ある夏の怪談!

内野あきたけ

亜死というアヤカシ 後編

 沈みかけた日差しが奴を照らしている。


 十年前と同じ夏の夕暮れだった。


 いつ死ぬかは分からない。


 自分が死ぬために、人間と殺しあいをする史上最悪の悪霊の名を「亜死アシ」といった。


 だが奴の霊力はあまりにも強大で、この600年間、一度も奴を倒した者はいない。


「久しぶりだな。麗之助」


「おう、亜死よ」


 麗之助は手の中の経本を固く握りしめていた。


「死にかけるということが、本当の生命なんだろう?」


「ああ!では、早速。殺しあおうではないか!」


「いいだろう、ぶっ潰してやる!」


 そう言って麗之助は経本を構えた。


 突然、亜死が腕を振り上げると、どす黒い蛇の影が現れる。


「……強いかも知れねぇ」


 麗之助はそう吐き捨ててうねうねと動く、黒い束となって襲って来る蛇を切りつけた。


 そして蛇は千切れ、地面に落ちる。


 だが亜死は、すぐに麗之助の後ろに周り、蹴りを入れてきた。


 回し蹴りは見事に直撃しそのまま飛ばされた。


「ううっ!」


「どうした?そんなに弱ければ、一方的に殺してしまうではないか。殺しあいにはならないぞ!」


 そう言って、足を上げて踏みつけようとした。


 だが


「……三毒崩壊!」


 突然、麗之助が経本を振り上げた。


 すると亜死の身体に亀裂が生じた。


「……っあああ!」


 奴が叫ぶ。


「いいぞ!」


 そして、麗之助がゆっくり立ち上がる。


「麗之助、お前はどこで戦いを覚えた?」


「さあな」


 次の瞬間、亜死は突然姿を消した。


 奴が襲いかかって来ると思いきや、一向に姿を表さない。


 彼は思った。


「……俺の油断を狙って、襲ってくるつもりだな。奴が逃げ出した。そう思って緊張を解いた瞬間、俺は確実に殺される。でもどっちにしろ、奴を倒さなければ」


 そして彼はいかにも勝ち誇りましたよっていうオーラでウヌボレながら帰ってしまうフリをした。


 そういう油断を亜死は見逃さなかった。


 それが演技だと分からなかった奴は姿を表した。


「緊張を解いたのは、お前の方だったな!」


「何!?」


 麗之助は経本を振り上げた。


「……寂滅!」


 そして亜死は真っ二つになってしまった。


「ぐぁあ!」


 半分になった亜死を見て、麗之助は地面に座り込んだ。


「……終わった」


 その時だ。


 奴の右半分が消えているのを目撃する。


「……かかったな」


「っあ!しまった」


 真っ二つになった体から降り下ろされた爪によって、麗之助の肩が切りつけられた。


 奴は体が千切れても動けたのだ。


「うっ!」


 肩から血が吹き出した。


 しかし、彼は亜死に向かって経本を投げる。


 ビラビラと蛇腹に折られた経本が開かれる。


「ぐぁぁああ!」


 奴は力なく地面に倒れた。


 麗之助の傷は浅かった。


 立ち上がったのは、麗之助の方だった。
























「……これから何時までも、か」



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