ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第五十三話 ガレア、竜司と家電量販店へ

「やあ、こんばんは。今日も始めて行こうか」


###


夕飯を頂き、その日は早々に寝てしまった。
あんな話をしたせいか、風呂の後駆流からのげゲームの誘いは無かった。


翌朝


僕らは朝食を御馳走になり、出かける準備をしていた。
行先は昨日と同じ星の広場だ。
出かける前に駆流の部屋を訪ねた。


トントン


「駆流―? ちょっと話があるんだけど」


「にーちゃん、ちょっと待ってくれよ」


何やらバタバタ音がして数分後駆流が出てきた。
中学はブレザーらしい。
ネクタイがひん曲がっている。
僕はネクタイの結び方なんか知らないのでとりあえずそれはスルーした。


「今日からお願い。辛いだろうけど」


「わかったよ。金も必要最低限しか持ってない」


ピンポーン


「あ、華穏が来た。じゃあ行ってくるわ」


「待って、僕も一緒に出るよ」


玄関を開けて外を見ると門の前に華穏が立っている。


「おはよう駆流、すめらぎさん」


「おはよう」


「うす」


ぶっきらぼうな挨拶をしつつ、門を開けるなり華穏が駆流に近づく。


「もー、駆流ってば入学して大分経つのにまだネクタイも絞めれないの?」


華穏は駆流の首元に手を伸ばしきちんとネクタイを締め直す。


「華穏、毎朝毎朝止めろよな。女にこんな事してもらってるって恥ずかしくってしょうがねぇ」


「ほら、もうちょっとだから暴れない……はい出来た」


「何か華穏は駆流の奥さんみたいだね」


二人ともまるで緑のトマトが超スピードで赤くなるビデオのように顔が真っ赤になった。


「ばばばっ!
馬鹿な事言ってんじゃねーよにーちゃんっ!
なんで俺がこんなブスとっ!」


「そーですよっ!
すめらぎさんっ!
何でこんな乱暴な奴とっ!
って駆流! 誰がブスよっ!」


ガン


華穏が持っていたカバンで頭を叩く。


「いってぇ! 何すんだ華穏!」


「あんたがブスって言うからよっ!」


二人とも駆流の家の前でいがみ合っている。


「まあまあ二人とも。学校は大丈夫?」


「あっ! やっべ遅刻だ! 行くぞマッハ、華穏!」


駆流は走り去っていった。
自分の足で走っても速いのか。


「駆流―、待ってよー」


マッハと華穏も急いで後を追う。


「朝から元気だねガレア」


【これは駆流があの女の事スキって事なのか?】


「僕はそうだと思うんだけどね。
どちらかというと華穏側が」


【ふうん】


そんな会話をガレアとしながら僕らは昨日行った星の広場を目指した。
星の広場に到着し、すぐに魔力注入インジェクトの練習を始めた。
練習の時間はすぐに過ぎ、お昼になった。


