ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第五十五話 竜司、D1GPに出場する

「こんばんは、今日も始めて行こうか」


「うん」


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その男はグレーのジャケットを羽織っている。
身なりから金持ちそうな長身の白人が三兄弟と駆流の間に入った。
たまらず止まる双方。


「うおっ」


「うわっ! 何だよオッサン邪魔すんな……って外人じゃん!」


「サキから見てマーシタ。
何ヤラ因縁がアルヨーデースネ」


「そうだよ、今からこの三人をブッ飛ばすんだから邪魔すんな」


「ドラゴンを連レテイル所を見ルトドラゴンテイマーなのデースカ?」


「ドラゴンテイマー?」


僕も会話に加わった。


「オヤ、アナタもドラゴンテイマー……オット失礼。
ドラゴンテイマーとは日本デ言ウ所の竜河岸デース」


そう言えば竜は世界中にいるんだった。
海外では竜を使役する人をドラゴンテイマーと言うのか。


「で、貴方は?」


「アァ、申シ遅レマシタ。
私コーユーものデース」


その外国人が名刺を差し出す。


ピクシー CEO
モブリアン ジョンソン


何故かカタカナで書いてあった。


「我ガピクシーが日本進出スルタメに作成シタ日本向ケ名刺デース」


「あ、そういう事ね。
それでモブリアンさん……」


「モブで良いデース」


「あ、ハイ……ではモブさん。
駆流たちに何か用ですか?」


「ハイ……私コノ喧嘩を止めたいデース」


「何だよ。
何も知らねぇくせに余計な事すんな」


駆流が噛み付く。


「チョ……チョト落ち着イテ下サーイ。
オ互イドラゴンテイマーですヨネ?
コノママここで争ッタらドーナルかワカリマスカー?」


「え……」


駆流が驚いている隙を茂部空気もぶそらきが捉えた。


「そうだなぁ、俺らも竜を使ってとことんやってやる気だ。
そんな事をすれば一般市民に迷惑がかかるなあ」


茂部空気もぶそらきはニヤニヤしている。
僕はピンと来た。
要するにこいつら今日は帰りたいんだ。


「うぐっ……」


駆流はそこまで考えてなかったと驚きの表情を見せる。
僕ももう少し敷地を設けている公園だと思っていたからそこまで考えが及ばなかった。


「デモソレデお互イノ因縁ガ消エナイのも解リマース。
ソコデ!」


モブが人差し指を立てる。


「コノ勝負、ワタシに預ケテ下サーイ!」


「何?」


僕、駆流、三兄弟ともに同じ声を上げた。


「ワタシアメリカで映画セーサク会社を営ンデイルノデスガ、
来日シタ理由は新事業の立チ上ゲのタメナンデース」


「はぁ」


僕らはとりあえず話を聞いている。


「ドラゴンを使ッタ新事業を考エテマシテ……
ドウダロウ! オノオノ竜に跨ッテ速サを競ッテミテハ!」


「は……?」


「名付ケテD1グランプリ!
場所は鈴鹿サーキットで!
数日オ時間を頂ケレバ段取リは全てワタシがヤリマスノデ。
モチロン賞金も出シマース」


「それでそのレースに参加する事で俺たちに何かメリットはあるのか?」


茂部空気もぶそらきは尋ねる。


「ドキュメントPVの撮影も予定シテイマースノでギャラはダシマース」


「いくらだ?」


モブが空気そらきに耳打ちをする。


「……それは一人の値段か!?」


「YES」


