碧き舞い花
143:向かう先は……
「へぇ、ゼィロスさんが言うならいいよ」
セラは立ち話のままルピに説明した。所々を省きながらも正確に。そして、最後にゼィロスの名前を出したらルピはあっさりと了承してくれた。
「『夜霧』については、イソラ。訊いといて」
ルピは周辺にいる原住民数人に視線を向ける。彼らが『夜霧』の情報を持っているらしい。
「うん、任せて!」
イソラを残し、セラとルピは歩きながら話す。
「だいぶ遠回りだね。別の世界を調べればいいのに」
それはセラには思いつかなかったことだった。しかし、彼女には『夜霧』を探るだけでなく、ドクター・クュンゼの怪物も倒すという目的がある。今さら調査対象の変更はしない。
「『夜霧』だけ壊滅できればいいってわけじゃないから……」
「そうかい。大変だね、あんたも。で、サパルの居場所だね」
サパルというのが彼女の友人の名だ。エァンダと思われる渡界人と共に行動していると思われる鍵束の民。
「最後に報せがあったときにはビュソノータスに向かうと言ってたよ。三日前だ」
「ビュソノータス!?」
「なんだい、そんなに驚いて」
「……一度行ったことがあって……また、行こうと思ってたところ」
「へぇ、なら、急いだ方がいいかもね」
「え?」
「サパルは破界者ってのを追っててね。その破界者ってのは名前の通り世界を壊す」
「……ぁ!」
セラには思い当たる節があった。脳裏にはモーグでの出来事が思い出される。激しく揺れ動き、今ではモーグに跳ぶことはできないでいる。
そこで出会った渡界人の青年は世界が壊れると言及していた。彼女の中であの青年がエァンダだったのだと、確信を持てるようになった。会ったことがあるかもしれないではなく、会ったことがあるのだ。
「破界者を追う任を負ってなかったら、あいつが『鍵束の番人』になるはずだった。つまり、相当な厄介事ってことだ。まだ、サパルから報せがないってことは破壊されてはないだろうけど、あいつとその渡界人でも未だに始末できてないんだから、時間の問題だろうね」
ビュソノータスが壊れる。
蒼白い世界。空も大地も海も。
キテェア、エリン、プライ、そしてジュラン。
浮かんだ全てのものが、彼女の気持ちを囃し立てる。鼓動が早くなり、今にもビュソノータスへと跳び立ちたかった。
「ズィー探して、すぐ行かなきゃ! ありがとうございます、ルピさん!」
セラはルピを置いて駆け出した。
ズィーと別れたところまで急ぐ。到着するとすぐさま感覚を研ぎ澄ます。ピリピリとする頭のうずきをゆっくりと排していきながら、集中を高める。
「いたっ」
知った気配を見つけ、彼女は跳んだ。
跳んだ先は、各々の酒樽を囲む集団から少し離れたとこにある滝を眺める畔だった。酔いを醒ますために多くの人が訪れるのか、畔には空になった酒樽がいくつか置かれていて、そこにズィーとラィラィが並んで座っていた。
「ズィー!」
「お、セラ。酒買ったぞ。あ、ラィラィからバッグ貰った、これスゲェんだ、セラの分も貰ったから――」
訊いている暇などなかった。セラは有無を言わさずに彼の腕を掴んで、ラィラィに一言「またどこかで」と言い残してビュソノータスへと碧き花を散らすのだった。
セラは立ち話のままルピに説明した。所々を省きながらも正確に。そして、最後にゼィロスの名前を出したらルピはあっさりと了承してくれた。
「『夜霧』については、イソラ。訊いといて」
ルピは周辺にいる原住民数人に視線を向ける。彼らが『夜霧』の情報を持っているらしい。
「うん、任せて!」
イソラを残し、セラとルピは歩きながら話す。
「だいぶ遠回りだね。別の世界を調べればいいのに」
それはセラには思いつかなかったことだった。しかし、彼女には『夜霧』を探るだけでなく、ドクター・クュンゼの怪物も倒すという目的がある。今さら調査対象の変更はしない。
「『夜霧』だけ壊滅できればいいってわけじゃないから……」
「そうかい。大変だね、あんたも。で、サパルの居場所だね」
サパルというのが彼女の友人の名だ。エァンダと思われる渡界人と共に行動していると思われる鍵束の民。
「最後に報せがあったときにはビュソノータスに向かうと言ってたよ。三日前だ」
「ビュソノータス!?」
「なんだい、そんなに驚いて」
「……一度行ったことがあって……また、行こうと思ってたところ」
「へぇ、なら、急いだ方がいいかもね」
「え?」
「サパルは破界者ってのを追っててね。その破界者ってのは名前の通り世界を壊す」
「……ぁ!」
セラには思い当たる節があった。脳裏にはモーグでの出来事が思い出される。激しく揺れ動き、今ではモーグに跳ぶことはできないでいる。
そこで出会った渡界人の青年は世界が壊れると言及していた。彼女の中であの青年がエァンダだったのだと、確信を持てるようになった。会ったことがあるかもしれないではなく、会ったことがあるのだ。
「破界者を追う任を負ってなかったら、あいつが『鍵束の番人』になるはずだった。つまり、相当な厄介事ってことだ。まだ、サパルから報せがないってことは破壊されてはないだろうけど、あいつとその渡界人でも未だに始末できてないんだから、時間の問題だろうね」
ビュソノータスが壊れる。
蒼白い世界。空も大地も海も。
キテェア、エリン、プライ、そしてジュラン。
浮かんだ全てのものが、彼女の気持ちを囃し立てる。鼓動が早くなり、今にもビュソノータスへと跳び立ちたかった。
「ズィー探して、すぐ行かなきゃ! ありがとうございます、ルピさん!」
セラはルピを置いて駆け出した。
ズィーと別れたところまで急ぐ。到着するとすぐさま感覚を研ぎ澄ます。ピリピリとする頭のうずきをゆっくりと排していきながら、集中を高める。
「いたっ」
知った気配を見つけ、彼女は跳んだ。
跳んだ先は、各々の酒樽を囲む集団から少し離れたとこにある滝を眺める畔だった。酔いを醒ますために多くの人が訪れるのか、畔には空になった酒樽がいくつか置かれていて、そこにズィーとラィラィが並んで座っていた。
「ズィー!」
「お、セラ。酒買ったぞ。あ、ラィラィからバッグ貰った、これスゲェんだ、セラの分も貰ったから――」
訊いている暇などなかった。セラは有無を言わさずに彼の腕を掴んで、ラィラィに一言「またどこかで」と言い残してビュソノータスへと碧き花を散らすのだった。
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