ある夏の怪談!

内野あきたけ

寂滅!

 奴のその邪悪な異様さ。
 得体の知れない異臭が辺りを包み込むところから想像するに奴は間違えなく強いだろう。
 しかも、普通の悪霊とは格が違うほど性質の悪い心霊だ。


 極めてオーソドックスな邪神だが彼らからしても、張り合えるほどである。
 だが、麗之介たちは慈悲の心という、最大のそして最強の武器を持っていた。


 相手の心の真の平和及び最大の至上を願い、その概念を超越した慈悲は強い。


 麗之介は本来なら絶対に目を合わせてはならないとされる性質の悪い悪霊と故意に目を合わせた。
 そして、ニコッと言った具合に笑みを浮かべると、ソイツは吹っ飛んで行った。


 コレが慈悲眼である。
 だが、効果は見えたものの完全には消滅していないようである。


「来い!」
 と、悟一が経本を構える。


 奴は奇妙な身体をクネらせ、こちらへ素早く向かってきたのである。
 奇妙な姿かたちのソレが、グワッと向かって来る。


「ようこそ。悟りの境地へ!」
 悟一はそう言うと、経本を奴に向かって振り下ろした。


 だがしかし、今度は寸分の差で奴の攻撃が彼に直撃し、吹っ飛ばされた。
「……素早いな」


 悟一は苦笑いを浮かべる。


 「天使の価値観と煩悩破壊の業丸よ!その普遍的な慈悲と絶対的な平和により大いなる自己に力を」
 すると後ろの方でぶつぶつと、何かが聞こえるではないか。


 藤四郎だった。彼は一際異才を放っている刀らしきものを取り出した。
「先輩。コレなんかいいんじゃないでしょうか?」


「はは。これかあ。前に見せてもらったよ。業丸だっけ?」
 と、悟一。


「はい。でもまあ、タルパのようなものですけどねぇ」
「十分だよ」


 悟一は、藤四郎から、業丸を受け取った。



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