モブがニコリとほほ笑む


「いいだろう! そのレース我ら茂部三兄弟は乗った!」


茂部空気もぶそらきが勝ち誇った顔をしている。
一体いくらと言われたのだろう。


「おい空気そらき兄、大丈夫かよ」


せん小石しょうせきが心配そうに見つめる。


「おいお前ら耳を貸せ……で……が……だろ?
だから……わけだ」


この耳打ちを聞いた二人も汚い笑い顔を見せる。


「俺達も乗ったぜ!」


「おいおい、話を勝手に進めるなよ。
俺はまだそんなレース参加するなんて言ってねえぜ」


駆流が割って入る。


「君はカケル君ダネ?」


「あぁ、そうだよ」


「オー! 会えて嬉シイデース。
ソージとは昨日もハナシシマーシタ……」


モブの話によるとモナコGPを駆流の父親がとった時から大ファンになり
今ではチームの筆頭スポンサーで、父親とも親友だそうだ。


「デハ四日オジガンをイタダキマース。
四日後の十六時半に鈴鹿サーキットにキテクダサーイ」


「よし! 了解した。
では四日後楽しみにしているぞ!」


茂部空気もぶそらきは堂々と言い放ち踵を返す。
そして弟二人を連れて早足で去って行った。


「オイ! コラ! 待てっ!」


駆流の制止も無視して早々に三兄弟は去って行った。


【レースなんて怖いなあ……ぶつかってきたりしない?】


マッハが少し震えている。


「何言ってんだ! マッハ! やるからには絶対一位だ!
竜兄りゅうにぃには悪いけどここは負けらんねぇ」


「え?」


何故か僕も出る事になっていた。


「ちょ、ちょっと待ってよ。僕も出るの!?」


【何だ? 何か出るのか?】


「ソーデース! ドラゴン同士のレースデース!」


【レース?】


「ソーデース! 広いサーキット場で速サを競ッテイタダキマース!」


ん? 僕はこのやり取りに違和感を覚えた。
何でこの人竜のガレアとコミュニケーションが取れているんだ?


「ちょ、ちょっとモブさん!
あなたガレアの言ってる事が解るんですか!?」


「ワタシ元ドラゴンテイマーですノデ
竜の言葉はワカリマース」


「元? あぁ、子供に竜は譲ったって事ですね」


「ワタシ独身デース」


「え? じゃあ元ってどういう事ですか?」


「……ワタシのドラゴンはシニマシタ……」


会ってからずっとニコニコしていたモブの顔が重く
そして暗くなった。


「え……それってどういう……」


僕は驚いた。
竜と言うのは寿命以外では死なないと思っていたからだ。
永久機関に近い魔力を有する生き物だ。
事故とかで死ぬわけがないと思っていた。
だがそれは間違いだったらしい。


「少シ長い話にナルケドイイカイ?」


僕は頷いた。
竜が死ぬ。
それがどんな状況だったのか気になったからだ。


「僕ハネ、アメリカのドラゴンテイマーの家庭で育ッタヨ……
ファーザーから受け継イダドラゴンデネ。名前はジュズ」


僕は黙って聞いていた。


「ファーザーがテイマーの頃カラ仲良クテネ……
マルデ兄弟のヨウダッタヨ」


「今思エバ行カナケレバ良かッタンだけど、
ジュズを受け継いで一年グライした時
僕は世界を回リタイと思い立ッテ
ジュズと旅ニ出タンダ」


規模は違うが僕とガレアに似ているなと思った。


「マズは南米からアフリカに渡って
ソコカラ北上してヨーロッパを回った。
もちろん他のドラゴンテイマーとバトルもシタヨ。
でも僕とジュズのコンビは無敵で負け知ラズダッタンダ……」