「ふう、そろそろ帰ろうかガレア」


【竜司、お前練習は良いけど何回気絶するんだよ】


「しょうがないだろ。まだ慣れてないんだから。
でも持続時間が一分ぐらいにはなっただろ」


【まあいいや、竜司ハラヘッタ】


「ったくガレアはしょうがないなぁ」


いつもの通り駅に戻り、スマホで検索。


三重 食べ物


ふむふむ
“しぐれ肉巻きおにぎり”
これが良さそうだ。何処で食べれるんだろ?
瑞球志ぐれ茶屋って所だけらしい。
駅前に店舗があるそうだ。


「ガレア何が食べたい?」


【肉】


ガレアは肉とばかうけさえあったらいいのか。
まあいいか。
しぐれ肉巻きおにぎりは桑名って所の名産らしい。
僕らは桑名駅を目指した。


電車の中。
ガレアに聞いてみた。


「そう言えばガレアって何歳なの?」


【五千から先は覚えてねえ】


「え? だって自分の年だろ? 何で覚えてないの?」


【竜は人間みたいに百年弱で死んだりしねぇからなあ。
数えるのがめんどくさくなるんだよ。
アステバンでやってたみたいなお誕生日なんて祝ったりしねぇし】


「じゃあ、いつ生まれたなんかも知らないの?」


【知らね】


「そう……」


この話はここで終わった。
僕は何か長く生きるという事について考えてしまい、黙ってしまった。


竜。
寿命は二万年。
永久機関に近いエネルギーの魔力を有する。
親は居るが単一。
子を産む時は体内の魔力を合成するらしい。
そして死ぬ時は風化。
寿命の長さからか魔力の万能さからか自分自身が生まれた事には執着が無い。
故に自分の誕生日も知らない。


何となく僕は寂しくなった。


(桑名―、桑名―)


「あ、着いた。ガレアここだよ降りよう」


駅から出た僕はスマホで場所を確認。
スマホのマップを頼りに店に向かう。
すぐに到着。


瑞球志ぐれ茶屋


店内で食べれると思ったら弁当屋だった。
まあいいか。


「すいませーん」


(いらっしゃーい、何にしましょう?)


「しぐれ肉巻きおにぎり下さい」


(お客様竜河岸でしょうか?
それでしたら新製品のドラゴンしぐれ肉巻きおにぎりがありますが)


「じゃあ、普通のしぐれ肉巻きおにぎり二つとそのドラゴンしぐれ肉巻きおにぎり三つ下さい」


(か……かしこまりました。
普通のしぐれ肉巻きおにぎり二つとドラゴン三つですね)


何やら店員が驚いている様子で奥へ消えていった。
すぐに奥から出てきた。
何やら普通の大きさのおにぎり二つとサッカーボールぐらいの大きさのおにぎり? を持ってきた。


「これが……ドラゴン……」


(はい……ドラゴンです)


「ちょ、ちょっと待って下さい。
おーい! ガレア!」


【何だ竜司】


「ちょっとこれ持って」


そのサッカーボール大のおにぎりらしきものをガレアに渡した。


【なんだこりゃ? でっけえなあ】


「後二つ来るから」


(よろしいんですか? お客様)


「ええお願いします」


また店員が奥へ消えていった。
両脇におにぎりらしきものを抱えて店員が戻って来た。
店員が日焼けして若いせいか部活帰りのようにも思えた。


「はいガレアこれも持って」


【何だ竜司。今日の昼飯は豪勢だなあ】


豪勢、確かに。
今日の昼飯は全部で一万六千円。
普通のおにぎりは千円。
ドラゴンおにぎりは一つ五千円もした。
購入し外へ。
駅前のロータリーで昼御飯だ。


「じゃあ食べようかガレア」


【これどうやって食べるんだ?】


「包みを取ってかじればいいんだよ」


僕が最初に食べて見せる。


【何だそれでいいのか】


このしぐれ肉巻きおにぎり。
何とも不思議な味だ。
最初に甘辛い肉の味がするが、後で物凄い磯の味が僕の舌を包む。
これは美味い。
この肉とあさりの味のコンビネーションが上手くマッチしている。
僕は美味いと思うがガレアはどうだろうか?


