ある夏の怪談!
『病棟にて』の怪④
二階、
麗之助と柚華は壁に手をついて探し回ったがやはり悟一は見つからなかった。
「おかしいな。悟一のやつケガして瀕死のはずだから、あまり動けないはずなのに」
「病棟の一階と二階を探し回っても見当たらない?」
「そうだ」
その時だった。霊感が強かった二人は、物凄い妖気を感じたのである。
「分かるか?この感覚」
「ええ」
「ちょっと頼みたい事があるんだけど……」
十分後、
柚華は女子トイレに隠れていた。
悪霊はその事実を見逃さなかった。
トイレに隠れるという、いかにも有りがちで、かつ、危ない方法で悪霊から逃げられるとでも思ったのであろうか?
悪霊は扉を一つづつ確認していくのだ。
最初、一番目の扉が開かれた。
柚華の心臓が止まりそうになる。
次、二番目。
その時だった。
悪霊が扉を開けた瞬間に何かのヒモが切れた。
そして、飛び道具のように悪霊退散のお札が飛んできたのである。
だが、悪霊はそれを全て打ち払った。
「そんな小細工が、このワタシに通じてたまるか!人間!!次は三番目の扉か」
とうとう三番目の扉が開かれた。
しかしそこに柚華は居なかった。
「残念。用具室よ」
彼女は用具室の扉を蹴り開けた。
「……っーーーーぁあああ」
用具室は悪霊よりも後ろにあるため、柚華は悪霊の背後から経本を振りかざす。
見事、悪霊は消滅したのである。
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