ホントに僕とガレアだ。


「ダケド……」


ここからモブが震え出した。


「ヨーロッパから中東ニ行ッタ時……
僕らは地域ノ紛争に巻き込マレタンダ。
僕とジュズはソコデモ無敵ダッタヨ……一人ヲ除イテハネ……」


「相手側にアイツがいたのが僕の不運ダッタンデス……
アレは悪魔ダ……」


僕はこの反応に覚えがあった。


「アノドラゴンテイマーは悪魔だ……あの八つノ尾……」


やはり。
僕は合点がいった。


「それは高位の竜ハイドラゴンロードの衆。
八尾ロードエイスじゃないですか?」


モブの目が変わった。


「キッ君は知ッテイルノカ!? アノ悪魔を……」


「いえ知り合いの竜河岸に聞いただけです……」


それを聞いたモブは少しホッとしたようだ。


「ソウカ……」


「その知り合いの竜河岸もモブさんと同じような反応でしたよ。
一体どんなスキルを使うんです?
その八尾ロードエイスの竜河岸は?」


そう尋ねるとまたモブが震え出した。


「スキル?
ソンナものは使ッタノカどうなのかも解ラナイヨ……
ただあの悪魔がいるダケデ周りは暴風デ吹キ荒レル……
一m先も見エナイ状でデ立ツノモやっとの状態……
僕とジョズは懸命に戦ッタヨ……」


モブを見ていたら僕も震えてきた。


「ソシテ僕はバトルの途中で気を失ッタンダ……
目覚メタラ辺りは酷イ有様ダッタ……
鉄屑にナッタ戦車が地面に何台も刺サリ
ソノ地面はバトルが始マッタ時ニは砂の色ダッタノニ
汚イ赤色に染マッテイタヨ。
シカモ死体を見ルト向こう側の兵士も混ざっテイタ」


おそらく無差別に攻撃したのだろうと僕は理解した。


「僕は泣キナガラジョズを探シタンダ……
デモ僕の声に反応スルモノは何も無カッタヨ……
僕は衰弱しきってまた気を失ッタ……
そして起キタラ野営病棟サ」


僕はかける言葉が見つからなかった。


「ソコの医者に言ワレタよ。
アレに出会って生き残るのは珍しいって」


ようやく話し終わり落ち着いたのか、モブはこちらを向いて少し笑った。


「君……名前は何テ言うのカナ?」


「……竜司、皇竜司すめらぎりゅうじです」


「じゃあリュージ……
モシこれから先出会ウ事があったら逃ゲル事を考エナヨ……
アノ人間災害マンディザスターは悪魔ダ」


人間災害マンディザスター?」


「中東で呼ばれていたその悪魔のニックネームダヨ。
日本語で言ウト人間災害ダネ」


人間マン……災害ディザスター……」


僕は凛子さんに聞いた時は五万人もいる竜河岸の中でそんな奴に出会う訳がないとピンと来ず楽観的に聞いていたが、
こう実際に遭遇した話を聞くと実感が沸いてきた。
何というか八尾ロードエイスがこちらに一歩近づいて来た。
そんな感じがした。


「オオット! カケルを置イテキボリにしてスマナイネ!」


モブは急に明るくなった。


「何だよ。二人で話し込んで……
まあ竜兄りゅうにぃが話したいならしょうがないけどさ」


「カケルー? ソージに負ケナイ走リを四日後に楽しみにシテイルヨー」


「おうよ! 見てろ!
俺は父さんも超えて本物の世界最速の男になるんだ!」


駆流が息巻いた。


「ソノ意気デース」


二人が盛り上がっている所携帯の着信音が響いた。


「ホワット!? チョット失礼シマース……」


何やら英語で話しているモブ。


「ソォーリーカケル。
仕事が入りまシター。
出来レばレーコにも会いたかったんデスガ僕はモウ行かナイトイケマーセン」


「いや、家来ても母さん仕事中だから」


駆流が冷静に切り返す。


「オッと失礼。
今日はホリデーでは無かったデースネ。
ソレではリュージ、カケル、イッテキマース」


そう言い残しモブは去って行った。


###


「はい今日はここまで」


「パパ? 八尾ロードエイスってそんなに強いの?」


「そりゃ歩く災害だからね」


「ふうん」


どうもたつは人間が災害って言う所がピンと来ていないらしい。


「じゃあ今日はもうお休み……」


バタン






          

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