ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第二十二話 ガレア「好き」を知る

「やあ、こんばんわ。
今日は初デート前日までだったね。
でも冷静に考えるとアメ村もデートなんだけどね」


「うん、僕もそう思ったー」


たつは日に日に賢くなるなあ。
じゃあ今日も話して行こうか。


###


僕は昨日泊まったシティホテルのベッドで目覚めた。
すぐに昨日の事を思い出したよ。
そして鼻を擦った。


「蓮と……」


僕は朝のせいか蓮とそうゆう行為に及ぶ所を想像してしまい、顔を赤くしていた。


「さあ、起きてガレア」


【……カンナー】


またコイツ……って思ったけど、すぐに考えを改めたよ。
だって僕は昨日の別れ際の蓮に萌えていた事を思い出したからね。


「フンフーーン♪」


僕はその時の蓮の仕草を思い出し、鼻歌交じりで準備した。
デートってこんなにウキウキするもんなんだって思ったよ。


昨日蓮と一緒に選んだ服を着て鏡の前に立つ。


「どう? ガレアおかしくない?」


【竜に何聞いてんだ?俺らに服なんか無いっちゅーの】


すっかり目を覚ましたガレアはめんどくさそうにそう答える。


「そっか、じゃあこれで行こうか! よしガレア行くぞ」


僕は気合を入れ身支度を済ませ部屋を後にした。


【なあなあ竜司。今日はどこ行くんだ?】


今日行く所はガレアも楽しめるだろう。


「遊園地って所さ」


【遊園地?】


ガレアがキョトン顔になった。


「色々な乗り物があってすっごい楽しい所だよ。
確かアステバンの二十六話でもAパートで行ってたでしょ?」


【ああ! あのタテだかヨコだかにグルグル振り回されるやつな!】


確かアステバンのTV放送は昭和後期だからまだUSJが無い頃だ。


「しかもだよガレア。
今日行く所はそんな所よりももっと新しい乗り物がたくさんある場所なんだ」


【何か楽しそうだな! 竜司!】


「だろ?」


僕らが大阪駅に着いたのは午前九時半。
待ち合わせよりも三十分早かった。


「ちょっと早く来すぎちゃたかな?」


そんな事を考えてると地下鉄の階段の方から声が聞こえる。


【だから勝負下着をつけたのかって聞いてんのよう】


「うるさいっ」


【アタシは今日は白は無いと思うわ。
意外に竜司ちゃんは情熱的な子よん。
蓮ったら赤とか黒とかセクシーなの着けりゃあいいのにぃ】


「だから外で下着とか色とか言うなっ」


【どうせ脱がされるんだしさぁ】


「竜司がそんな事するかっ」


そこまで言い終えて蓮とルンルが上がってきた。
すぐに僕と目があったよ。


蓮は赤と黒のチェックのミニスカート、白い半袖に下の柄と合わせたベスト。
その上にネクタイをつけていた。まるでアイドルみたいだったよ。


「あ……竜司……おはよ」


さっそく蓮の顔が赤い。


「……早い……ね?」


「竜司こそ……」


【なんだこのピンクな感じは】


【やぁねぇガレアちゃん。
これが愛する二人が持つラブラブフィールドってやつよん】


【何っ? 人間もフィールド展開出来るのか!?】


ガレアが喚きだす。


【といっても竜みたいな粗暴なのじゃなくてもっと平和的なものよん】


「今日の僕……どうかな?」


この時まで僕はお洒落した事が無かったからね。


「うん……やっぱり私の見立てた通り……かっこいいよ」


蓮は恥ずかしながら褒めてくれた。


「ありがとう……その……蓮も……可愛いよ」


「ささっ! さぁ行きましょ竜司!」


【顔が赤いわよ。蓮】


「うっさい」


僕らはJRに乗り込んだ。
目的地はユニバーサルシティ行き。
平日と言う事もあり若干席は空いていた。


僕らは長椅子に腰掛けた。
乗車中、僕はと言うとチラチラ蓮を見ていた。
蓮が振り向くと慌てて前を向いたりしてね。


そしたらガレアが


【お前ら二人とも昨日からずっと顔赤いな】


「そそっ! そんな事無いよっ」


蓮と二人で否定した。


【お前らは多分“好き“だろ?
でも俺には”好き“っていうのがよくわからん。
アステバンの二十一話”愛の告白大作戦”でもあっただろ?
好きだ―ってやつ】


「あったね。
それで初めて“好き”って言葉を知ったの?」


ガレアがさっきと違うトーンで話すから僕も真剣に聞いてしまった。


【そうそう、んでこの話最後みんな笑ってたじゃん?
だから“好き”ってのが嬉しい事なんだなってのはわかったんだがな】


「例えばガレアはお母さんとかお父さんとかいないの?」


【母ちゃんは居たけど、二千年前に風化しちまった】


「ふ・風化……? じゃあお父さんは?」


【ドラゴンは単一で産むんだよ。
母ちゃんの魔力を配合してな。
それも気まぐれでやるんだよ】


明るい家族計画どこいった。
あと魔力万能すぎ素直にそう思ったね。


ガレアはムムムと唸りながら緑の首を左右に振りだした。
悩んでいるんだろう。


「いいガレア?
“好き”って気持ちは大きくてそれこそ魔力のように万能なんだ」


【魔力と同じかすげーな“好き”】


「そうさ好きな人がピンチなら自分がどんな状態でも駆けつけるし、好きな人を守るためなら凄い力が体から溢れてくるんだ」


僕は漫画やアニメの受け売りを喋ってた。
自分は全然体験した事無いのにね。
蓮が頬を赤くしながらうっとり笑いながらこっちを見ていたのが心苦しかったよ。
たまらなくなって僕は


