剣に纏わりついた蛇を払い捨てた。そして、蛇を斬り裂いた兄弟子にお礼を言う。
「ありがと、エァンダ」
「気を付けろよ。分かってると思うけど、くっついたぞあいつら」
「うん。分かってる」
「あと一つ。どうやら次の寄生先をご所望のようだ、特にセラ、お前がいいらしい」
「どうしてなの?」
「さあな、女だからじゃないか?」
「ふざけてる?」
「半々」
それだけ答えてエァンダは駆け出した。
彼に少しばかり遅れての到着に大事な人を助ける役目を奪われたズィーが激しい攻防を繰り広げている最中へと。
もちろんセラもその中へ。
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