ある夏の怪談!

内野あきたけ

『心霊バトル!!』の怪 後半戦

 
 麗之助もまた、悪霊達に囲まれていた。


「高雅 十方世界!!」


 呪文を唱える。悪霊達は面白いようにぶっ飛ばされるのである。


 トンネルの暗闇を二人は駆け抜ける。クラスメイト達はその様子を呆然と眺めていた。


 それもそのはず、ここ「音無トンネル」は半端じゃない霊が集まるアジアでも最も危険なスポットの一つであったからだ。


 心霊の一体でも誰かに憑依すれば霊媒師は骨を折る。


「悟一、さては腕が落ちたんじゃないのか?」


「ばーか。腕ならちゃんとここにあるよ!」


 悟一が腕を振り上げると、その腕に心霊と思われるグロテスクな目玉や口のようなものがたくさん憑依していた。


「ざまあみろだぜぇ」


 麗之助が嘲笑う。そして悟一は呪文を唱えた。


「三毒崩壊!」


 光が発せられ、霊は悟一の体内から抜け出した。


「お前を成仏させてやる!」


 悟一は経本を構えて一気に降り下ろす。心霊は光となって成仏していった。


 トンネルの暗闇を二人は駆ける。目指すはより強力な心霊。中でも強い怨みによって人に害を与える悪霊だ。


「さあ!二人の勝負は終盤に差し掛かりましたあ!ここに来て霊感が強い人は分かるのではないでしょうか?正直、私の足も震えております、そう!音無の悪霊!強力な心霊の気配があるのです!」


 ここを支配しているラスボス的存在の心霊がいる事に二人は気付く。


「なあ。気配がしねぇか?悟一」


「ちょっとは手応えがありそうだな」


 二人はビデオカメラを取り出した。


 遊び半分でここへ来てしまった若者、という雰囲気をかもしだしばがら霊を冒涜するフリをし、誘きだそうという作戦を考えたのだ。


「うわー。ここめっちゃ恐いやん!はっはッはぁ!」


 悟一が心霊を嘲笑う。


「お前なにビビってんだよ。霊なんてここにはいるわけねぇだろ?もしいたらどうする?怖ぇだろ。ハハハ」


 すると辺りが少し寒くなった。そして全身の血液がジワジワとここにいる事が危険であると伝えるのだ。


 次の瞬間、どす黒い影が一瞬通りすぎ消えた。霊感が強いと、この時点で引き返す生徒が何人か出てくる。


 司会の吉方よしかたさんに帰りたい!と告げるのだ。


 懸命な判断だ。


「さて、危険さゆえにここで帰ってしまう生徒の数はかなり増えているようです!悟一、麗之助、二人とも大丈夫なのであろうか!ここで二人を応援してやってください!」


「頑張ってぇ~八雲さまあ~!」


「負けるなぁ~麗之助さまあ~!」


 どうやら、ここのラスボス的存在の心霊は女の悪霊らしい。


 バサバサの黒髪で顔を隠し、四肢や首を異様な方向へねじ曲げ、血のような異臭を発しながら、ものすごい早さで麗之助に襲いかかった。


 普通なら襲われた方が恐怖するのが当然だ。


 しかし、二人の場合その真逆だった。


 麗之助が軽く「よっしゃあ!勝った!」と言い、悟一が「ちくしょう!あいつの手柄になっちまうのかよ!」と悔しがるのだ。


 案の定、悟一は女の悪霊に掴みか掛かった。


「なぜ麗之助を先に呪い殺そうと思ったんだ?まあお前にゃそんな事出来ないがな……なに?彼の方が好みのタイプだった?ふざけんな!」


 すると、女の悪霊はその飛び出した眼球を露にして、悟一を呪い殺そうと試みる。


 普通なら目を合わせてまった時点で、人間は失神してしまうのだが悟一はそうではなかった。


 逆に悪霊と目を遇わせる事によってそいつを成仏させる彼の得意技『慈悲眼じひがん』を使ったのだ。


「ううっ!」


 と女の悪霊は悲鳴をあげる。


「なに?お前は慈悲眼を使えたのか!ズルいぞ、俺だって!」


 そう言って麗之助もまた慈悲眼を発動する。


「おーと!ここで二人の慈悲眼が発動されたあ~!これはダブルパンチだぁ!」


「きゃー。きゃー。かっこいい~!」


 女の悪霊は見事に成仏してしまった。


「はい!結果、観ての通り第44回心霊スポット霊力対決は二人の引き分けとなりましたぁ。我々のヒーロー!二人共に盛大な拍手をお送りください!」


「わー!わー!パチパチ」


 と、いうことで第44回心霊スポット霊力対決は引き分けとなった。



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