「僕もまだまだ解らないんだけどね」


と付け加えた。


ガレアは好意的に受け取ってくれたようで


【そんなに知ってる竜司でも解らないのか!?
スゲーな“好き”】


「ガレアももう“好き”を持ってるよ」


【どこに?】


「心にだよ。
例えばカンナちゃん」


【うん】


「カンナちゃんが死んだらどうする?」


【……考えたくないけど多分泣く……】


「カンナちゃんが誰かに殺されたら?」


【そいつがどこに居ても見つけ出して消してやる!】


ガレアは息巻いた。


「じゃあ、逆にカンナちゃんがガレアの名前を呼びながら笑顔だったら」


何も答えなかったが、ガレアの頬が赤くなり口元が緩んだ。
ガレアの萌え顔は久しぶりだ。


「ほら、それが“好き”って気持ちだよ。
ガレアのカンナちゃんを大切に思う気持ち。
それが“好きって”気持ち」


【そうか……何となく解ったぞ!】


「そうか、それは良かった」


【なら竜司も“好き”だな】


「へ……」


僕はなんとガレアに赤面させられた。


【さっきさ、カンナが死んだらとか殺されたらとか言ってたじゃん?
あれ竜司にも置き換えて考えたんだよ】


「そうゆう事か」


【お前が死んだら泣くし、殺されたら絶対に仇は討つし。
なあなあ!! これが“好き”だろ!?】


「そうだねガレア」


【お前はどうなんだよ竜司】


「ああ、僕も同じだよ。
ガレアの事“好き”だよ」


【はいはーい。
そこで異種ホモ楽しんでる二人―。そろそろつくわよ】


【竜司!! 何だホモって!!】


僕は顔に手をやり項垂れた。
蓮が無言で手を合わせ謝っていた。


「知らない」


嘘だ。僕は知ってた。


【そんな事言って知ってんだろー?】


「知らないったら知らない」


【なーなー竜司―。教えろよー竜司―】


「しつこいなっ知らないって言ってんだろこのバカガレア!」


【にゃにおう!
何だよ“好き”についてはあんなに喋れるのに何でホモは知らないんだよ!】


僕とガレアの口喧嘩が始まった。
わーきゃー言ってる僕らを尻目にルンルが


【喧嘩するほど仲が良いっだっけ? 蓮?】


「元はと言えばアンタが原因でしょ?
でもまあ、そうかもね。こうして見ると兄弟みたいだもんね」


笑いながら蓮が


「さあさあ、二人とも他のお客さんもいるんだからそのへ……」


仲裁に入った蓮に被るようにガレアの爆弾発言が飛んだ。


【お前だって昨日寝ながら“……蓮……”とか言ってたくせに!】


蓮の顔が一気に赤くなった。
頭の上から見えない煙が見えるようだ。


「ね・寝てる時に聞くのは卑怯だぞ!」


僕の返しはこれが精一杯だった。
ガレアの爆弾発言はまだまだ続き


【何かウネウネ動きながら“ああっ……そこはっ……だめぇ……らめぇっ”とかも言ってたしな!
きんもちわりぃーのっ!】


「そんな事こんな公衆の面前で言うなー!」


【あら、意外に竜司ちゃんMなのね。
Sだと思ってたわ】


「ルンルーー!」


顔を真っ赤にしながら蓮が叫ぶ。


【いいじゃない、責めてあげれば。
責め側も楽しいって聞くわよ】


僕と蓮は同時に叫んだ。昨夜の再来だ。


「だからしないって言ってんだろー!」


すると車内放送で


竜河岸たつがしのお客様―!社内ではお静かに願いますお静かに願います)


僕と蓮はハッとなって周りを見渡した。
昨日の喫茶店と同じ反応だ。


「す・すいません……」


僕と蓮は深々頭を下げていた。当の竜は


ガレア・ばかうけをかじる
ルンル・爪の手入れ


ときたもんだ。


このメンタルの強さはなんだ?
僕は解明したくなったよ。


(まもなくーユニバーサルシティ、ユニバーサルシティ終点です。
お降りの際はお忘れものの無いようお願いします)


「……さあ、着いたわ」


「な・何かどっと疲れたね……蓮」


「そうね……」


でも駅から降りたらそんな疲れなんか吹き飛んだよ。
街並みが凄いんだよ。
上には青いキングコングの看板やアメリカンなスイーツの電飾。
駅から降りたらそこは海外、ハリウッドみたいな。


「凄いな! ガレア!」


【ああ! 竜司すっげぇ! すっげぇ面白いのがたくさんあるぞ!】


僕とガレアはキョロキョロしまくった。


「どう?気に入ったかしら?」


「もち!」


【もち!】


僕とガレアは同時に親指を立ててサムズアップ。
しかもまだUSJじゃないってんだから驚きだ。


そしてついに入り口まで来た! いよいよだ!
さあ、遊ぶぞ!


###


「今日はここまで」


「パパー、USJってあの?」


「そうだよ」


じゃあ続きはまた明日……おやすみなさい……


バタン

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