「ねえガレア。どう? このおにぎり」


【肉うめぇな】


どちらかと言うとあさり側の方が主役だと思うのだが。
ガレアはどうやら甘辛い肉がお気に入りの様だ。
僕らはおにぎりを食べ終わり四日市に戻る事にした。


四日市


僕は昨日聞いたゲームセンターで茂部兄弟を待つことにした。
だがまだ下校時間までは時間がある。
ゲームセンターの前に電気屋に行く事にした。


オジマ 四日市店


【何だ電気屋に何の用だ?】


「ちょっと居るものがあるんだよ。
でもガレアよくここが電気屋ってわかったね」


【お前に会う前よく来てたんだよ】


何となく嫌な予感はしたが、しょうがない。
僕は店内に入る事にした。


「ええと、ボイスレコーダーボイスレコーダー……二階か……」


ガレアは来慣れているせいかキョロキョロしているものの比較的静かだった。


オジマ 二階


「ええと……あった」


ボイスレコーダー売り場


僕がここに来たのは確たる証拠を録音するためだった。
少しでも集音範囲が広いものが良い。
商品の下にある説明書きを見て回った。


「ん?」


陳列棚の中間ぐらいにある商品に目をやる。


オニー ICD―XS1000


「何々? 指向性高性能集音マイクにより、集音範囲三十m!? すげぇ」


これだ。これにしよう。


(ありがとうございましたー)


「さあ行こうガレア……ガレア?」


ボイスレコーダーには興味も示さなかったガレアが柱の一点をずっと見つめている。
その柱にはこう書いてあった。


店内図


嫌な予感が的中した気がした。


「ねえ? ガレアどうしたの?」


【竜司っ! ここに行きたいっ!】


ガレアの指はおもちゃ売り場を指している。
何の迷いもない。


僕は少し考えた。
確かにおもちゃ売り場は久しぶりだ。
最近の動向も知っておきたいとも思う。
僕は誘惑に負けた。


「しょうがないなあ、ちょっとだけだよ」


僕とガレアはおもちゃ売り場に向かった。


おもちゃ売り場


さすがおもちゃ売り場は華やかだ。
僕らは真っ先に特撮コーナーへ。
こういう時、趣味が一緒だと話が早い。


【アステバン……アステバン……ねえな】


「そりゃそうだよ。アステバン自体何年前の作品だと思ってるの。今はアレさ」


僕が顎をしゃくって示した方向には最新の二つの作品の商品が陳列されていた。


仮面ライダー修羅
オーガレンジャー


この二作品はともに問題作と言われている。


まずオーガレンジャー。
いわゆるスーパー戦隊と位置づけられる作品だ。
なまはげがモチーフらしく五人とも顔が怖い。
しかもリーダーのオーガレッドの声がかなりハスキーでキメ台詞を言うのだ。


泣く子は居ねぇか!?


これを見て泣く子が続出しているらしい。


続いて仮面ライダー修羅。
これはオーガレンジャー以上の問題作。
特に戦闘シーン等はいつものお約束を守ってはいるのだが敵は人類で主人公は食人。
つまり人を食べるのだ。


第二話で自分の祖母を食べるのだが、そのシーンがかなりショッキングでワイドショーとかにも取り上げられたほどだ。


僕としてはオーガレンジャーのキメ台詞もレッドが言うとカッコイイと思うし、仮面ライダー修羅に関しては黒を基調としたデザインが好みだ。


「ガレア、フィギュアの方ならアステバンあるかもよ」


【わかった】


フィギュア売場。


売場のショーケースを覗く。
目線ラインにアステバンが飾ってあった。
何だかんだ言って今も新作が出るほどの人気だ。
これぐらいの扱いでも不思議はない。


「おおっ!」


【おおっ!】


二人とも同時に声を上げた。
というのも飾られていたアステバン。
最終話「太陽と共に」のアステバンを忠実に再現している。
ボロボロ具合が物凄くリアルだ。


【カ、カッコイイ……なあ! 竜司これ欲しい!】


「無理だよ。これは非売品だからね。買えるなら僕も欲しいよ。そろそろ時間だよ行こう」


【うーん……欲しい……】


ショーケースの方向をずっと見ているガレアを引きずって僕は外に出た。


###


「はい、今日はここまで」


「ねえパパ? 仮面ライダー修羅って僕聞いた事無いよ」


「だって今から三十年以上前の話だし、当時も三カ月で打ち切りになった曰く付きの作品だからね」


「僕見たい」


たつがもっと大きくなってから見ると良いよ」


「うん」


「さあ、今日はもうお休み……」


バタン

          

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