ある夏の怪談!

内野あきたけ

彼らの深淵は地獄の底まで照らし挙げる。



 悟一は、業丸を払った。
 生き霊は、1歩ずつ、ゆっくりと悟一のほうへ歩いてくる。
 その威圧。


 例えるなら、高熱でうなされたとき、重い巨大な固まりがブラ下がっているような、そして細かいものを見ているようなあの嫌な感覚が1歩ずつ迫ってくるようなそんな過酷な状況。


 だが、彼は生き霊の方向へ自ら進んで行くのである。
 それが、悟一の絶対愛による導きなのだ。


 そして業丸を構える。
「アアアアっ!」
 彼は叫んだ。
 そうして本気で、叩きつけるように、業丸での剣激を喰らわせようと試みたのであった。


 が、しかしその刃を通すことは無かった。
 鈍い音が空中に響き渡り、ギリギリと瞬間イヤな音がしたあとに、彼は、生き霊の背後に回る。
 全く効果が無かった。
 ニヤリと不適な笑みを浮かべ、ただ立ち尽くす生き霊。その凄惨さ。


 悟一はその生き霊と目を合わせた。
 慈悲眼である。
 しかし、彼はすぐにそれを中断した。
「封じられているみたいだ」
 麗之助は悟一を見て呟く。


「やはり、悟一先輩、それ自身とあっちゃ難しい所がありますよね。冷や汗が止まりません」
 藤四郎が顔色一つ変えず、答えた。


「今の悟一は、精神レベルが、最悪に低下している。霊能力だけなら……心霊スポットで悪霊から逃げ惑う若者と同じくらいなんじゃないか?」


「津覇先輩、コワイこと言わないでくださいよ」
「しかし、高い波動である事を、思い出してくれないと、この戦い、少しマズイかもしれない」





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