ある夏の怪談!
『病棟にて』の怪③
麗之助が呪文を唱えると、悪霊の体から光が発せられた。
「……っーーーーぁあああ!」
悪霊は叫んだ。
だが、奴は負けてはい無かった。悟一の生き霊は悟一にしか倒せない。
奴は動けないだけで、その内面には他のどんな悪霊にも勝る恨みや負のエネルギーを持っていた。
「……入るか。柚華、それとも君は外で待ってる?」
「この数の悪霊は、私には倒せない。本当に申し訳ないけど私はここで待ってるわ」
「ああ、そうした方がいいと思うよ」
そう言って麗之助は病棟の暗闇に溶けていった。
「…………待って!!」
声が、聞こえた。
「どうした?」
「私も、やっぱり連れてって」
柚華が言うと、麗之助は少し微笑んだ。
「ああ、もちろんだ」
そして二人は、暗闇に消えていくのである。
一階、何処と無く胞子のような臭いが漂う。
外はもう黒く、懐中電灯なく辺りを見渡す事は出来ない。
「悟一はどこにいるんだ?いったい。本当にここか?」
「わからないけど、隅々まで探しましょう?」
すると突然、何かの音が聞こえた。
遠くの方に聞こえる、足音みたいだ。
悟一の足音ではない。
それが段々、二人の方へ近寄ってくる。
「低級霊か?」
麗之助が呟いたその時だった。
「きゃあ!」
柚華が叫んだ。
照らされた懐中電灯の光で一瞬だけみてしまった。
「……私たち、囲まれている」
部屋一面にびっしりと悪霊達のおぞましい顔があった。
柚華はぎゅうっと麗之助の手を握った。
そして二人はお互いに自分の後ろを守るように背中合わせになる。
「……どうしよう。四方八方、たくさん」
「……これはこれは恐ろしですな!全く馬鹿みてぇな集団だ。俺たち二人だけの為にわざわざここまで追い込んできてくれて、正直、ここまでうまくいくとは思わなかった。」
「ええっ?どういう事?」
と、柚華。
「柚華も気づいただろ?ここに来る間、経本を広げておいたんだよ。つまり、俺たちは悪霊に囲まれているが、悪霊たちもまた、経本に囲まれているんだよ」
そう言って麗之助は、あらかじめ経本につけてあった紐を引き始めた。
するとビラビラとそれが輪を描いて一網打尽に悪霊たちを捉えたのである。
「俺の作戦勝ち、と言うわけだな」
「……っーーーーぁあああ!」
悪霊は叫んだ。
だが、奴は負けてはい無かった。悟一の生き霊は悟一にしか倒せない。
奴は動けないだけで、その内面には他のどんな悪霊にも勝る恨みや負のエネルギーを持っていた。
「……入るか。柚華、それとも君は外で待ってる?」
「この数の悪霊は、私には倒せない。本当に申し訳ないけど私はここで待ってるわ」
「ああ、そうした方がいいと思うよ」
そう言って麗之助は病棟の暗闇に溶けていった。
「…………待って!!」
声が、聞こえた。
「どうした?」
「私も、やっぱり連れてって」
柚華が言うと、麗之助は少し微笑んだ。
「ああ、もちろんだ」
そして二人は、暗闇に消えていくのである。
一階、何処と無く胞子のような臭いが漂う。
外はもう黒く、懐中電灯なく辺りを見渡す事は出来ない。
「悟一はどこにいるんだ?いったい。本当にここか?」
「わからないけど、隅々まで探しましょう?」
すると突然、何かの音が聞こえた。
遠くの方に聞こえる、足音みたいだ。
悟一の足音ではない。
それが段々、二人の方へ近寄ってくる。
「低級霊か?」
麗之助が呟いたその時だった。
「きゃあ!」
柚華が叫んだ。
照らされた懐中電灯の光で一瞬だけみてしまった。
「……私たち、囲まれている」
部屋一面にびっしりと悪霊達のおぞましい顔があった。
柚華はぎゅうっと麗之助の手を握った。
そして二人はお互いに自分の後ろを守るように背中合わせになる。
「……どうしよう。四方八方、たくさん」
「……これはこれは恐ろしですな!全く馬鹿みてぇな集団だ。俺たち二人だけの為にわざわざここまで追い込んできてくれて、正直、ここまでうまくいくとは思わなかった。」
「ええっ?どういう事?」
と、柚華。
「柚華も気づいただろ?ここに来る間、経本を広げておいたんだよ。つまり、俺たちは悪霊に囲まれているが、悪霊たちもまた、経本に囲まれているんだよ」
そう言って麗之助は、あらかじめ経本につけてあった紐を引き始めた。
するとビラビラとそれが輪を描いて一網打尽に悪霊たちを捉えたのである。
「俺の作戦勝ち、と言うわけだな」
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